報酬(完)

18回に亘り、信託業務における司法書士報酬という観点で私見を綴ってみました。

また、報酬を考える場合の前提情報として、司法書士業務の性質についてもややくどいほどに説明を重ねてまいりました。司法書士業務の性質については、依頼を受けた事件が「書類作成型」であるのか「代理援助型」であるのかに大別でき、前者は「個別受任事案」、後者は「包括受任事案」と大掴みできることをご理解いただけたかと思います。

受任事案の性質によって、司法書士報酬の性質が異なることもご説明しました。「書類作成」が委任事務の中心である個別受任事案においては、包括受任事案のような「成功報酬」は発生しないこと、仮に個別受任事案において成功報酬制を採用していたケースがある場合、司法書士の代理権がない事案においてあたかも代理業務を行っているとの外観を作出してしまうおそれがあるから避けるべきであることなど、利用者の皆さんにしてみればどうでもよいような、司法書士業界内部の専門的な議論にまでおつきあいをいただきました。

もとより、このシリーズでご提示した内容は、一実務家の私見にすぎません。本来であれば、立法的にあるいは司法判断なり学者の議論なりによって解決されるべき問題も多分に含まれており、このシリーズで提示した私見も、まだまだ突っ込みどころ満載な感は否めませんが、民事信託をご利用するの皆さんが、司法書士に相談したり依頼をしたりする際の参考となれば、また、司法書士側にとってもご自身の報酬規定を見直すための良い機会となればと考えております。

以上で、このシリーズは終了します。   (中里)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年10月11日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust