近年、相続登記が未了であることによって取引できない不動産が増加する傾向にあると言われています。
相続登記がされていない原因は様々考えられますが、相続開始から長期間が経過し相続人の確定が困難となる場合や相続人の人数が多くなり協力が得られない場合などが考えられます。
そこで相続登記制度のあり方を見直す必要がありますが、今回は、相続登記における登記原因証明情報の視点からあるべき相続登記制度を考えたいと思います。特に遺産分割協議による相続登記に絞って考えたいと思います。
まず、現行の不動産登記法における登記原因証明情報の意義を確認したいのですが、その前に登記原因証明情報より大きい概念の話として,不動産登記制度の目的を考えますとこれは、まず先に現在の権利状態の公示という目的があるわけですが,このほかに、物権変動の過程と態様を忠実に公示し、真の権利者の対抗力を確保することそして,これから取引に入ろうとする第三者の調査資料を提供することそうすることによって取引の安全を図るという目的もあります。
そうすると、登記原因証明情報は
①登記が現在の権利状態に一致していること
②物権変動の過程と状態(態様)を忠実に反映するものでなければならない
つまり,物権変動の当事者である人と物権変動の対象である不動産、物権変動原因である実体上の法律行為または法律事実を証するものでなければならない、ということになろうかと思います。(本木敦)