信託ではなぜ名義変更をするのか(最終回)

(前回の続き)

このシリーズでは信託をすると、何故名義変更をしなければならないのか,という点をご説明していますが,3つ目の理由は,信託契約の内容を確実に履行するためという理由です。

日本の社会では,所有の名義人が様々な手続をします。不動産の売却であったり,建物の増改築,大規模修繕,建物解体,借り入れの際の抵当権設定などを思い浮かべていただければスムーズにご理解いただけるものと思います。

受託者が信託契約の内容を確実に履行していくには,委託者の名義のままでは様々な障碍が生じてしまします。

このため,信託では名義を変更する必要があるのです。

これまで,信託ではなぜ名義変更をするのかという論点に絞って解説してきました。

信託のご相談のときに,名義変更をすることをお話すると,不安になる方もいらっしゃいました。信託では名義変更をしますが,委託者ものではなくなるということではないことをご理解いただければ幸いです。

(本木)

葬儀の生前契約にも「信託」を活用 その2

野々垣です。

10月19日付ブログの続きです。

実際に葬儀を行うときには、生前契約をされた方は亡くなっているので、誰が、お葬儀社への代金、お坊さんや神主へのお礼を支払ってくれるかを考える必要があります。

また、亡くなった方の銀行口座は、通常、現金の引出しができなくなるので、金銭の保管場所を考える必要もあります。

お子さんや親戚の方が、予め葬儀用の金銭を管理し、お葬儀社等へお支払いをしてくださればいいですが、必ずしもそのようにいくとは限りません。

そこで、信託を契約して、葬儀に関する支払いをする「受託者」を決定し、「信託口座」を作成して、金銭の保管場所を確保をすれば、葬儀関係の支払いがスムーズに進むことになります。

長い文章になったので、次回、最後にもう一度、「委託者」、「受託者」、「受益者」の関係を説明をします。

業-1グランプリに向けて

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昨日は、月1回ペースで開催している「叶(なかう」の勉強会でした。
来年3月に開催される「新たな司法書士業務への挑戦」をテーマにした「業-1グランプリ」にエントリーするため、最終打ち合わせをしました。
資料にすると、あたらめて、いろいろ活動してきたことを実感します。
でも、このエントリーは通過点にすぎません。我々の活動は続きます。
「Trust of Ever Smile」のために。 (名波)

 

 

シリーズ 信託の“肝”(5)

信託の文献を紐解くと、しばしば登場するのが「プランニング能力」という言葉。

信託契約は、受益者の暮らしを支援するため、受託者に対し一定の行為を長期にわたって強いる性質をもつことから、支援を受ける受益者の環境変化だけでなく、支援をする受託者の環境変化にまで配慮したきめ細かいプランニングが必要となるわけです。

関係者の暮らしをいかに想像できるか、これが、契約締結に携わる私たちに求められる “肝” といえるでしょう。   (中里)

東京の信託実務講座

先週になりますが、東京で信託実務講座を受講してきました。

この講座は、全8回で毎月1回開催されています。

今回は第6回目、テーマは「親亡きあと支援について」でした。

講義内容をざっくり書きますと、要支援者にすでに後見人が就任している場合で信託を活用する事例紹介でした。

後見と信託の併用事例は、信託の書籍でも取りあげているものは少ないそうです。

今回の講座で感じたことは、信託契約書がわかりやすく工夫されていたところでした。

信託を利用する人がわかりやすい信託契約書にするため、なるべく条文数を減らすように苦心されたようです。

あれもこれもてんこ盛りではなく、事例にあった信託契約を作成することがプロの仕事なのだなぁ、と勉強になりました(ヨシミ)

こば紀行#5 茶臼山高原

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介していscreenshot_20161023-110002ます。

第5回目は茶臼山高原

浜松から国道257号線を引佐方面へ、三遠南信道鳳来狭ICを出
て最初の信号を左折すると前回ご紹介した湯谷温泉に出るのですが、今回は右折で。国道151号線をそのまま東栄方面へ、約2時間ほどで目的地に辿り着きます。茶臼山高原は愛知県と長野県の県境、標高1,415mで愛知県最高峰の茶臼山とその南西の萩太郎山の間に広がる高原地帯です。萩太郎山山頂付近では、春は芝桜、夏は青い空と新緑を、秋は紅葉、冬は雪景色とスキーを、というように一年中楽しめるようです。残念ながら私が訪れた10月中旬は、上記いずれにも該当しませんでしたが、もう2週間も我慢してたら紅葉を楽しめたのでしょう。南アルプスの山々を眺めながら、大自然の偉大さと自分という人間の小ささを感じつつ、温泉へ・・p_20161016_105039

国道151号線をさらに北上し、阿南町のあたりで418号線を天龍村方面へ入ると「天龍温泉おきよめの湯」に着きます(B地点)。主要国道からは少し外れた場所に位置するため、他の観光温泉よりは空いていてのんびりできるのではと思いきや、日頃お世話になっている浜松の某官公署職員と偶然出くわし、温泉に浸かりながら色々と話しを聞かせて頂きました。遠くまで来たつもりでしたが、存外浜松からの圏内のようですので皆さんも是非!(こばやし)

マッケンジー・ソープ

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1か月ほど前ですが、熊本地震で被災した障がい者を支援するチャリティ企画が浜松であり、私もお邪魔しました。そこには、マッケンジー・ソープという方の絵画展が開かれていて、次のようなお話を伺いました。

1956年に生まれた彼は、ディスレクシアという文字の読み書きが困難な障がいを抱えていました。学校生活では、ディスレクシアという障がいが認識されていなかったため、先生には「なまけ者でアタマが悪い!」と叱られ、友達にもそのように見られ、一緒に遊ぶことが出来なかったようです。しかし、彼は絵を描くことが好きで、暇を見つけては絵を描き続けていました。二十歳のころ、彼の絵をたまたま目にした叔父が大きく感銘し、叔父の協力のもと、美術大学へ進学したことが、画家への道を進むきっかけとなったようです。

彼は、各地の慈善団体と協力して絵画展を開くとともに、ハンディキャップを背負った子どもたちに自らの体験を通して、いかに逆境と戦い成功を収めることができたかを語りかけてるそうです。

彼の作品には、“希望・愛・喜び”のメッセージが込められてるそうです。

たしかに、ポストカードの絵を見ると、なんとなく温かみを感じるのは、私だけでしょうか。(小出)

信託ではなぜ名義変更をするのか(3)

(前回の続き)

では、何故、信託をすると、名義変更をしなければならないのでしょうか。2つ目の理由は,登記の対抗要件を具備するためです。

対抗要件とは,すでに当事者間で成立した法律関係・権利関係を当事者以外の第三者に対して対抗(主張)することをいいます。

不動産を信託したにもかかわらず名義変更をしないでおいておけば,委託者はその物件を売買していまうことも,抵当権を設定してお金を借り入れることも可能になってしまいます。ですから,すでに委託者と受託者で成立した信託を委託者受託者以外の第三者に主張することができるようにしておく必要があります。

もっとも,受託者を信じて託したものを,売ったり担保に入れることは殆どないものと思われますが,万が一にもこのような複雑な法律関係が生じないようにしておく必要があります(本木)。

生前の葬儀契約にも「信託」を活用 その1

人がお亡くなりになったとき、人生を締めくくる最後の儀式としてお葬儀を行うことが多いと思いますが、このお葬式の内容について、

何の花を飾るのか?

どの写真を遺影とするのか?

子孫、恩を受けた方々に伝えたいメッセージがあれば、それをどのように伝えるのか?

などを生前に葬儀会社と決定しておくことができます。

実は、こちらの生前の葬儀契約にも「信託」が活用されています。

具体的な内容は次回説明しますね(野々垣)

民事信託は自由なの?

民事信託は自由度が高いとよく言われます。

委託者が望んでいる財産管理と承継はほぼ実現できるとまで言う方もいます。

では、本当に自由に設計しても問題はないのでしょうか。

私は2つ課題があると思っています。

1つは、税制の課題。

受託者への信託財産の移転には贈与税は課税されませんが、実質的に「益」を受ける受益者をどう定めるかによっては、課税の問題がでてきます。

もう一つは、実務が固まっていないという課題。

民事信託が普及しはじめてまだ数年しか経っていません。実務上、どのように解釈されるのか定まっていない論点がいつくかあります。

2つの課題を意識しながら、依頼者の想いを叶える内容に設計するのがプロとしての腕の見せ所となります。

「叶」では、依頼者に寄り添いながら、依頼者の想いを叶えられるよう日々研鑽を積んでいます。(名波)