民事信託の活用は、ゴールから考える

受益者の死亡等の信託の終了事由が発生すると、信託は精算が開始することになります。

信託に取り組むを、ついつい信託財産を組成することに目が行ってしまいますが、信託が終了するときのことを考えておくことは、それと同等、もしくはそれ以上に重要になるかもしれません。

例えば、精算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における残余財産受益者及び帰属権利者のすべてに対し、その承認を求めなければなりません(信託法184条)。

この規定には、信託法によく登場する「別段の定め」はないので、「その承認を求めること」を別段の定めにより省略することはできません。

適正に精算業務が行われていれば、そんなに問題になることはないと思いますが、受託者は、最後まで気を抜くことはできません。

信託は一度始まると長期に渡ることが通常です。常にゴール(出口)をイメージしながら内容の検討をすることをお勧めいたします。(ななみ)

2018年6月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託に相応しい案件の考察(2)

信託に相応しい案件の考察(1)の事例をもとにして考える。特に不動産の管理について焦点を当てていきたい。

共同住宅2棟は,比較的新しい。ここでは,所有者(本人)は特に売却などを希望していない。

本人はこの建物を含めた不動産業を娘に円滑に引き継がせていきたい,本人の判断能力が怪しくなったら娘がやって欲しい。

しかし,娘にはその気概はなく,不動産業というよりは,父の判断能力が無くなったときにお金が動かせるようにしておきたいことを希望している。

私はこの事例でのポイントは,今後,不動産の積極的な運用が必要か否かで結論が変わってくるのではないかと考えた。

なぜなら,本人の所有する不動産を自由に動かせるようにしておく必要があるのかどうかで,用意しておくべき準備が変わると思われるからだ。

(続く)

文責:本木敦

2018年6月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎~予告②~

これから、「信託の基礎」を述べるにあたって、いくつかの断りを申し上げます。

まず、私が対象としているのは、地方の一般家庭が望んでいるであろう「家族信託」「民事信託」です。そのような観点から、信託法「第六章 信託の変更、併合及び分割」第八章 受益証券発行信託の特例」「第九章 限定責任信託の特例」「第十章 受益証券発行限定責任信託の特例」「第十一章 受益者の定めのない信託の特例」については一切触れません。

それから、信託法「第七章 信託の終了及び清算」は、実務的にも非常に重要な点だと認識していますが、私を含めた周りの専門家は信託の組成を経験していますが、信託の終了及び清算については未経験の方ばかりです。このような事情から、この点について説明を割愛することをご了承ください。

では、次回から私の考えを述べてみたいと思います。(小出)

 

こば紀行#64 大井川鉄道⑤~井川駅

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第60回目は大井川鐵道編第6弾、閑蔵~井川

久々の大井川鐵道編再開。閑蔵~井川間は井川線の中で最も駅と駅の間が長く、いくつものトンネルを抜けて終点井川駅へと辿り着く。井川線はもともとがダム建設のために敷設された路線であり、長島ダム完成によりその本来の役割は終えた。旧路線区は水没、一時は廃線の危機にあったが、観光列車として残すべくダムの上を通るよう移設、それに伴い急勾配にも対応できるアプト式列車の導入、湖上駅の新設へと繋がる。

終点井川駅の標高は686M、静岡県の鉄道駅では最も高地にある。やり切った感があるが、頑張ったのは列車の方だ。終点にふさわしく駅舎にも哀愁が漂う。周辺に民家はなく、ただ、出てすぐのところに老夫婦が営む食事処があり、この小さな食事処に観光客が群がり列をなしている。完全に店のキャパを超えた客入りだったようで、目当てのきのこそばや山菜そば等はことごとく品切れ、中華そばしかないと言われた。朝から何も食べていなかったので仕方なく頼むも、本来乗るべき?チャーシューも品切れなのか、ハムがのっている。。食後の私の背中は駅舎以上に哀愁漂っていたと思う。

気を取り直して足を前に進める。井川ダム沿いに廃線跡があり、その線路上をスタンド・バイ・ミーのように歩くことができる。周辺に民家がなかったのは、井川駅より先も、集落まで続く線路が延びていたためだ。ダム湖自体を周遊できる渡船もあるようだが、あいにく水量不足によりこの日は出ていなかった。この他、どこかで聞いたような名前の「夢の吊り橋」(寸又峡か)や「井川大仏」などが見所としてある。静かな山間の街並みを見ながらのハイキングは気持ちが良い。

