5年目に突入!

 「叶」が発足して5年目に突入しました。
 これまで、福祉の分野における民事信託の活用を研究テーマに掲げて活動を続けてきましたが、今年度からは研究の裾野を広げ、「終活」を法律専門職として支援することとしました。

 もちろん、ここで取り扱う「終活」は法律面での検討。ことに財産の有効活用と円滑な承継がポイントとなります。しかし、一口に「法律面」の検討といっても、これまで「叶」が研究のフィールドとしていた民事信託はもちろんのこと、「任意後見」「死後事務」「遺言」「配偶者居住権」「持戻し免除」など、改正相続法の論点も含めたさまざまなキーワードが次々と浮かんできます。
 法律実務家として、私たちは多岐にわたる制度を自在に使いこなすだけでなく、民事信託の分野でもそうだったように「叶」オリジナルの契約条項を用意するなど、利用者の皆さんのニーズに迅速かつ適切に対応できる準備に邁進してまいります。

 引き続き、「叶」の活動にご注目ください。 (中里)

実家を相続したのですが・・・

父親が住んでいた実家を長男が相続したのですが、妹が長男が相続した後も頻繁に来て自分の家のように過ごしているという相談がありました。      (デフォルメしています。)

当初、その事態に困っていると思っていたら、そうではなくて、長男は、将来、妹に実家(土地も)の名義を移したいと考えているのでした。

自分たちが生まれ育った実家は、二人にとって、とても思い出深い場所です。長男名義になったからといって、妹にとっては「自分の家」なのです。長男もそれはわかっていて、他のところで別の暮らしをしている自分よりは、家を大切に思ってくれている妹に実家(土地も)の名義を移してあげたいという長男の想いも理解できます。かと言って、生前に名義を変えるのは贈与税が発生してしまいます。(長男側には、他にも事情があり実家の所有権に執着してません)

実家の敷地には、借家も建っていて人に貸しているそうです。遺言という手段も選択肢の一つとなりますが、長男としては、自分が認知症になったときのことも含めて、早めに妹に実家の管理を任せたいという気持ちがあるようです。

はい、皆さんもお分かりのように、委託者を長男、受託者を妹とした民事信託の組成も選択肢の一つとなると思います。(名波)

他の相続人へのアプローチ

父子家庭で,一人っ子だと思っていたが,父が亡くなり戸籍を調べてみたところ,どうも妹がいることが分かった。父からは離婚したことまで聞いていたが,父と離婚した母との間に私のほかに子供がいることは聞いていなかった・・・。

父はそんなに遺産を遺すことなく逝ったが,それでも相続に伴い手続が必要となる。その妹とやらの印鑑も必要になるという。

そんな相談を受けた。こんなとき,妹に対してどんなアプローチをするべきなのだろうか。このような相談をよく受けるが,毎回,どのようなアプローチをするべきか迷う。かつて受けた事件で全く同じアプローチになった事件はない。事案毎に異なるのだ。理由の一つには妹がどういう性格なのか全く分からないことが挙げられる。ボクシングでいうアプローチが長いのか短いのか,その辺りの見極めをする判断材料が全くない状態で,相手の懐に飛び込んでいかなくてはならない。

手続を進めたい側(相談者)としては,妹にいきなり押印の書類を送りつけて,これに印鑑をついて返送して欲しい,となる。しかし,これは初めて接触する方に対して,些か乱暴に思う。やはり,第1発目の連絡としては,訃報の連絡から始まり,相続について考えを聞きたいと尋ねるのが筋ではないだろうか。

急がば回れである。妹との信頼関係を壊してしまうと,調停をおこしたりすることとなり,やっかいである。一つ一つ順番に連絡をしていくべきではないか。

そんな風に考えている(本木敦)。

ゴミ屋敷

最近、話題になったりする「ゴミ屋敷」。司法書士は後見業務に携わっているため、「ゴミ屋敷」の住人に遭遇する司法書士もいるとは聞いてましたが・・・。こんな感じで、完全に人ごと、テレビの中の話と考えていた部分もあったと思います。とうとう、自分にお鉢が回ってきました!現場にいってみると、テレビほどではありませんが、なかなかのものでした。季節柄、部屋はとても湿っている感が強く、においも強烈でした。このような不衛生な場所では生活するのに適しているとはいえないため、住んでいた方を短期の入所施設に一旦避難させました。

問題はここからです。住んでいた方は判断能力に衰えが診られるため、後見制度の利用が必要となりそうです。申立から決定まで時間がかかりますから、「ゴミ屋敷」をどうするのか、ということになります。業者に依頼して片付けてもらうほどの余裕がなさそうなのです。 う~ん、こまった・・・

こば紀行#95 秘境駅②

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第95回目は秘境駅②

秘境駅はこのコーナーでも何度か取り上げたことがあり(#41、#57~大井川鉄道編など)、直近では都会の中の秘境駅として#91海芝浦駅を紹介した。都会の中の秘境駅も良いが、やはり、本物の秘境駅は山奥だろうということで、ひとり飯田線に乗り込む。豊川駅で途中下車し、稲荷弁当を購入、あとは鈍行列車に揺られながら3時間、尻が痛くなるまで座りっぱなしである。今回の目的地は田本駅。#41で紹介した小和田駅よりもさらに北、長野県伊那郡泰阜村にある。

