(本稿は、現時点で施行されている法に基づき、遺留分侵害行為については価額賠償ができないことを前提とします。)
信託設定が遺留分侵害行為ととらえる①説によると、遺留分侵害行為の目的物は「信託財産」となりますから、遺留分権利者は「信託財産」の持分を取得することになります。
このとき、「信託財産」が可分であれば、持分に相当する「信託財産」を引き渡して、残りの「信託財産」で信託を運営することになります。信託の運営に「信託財産」が不足している状況ならば、委託者と受益者の合意という信託法のデフォルト・ルールにより信託を終了させることができます。
「信託財産」が不可分であれば、共有状態となるため、受託者の管理・処分権限に影響を与えることになります。この場合は、19条によって分割請求をすることになると思われますが、結論は先ほどと同様、分割請求後は信託を継続するか終了するかのどちらかになると思われます。
仮に信託が終了しても、別の財産を追加するなどして、あらためて信託を設定すればいいわけですから、信託設定を遺留分侵害行為ととらえる①説なら、未来に向けての行動がとりやすいと思います。(小出)