おおよそ1時間半程度、プラプラ歩いたのちに井川駅へと戻る。次なる目的地は尾盛駅、終点井川駅より2駅戻ったところにあるスーパー秘境駅だ。そこでこばやしは驚くべきものを目にする…次回、大井川鐵道編最終回!(つづく)

 

 

2018年6月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

ケガしました

先日、夕飯の支度中に手が滑って左手の親指を包丁で切ってしまいました。

 

勢い良く切ってしまったので、かなり深手となり、絆創膏ではどうにもこうにも血が止まりませんでした。

これは病院に行くしかない、と思ったものの、夜間だし、救急車を呼ぶほど緊急性はなかったので、夜間救急室に行って処置をしていただきました。

 

浜松市の場合、医師会館の1階に『夜間救急室』が設置され、外科の場合は夜8時から夜12時まで見ていただけます。

医師に傷を見せたところ、即『縫いましょう』と言われて人生初の手術台に乗ることになりました。

何針か縫っていただき、現在は週2回くらい傷の具合を見せに行く日々です。

 

『夜間救急室』の話を知人にしたところ、「自分の地元にはそのようなところはない」という方や「自分の自治体は当番の先生が決まっているので、自分で当番の先生とその先生の医院の場所を調べていかなければならない」という方がいて、浜松って恵まれてるのだな、と実感しました。

有難い・・・

 

左手を使うとケガした親指も痛むので、何だかんだ片手で作業しなければならない日々が続いています。早く治ってほしいです。

 

 

 

2018年6月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(8)

【前回の整理】
司法書士が信託関係の受任をするパターンは、主に以下の四つ。(1)登記申請のみ
(2)契約書の作成+(不動産があれば)登記申請【信託の内容は当事者らで決定済み】
(3)契約書の作成+(不動産があれば)登記申請【信託を希望しているが内容は未決定】
(4)契約書の作成+(不動産があれば)登記申請【単に「相談がある」というパターン】

+++++++++++++++++++++++++++++

以下では、これらの形態が「包括受任事案」に該当するか否かを検討することにします。「包括受任事案」に該当するのであれば、いわゆる成功報酬型の報酬を請求できることになりますね。
一方、「包括受任事案」に該当しないのであれば、司法書士業務は基本的に【書類作成】に収剱される「個別受任事案」に該当することとなりますので、日当や付随する調査業務等は別として、【書類作成】の対価としての報酬請求しかできないこととなります(この点は第6回までで整理済み)。

まず(1)ですが、これは不動産売買や相続に関する登記の依頼を受けるのと何ら変わることはなく、単に「信託」による所有権移転登記の依頼を受けたにすぎません。
登記を必要とする不動産に限って、登記という事務処理の依頼を受けたにすぎず、依頼者の全部または一部の財産管理を包括的にゆだねられているわけではありません。
したがって、(1)は「包括受任事案」には該当しません。

(2)と(3)は「信託」という方針が決まっている点が共通しています。この場合の依頼者の司法書士への希望事項は、「自分たちに適した信託内容・信託条項の提案」(3)、「自分たちが希望する信託条項の作成」(2)ということになります。
つまり、いずれの場合も司法書士に信託財産の管理を委ねたいわけではなく、最終的な目的は「信託契約書」という書類作成にほかなりません(もちろん、ケースによっては契約書ではなく「遺言」を利用することもあり得ますが)。
したがって、(2)(3)も「包括受任事案」には該当しません。

では(4)はどうでしょう?
(4)のパターンの典型的相談内容は「私の財産を・・・のように利用したい。よい方法はあるか?」というものです。この相談内容は、一見すると「私の財産の将来的な管理・運用について、包括的に司法書士にお任せする」という意味合いを含んでいるようにも解せないことはありません。もしそうだとしたら、(4)が「包括受任事案」に該当する可能性もあるということになりますね(もっとも、この場合に司法書士が依頼者の財産の全部または一部を包括的に管理・運用することの委任を受ける点については、他の法律による規制を受ける可能性もありますが、この点はいったん横に置いておきます)。

しかし「よい方法はあるか?」と尋ねる依頼者の真意を「司法書士に任せる」と解釈するのはやや早計でしょう。そう解して然るべき場合もあり得るでしょうが【※】、一般的にはこの場合、「何らかの方法をご提案いただき、必要であればそのための手続きを頼みたい」と解するのが妥当です。
とすれば、依頼者の最終的な目的は「手続き」であり、その具体的な中身は(2)(3)と同様に「契約書作成」なり「登記申請」に収剱されることになります。

したがって、司法書士が信託関係の依頼を受ける場合、どのような受任形態を辿ったとしても、ごく限られた例外【上記※のケース】を除き、その業務は「包括受任事案」には該当せず、いずれも「個別受任事案」に該当すると解することができます。
すなわち、司法書士の報酬体系も、成功報酬制は採用できないこととなるわけです。       (中里)

2018年6月22日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust

追加信託って何?

信託契約は、委託者と受託者との間で、信託目的や信託財産を定めて契約を締結しますが、契約締結後に金銭等を信託財産に追加することを「追加信託」といいます。信託法上の規定はなく、実務上認められている概念とされています。

金銭の追加信託については、実務的にも信託契約書に書かれていることが通常です。金銭の追加信託は特別や書面などは不要で、委託者兼受益者から受託者が管理する受託口座へ振込する形で行われることが多いと思います。ちなみに、金銭の場合には、信託契約書に追加信託に関する条項がなくても追加信託は可能のようです(なるべく書いておくことをお勧めしますが)。

一方、不動産の追加信託については、そもそも追加信託はできないという方がいらっしゃいます。可能という説でも、信託契約と登記が必要とされていますので、それは追加信託ではなくて新たな信託契約と捉えることができるとも思います。いずれにしても不動産の追加信託は、金銭のように気軽にはできないと思っておいた方がいいことは確かなようです。(ななみ)

2018年6月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託に相応しい案件の考察(1)

はじめに,一概に信託に相応しい案件かどうかということを断じて書くのは難しいことを申し上げておかなければならないだろう。

やはり事例に応じて,個別に検討することが重要となる。

今回は先ず事例を挙げて,次回,その考察をしたい。

事例

家族構成 本人(75歳) 妻(73歳) 子一人娘(50歳) 孫二人娘(27歳,25歳)

本人:不動産業 妻:専業主婦 子:看護師 孫:専業主婦 孫:学生

資産 共同住宅2棟 築10年と築3年 本人の自宅は前記共同住宅内の建物の一室。預金3000万円

意思能力 本人,妻,子,孫全員意思能力あり。

本人の希望:ゆくゆくは娘に不動産業を承継したい。

子の希望:不動産業とか継ぐことになるのかな(はっきりとした自覚はない)。父が脳梗塞とか突然倒れたり,意思能力がなくなってしまったときにお金の管理ができるようにしておいてもらいたい・・・

 

(続く)

文責:本木敦

2018年6月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎~予告①~

司法書士になるために、司法書士試験を受験する必要があります(他の方法もあります)。この試験に合格し、所定の手続きにしたがって登録をすれば、司法書士になることができます。静岡県司法書士会では、司法書士試験の合格者に対して研修制度を用意してくれています。研修にはさまざまなプログラムがあり、実際に開業している先輩司法書士の現場を体験するための「配属研修」というものもあります。私も、その配属研修で6週間ほど先輩司法書士のもとで多くのことを学ばせてもらいました。中でも忘れられないのは、先輩司法書士からの次の言葉でした。

「小出さん、司法書士は言葉の重みが違います。だから、依頼者に対しては根拠をもって話してください。そして、その根拠となるものは、条文・判例・先例です。これらを正しく身につけてください。」

司法書士は、登記を基幹業務としております。開業したての頃は、初歩的な登記についても書籍を引っ張り出して申請書を作成していました。申請書の作成にあたっては、条文から調べ、膨大な先例から該当事項を探し出していたため、根拠をもって登記申請をすることができました。

今、世間では「家族信託」あるいは「民事信託」といった名称で、新しい財産管理方法を社会に提供している専門家が多くなっています。巷では、多くの実務書なるものが出版されたおかけで、この分野に参入してくる専門家の数も多くなっているだろうと推測されます。私もいくつかの実務書に目を通し、他の専門家と話す機会にも恵まれたため、信託に関する活動に携わることができました。その一つが、静岡県司法書士会に設置された民事信託グループ「叶」です。ここでの活動のおかげで、研修に講師として誘いを受けることもありました。