田本駅到着。降りる客はただひとり、こばやしだけ。降りても当然、駅員はいない、そして、民家もない。あるのはホーム上の待合所と、背後にある巨大な擁壁だけ。線路下は天竜川の渓谷である。ただただ静寂の中、次の電車の時刻を確認する。時刻表に目を遣ると、もはや2時間に1本とかいうレベルでなく、気まぐれで走らせてるレベルだ。駅の外へと続く道は1本、いよいよ探険の始まりだ。

駅を出てすぐに階段があり、それを上るとトンネルの上に出る。ここから駅を眺めると、いかにこの駅が断崖絶壁の中にあるかが分かる。少し足を進めると、昼間でも薄暗い林の中、道が二手に分かれている。案内ぐらいあっても良さそうだがそれらしきものは見当たらない。あきらかに上る左手と、やや下り気味の右手…ただの山道の選択なのに、手に汗握る緊張感は秘境駅であるが故だ。直感で左へ上ることとした結果、20分後に県道の通る集落へ出る。来た道のりを振り返っても、車はおろか自転車すら通ることはできない。この駅は、地元の人すら利用しない文字通りの秘境駅であると想像できる。

先の分岐点、やや下りの右手も気になったので、駅に戻ろうと思うも、来た道は引き返したくないので、直感をたよりに駅方向に向け道なき道を歩く。グーグルマップもご覧→のとおり全く役に立たない。崖が崩れてる箇所はいくつもあるし、崩れた所にかかる橋も、何だかすごく頼りない。それでもこばやしは前へ進む。駅まであと少しの(であろうと思われる)ところまで来たとき、突然道が途絶える。民家の敷地内で途切れる。あぁ…(こばやし)

紛争を未然に防ぐ

先日、不動産の名義変更をした方から相続についてご相談がありました。

相談者(Aさん)にはお子さんが2名いるのですが、そのうち1名のお子さん(Bさん)が多額の借金を背負い返済できなくなったため、Aさんが肩代わりをしたそうです。その際、家族会議を行い、「借金を肩代わりする代わりに、Aさんが死亡してもBさんはAの遺産を相続しない」ことを全員で確認したそうです。しかし、あくまでも口約束であるので、Aさんが死亡した際に本当にBさんが遺産をもらわないで納得するのか、その時になったらBさんは遺産を要求し、他の相続人と揉めるのではないかと不安があることでした。

この場合、いくらAさんの生前に「借金を肩代わりする代わりに、Aさんが死亡してもBさんはAの遺産を相続しない」と合意したといっても、実際にAさんが亡くなれば、Bさんを含めた相続人全員で遺産について話し合いを行う必要があります。その時、Bさんが、すんなり「自分は遺産を相続しないこと」に納得して手続きに協力してくれれば問題ありませんが、もしBさんが協力しない(遺産を要求した)場合、事態はかなり厄介なことになります。解決するのに要する費用も時間もかかりますし、場合によっては弁護士を立てて訴訟等で解決するしかない場合もあります。

そういった事態を防ぐべく、Aさんには遺言書を遺すように提案をいたしました。遺言書には、誰に遺産を相続させるのを明記し、付言事項として「Bさんには借金返済のため〇〇万円貸与したが返済を受けていないので、Bには遺産を相続させないものとした」と記載しておくことにようにします。これにより、後日紛争になった場合も事実関係を把握するための手掛かりとなりますし、紛争を事前に予防することにも繋がります。

Aさんは「身内の借金の話なので恥ずかしくてなかなか相談できなかった」と仰っていましたが、こういった状況は紛争の素になります。お早目の対処が紛争を未然に防ぐことに繋がりますのでお気軽にお問い合わせください。

成年後見制度が利用できない・・・

 成年後見制度は、高齢による認知機能の低下や障害によりご自身の財産を適切に管理できないような方を対象とする制度ですが、先日ご相談を受けた事案は「頭がとてもしっかりした高齢者」。認知機能の低下はまったくありませんが足が悪く外出が困難。配偶者にも先立たれたため近く施設入所するそうです。近くに住む娘が金銭管理をする予定なのですが「名義が父親のままでは金融機関との間であれこれと面倒なことになりそう・・・」とのこと。

 こんなケース、よくあるのではないでしょうか?
 成年後見制度を利用するとなると、任意後見契約を利用するか、あるいはどうにかして「補助相当」の診断をもらって補助申立てをするか・・・  後者はちょっと強引ですし、ノーマライゼイションを旨とする成年後見制度の趣旨を逸脱しています。任意後見契約の方は、まさにこのような事案で利用すべき制度なのですが、将来の任意後見監督人選任後のランニングコストを考えると、資力に必ずしも余裕がない方の場合には二の足を踏むことにもなりかねません。

 そこで、預貯金の一定額を娘に信託することをご提案しました。
 近く、公正証書を交わしたうえで娘さんが信託口座を開設する手はずとなっています。  (中里)

 

公証役場に行けなくても作成可能?

民事信託契約はなるべく公正証書にしておくことをお勧めしています。また、受託者の口座を作成する場合、公正証書の提出が条件になっている金融機関もありますので、益々、公正証書の作成の必要性は高まります。

そうした中で、怪我やご病気、もしくはお身体の状態によっては公証役場まで足を運べない場合があります。そうした場合でも公正証書は作成できるのでしょうか。

ご安心ください。手数料や日当交通費が加算されますが公証人さんが出張してくれます。費用面でいうと2万~3万円のプラスとタクシー代等の交通費(片道×2)というイメージです。

目先の費用を気にして、公正証書の作成を避けるという発想はなるべくしない方がいいと私は思います。長い目で見た場合には、費用対効果のバランスはとれると思います。(名波)