しかし、振り返ってみると、「家族信託」あるいは「民事信託」を提供している専門家が正しく信託を理解しているのか、不安を覚え始めました。と申しますのも、専門家の中には実務書なるものを片手に、掲載されている契約書を多少アレンジしているだけの方がいることを見聞することがあるからです。もちろん、依頼者にとって有効に活用されていれば問題ないのですが、信託は長期にわたる法律行為です。契約書の締結段階では問題が生じなかったことでも、年月を経れば、依頼者に予想もしない損害を与えかねない事象が発生する可能性がないとは限らないわけです。そして、その原因が専門家の浅い理解のもとに作成された契約書等であれば、これは忌々しき問題です。なぜなら、専門家に対する問題だけであれば懲戒処分や損害賠償等で対応できますが、信託そのものへの信頼が損なわれてしまうと、社会から信託を埋没させてしまうことにもなりかねません。これは市民社会にとって、大きなマイナスだと思います。

信託を正しく社会に普及させるためには、専門家が依頼者に対して根拠をもって提供する必要があります。しかし、登記と比較すると信託は先例や判例が僅少にとどまります。そうなると、主たる根拠は条文となります。

私は、自分が理解している信託の試論を条文を根拠に提供したいという思いにいたりました。未熟な司法書士ですので浅薄な論であることは承知しておりますが、さらなる信託の普及を志している方から、ご意見等、ご教授いただけたらと思う次第です。よろしくお願い申し上げます。(なお、次回はこの続きで、まだ本論に入りませんので、ご了承ください。)(小出)

こば紀行#63 箱根周遊②

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第63回目は箱根周遊②

ケーブルカーと箱根登山鉄道は「トコトコきっぷ」という1 日乗り放題の乗車券を利用すれば、周辺各種施設の割引もある。その1つが強羅公園で、駅を出てすぐのところにあり、入場も無料とあれば行かないわけにはいかない。フランスの庭園を模したもので、季節により色んな花が咲き誇る。小さなフラワーパークといったイメージで、やはりおっさんの一人歩きは憚られるスポットだ。天気も良くなり、こののどかな庭園は時の流れを忘れさせる。

次なる目的地が彫刻の森美術館。美術館というと屋内のイメージだが、ここはある種テーマパークに近い。広大な庭園の中に近現代を代表する彫刻家の名作が展示されていて、独特の雰囲気を醸し出している。足湯もあるが、待ちができるほどの混雑ぶりで、敢えてここで足湯に浸からずとも、庭園に点在する展示物を見て歩くだけで十分に楽しめる。

なかでもピカソ館はオススメだ。ピカソは作風がめまぐるしく変化した画家として有名で、そのピカソの人生の歩みに沿うように様々な作品が展示されている。その作風の変化は、私生活での出来事が色濃く反映されているのだと思うと何だか興味深い。2度の結婚、3人の女性との間に4人の子供をもうけ、最後の子供は彼が68歳の時、20代女性との間にできたそうな。。ピカソといい、何とかのドンファンといい、うらやましい気がしなくもないが、私は覚醒剤を盛られて死にたくはない。ほどほどの富とささやかな幸せが1番なのだと思う。

彫刻の森で思いのほか時間を取ってしまい、急ぎ登山鉄道で湯本へ向かう。目当ては「直吉」という店の湯葉丼だ。夕方、閉店間際に訪れてもなお待ち客がいるほどの人気ぶり。正直私は湯葉はちょっと…と思っていたのだが、そんな私でも思わず「ほぅ」と感嘆してしまう。湯葉好きというちょっと変わった趣向をお持ちの同行者も大変満足されたようでほっとしている。

帰り道、箱根神社の鳥居がライトアップされていることに気付く。写真だと不気味以外の何ものでもないが、実物はもうちょっと幻想的だ。ちなみに21時半で消灯してしまう。当初計画したルートの半分も制覇してないが、想像以上に楽しいこば紀行となった。(こばやし)

※今回の取材にご協力頂いたRさんに感謝します。ありがとう!

 

2018年6月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust