相続登記について(5)

次に我が国の相続登記制度について触れたいと思います。

ご存知かと思いますが、日本の不動産登記制度は登記強制主義をとっていません。

そして、相続登記にも登記義務が課されていません。

このためでしょうか、しばしば相続登記を行っていない不動産を見かけます。

戸籍制度が発達しているので、相続人の確定が割と簡単になるので、相続登記をしなくても問題ないと考える方もいるのかもしれません。

ところが、相続登記が済んでいないまま放置されてしまうと、相続人を確定することが難しくなったり、遺産分割協議をおこなうことができなくなってしまうこともあります。

ここでは、司法書士が遺産分割協議による相続登記にどのようにかかわるべきなのかお話したいと思います。

これ以降は、遺産分割協議により法定相続分と異なる相続登記を行うことを前提にしてお話させていただきます。

(本木敦)

2018年11月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

次は競合行為です。

競合行為とは、例えば、受託者が信託財産として賃貸マンションを、固有財産としても別の賃貸マンションを所有していたとします。このとき、どちらも空き室があったので賃借人を募集したところ、複数の応募があったとします。この場合、固有財産の賃貸マンションの方から契約を締結してしまうことを競合行為と言います。端的に申し上げると、固有財産と信託財産とが同じ行為について相争う関係を競合行為と考えていただいて結構です。

利益相反同様、このような競合行為は、原則禁止で信託行為に許容の定めを置くことによって行うことができるという規定になっています。

この競合行為について、一つ事例をあげます。図をご覧ください。

図9

 受託者は賃借人との間で、隣接する固有財産・甲土地と信託財産・乙土地を賃料10万円(甲土地6万円・乙土地4万円)とする内容の賃貸借契約を締結しました。数か月後、賃借人から「今月は、苦しいのでとりあえず6万円支払います。」といって6万円を支払いました。この場合、どのように充当するべきなのでしょうか?

多くの方は、単純に債権額に按分して充当すればいいと考えた方がいると思います。その方法が最も公平だと考えるからです。事実、道垣内東大教授の書籍「信託法」228頁にも同様の考え方が示されています。

ところが、沖野東大教授が「条解信託法」251頁で示した考え方は、債権額に按分して充当する方法は競合行為に該当すると主張しています。理由とするところは信託法32条1項です。

 

信託法32条1項

受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。

 

沖野東大教授は、6万円を回収したならば、乙土地4万円に充当することができるのに、受益者の利益に反して固有財産のために按分充当させることは、条文の「固有財産の計算」に該当するから競合行為であるということです。

道垣内・沖野のどちらが正しいのかという判断をするだけの見識を私は持ち合わせておりませんが、はっきり申し上げることができるのは、実務に当たっては沖野説の考えで進めていくことが安全だということです。つまり、競合行為に該当すると考えて、競合行為の許容の定めを規定することが必要だということです。この事例でいえば、回収額を債権額に按分して充当するという具合になると思います。(小出)

 

2018年11月29日 | カテゴリー : 信託の基礎 | 投稿者 : trust

こば紀行#78 養老の滝

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第78回目は紅葉編2018、養老の滝

こば紀行紅葉編、今回は岐阜県養老の滝。浜松から鈍行列車で大垣まで行き、大垣からは養老鉄道に乗り換え7駅で着く。駅を降りると西側一帯は養老公園が広がっている。養老の滝はその1番奥、駅から距離にして約2キロ、時間にして登り坂を約40分歩いたところにある。

養老の滝に行くまでの所に「養老天命反転地」と呼ばれるテーマパークがある。世界的に有名なアーティストである荒川修作とマドリン・ギンズの構想による公園施設で、施設全体が1つのアート作品であり、人間の持つ視覚的な錯覚を体全体で楽しむ造りになっている。入場料750円、園内は基本的に家族連れやカップル、若者の群れが多く、間違いなくおっさんの1人歩きは辛い。雰囲気はどことなく箱根彫刻の森美術館に似ている(こば紀行#63参照)。あの頃はほんとによかった。。

さて、目指すは養老の滝。天命反転地から1.9キロ、テクテクひたすら歩く。小川沿いをゆるやかに登りながら歩く道中は、もみじのトンネルに覆われて、道行く人々を魅了するのだろうが、私が訪れた11月11日現在、このトンネルは真っ青だ。きっと、この記事がアップされる頃の週末あたりが最高なはずだ。

大した目の保養もなくゼーゼー言いながら歩き続けること30分、ついに目的地の養老の滝に辿り着く。苦労して辿り着いた割にはショボい滝だ。そして、お約束で自撮り棒を持った中国人観光客がはしゃいでいる。これなら白倉峡(こば紀行#72参照)の方が良いのではないかと思うが、きっと紅葉の最盛期であれば素晴らしいに違いない。着いて初めてここまで歩かずとも養老の滝すぐそばにも駐車場があり、わざわざ下からゼーゼー言わなくても済むことに気付いたのだが、秋の風情を楽しみながら散策したい方、私のようにドMの方には下から歩いてくることをオススメする。(こばやし)

 

2018年11月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続による土地の所有権移転登記に対する減税措置

不動産の名義を変更するには『登録免許税』という税金がかかります。相続で名義を変更する場合、不動産の固定資産評価額の4/1000にあたる登録免許税が必要です。

例)土地の固定資産評価額1000万円×4/1000= 登録免許税 金4万円

 

平成30年度の税制改正により、相続(相続人に対する遺贈も含みます)によって土地の所有権を取得した場合、所有権移転登記に対する登録免許税に以下のような免税措置が設けられました。

1)相続により土地の取得した個人が登記をしないで相続した場合

例)土地の名義が祖父の場合で、祖父(死亡)⇒父(死亡)⇒息子と相続登記を申請する場合

祖父⇒父への相続登記は土地については非課税となります。

※ 父⇒息子への相続登記については課税されます。

2)不動産の価格が10万円以下の土地で、法務大臣が指定した土地を相続する場合は非課税

 

現在、相続未了のまま放置された不動産が全国に多数あり、大変な問題となっております。

政府としても、速やかに相続手続きを完了してもらうよう様々な対策をしております。

相続は放置しても解決することはありません。むしろ相続関係が複雑になり、費用もかかりますし解決が困難になる一方です。

 

長年放置している相続手続きがある場合、この機会に手続きを進められてはいかがでしょうか?

(※ 免税になるかどうかは、対象土地がわかるものや相続関係がわかるものをご持参のうえ、お近くの司法書士にご確認ください。)

2018年11月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

遺言や相続の手続きが変わります(1)

新シリーズに突入しましょう!

テーマは「相続法の改正」。
相続や遺言に関する手続きがいろいろと変わります。
従来の制度がより使いやすくなったり新しい制度ができたりと、実務上もあれこれ影響が出てきそうです。

「叶」(かなう)は、民事信託の研究グループですので「相続法は関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、「委託者の死後における財産の有効活用」は民事信託における大きなテーマのひとつですので、民事信託を攻略するためには相続法への深い理解は不可欠なのです!

とはいっても、今回の相続法改正はとても多岐に亘っています。
また、専門的な議論を伴う改正点も多数存在します。
そこで次回以降、改正論点をかいつまんでご紹介していきたいと思います。

新シリーズにご期待ください!! (中里)

2018年11月22日 | カテゴリー : 相続法改正 | 投稿者 : trust

「意思能力」の問題は、株式の信託も不動産の信託も一緒ですよ。

相談をお受けしていると「信託契約は、お元気なうちしかできませんよ」と申し上げるときがあります。相談者が成年後見制度と民事信託の違いを勘違いされているときです。

意思表示などの法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力を意思能力といいますが、意思能力がない中での契約は無効となります。つまり、そのような状況では、契約である民事信託の活用はできないことになります。

ご本人の判断能力(意思能力)の問題になってきたときには、選択肢としては成年後見制度の活用になります。

最近では、土地や建物の売却や賃貸物件の管理をお子さん等に託すために、お元気なうちに民事信託の活用を検討される方々が少しずつ増えてきている感じがしますが、一方で、そういう方々に、「会社の経営における議決権の行使や株式の譲渡も、同じ意思能力の問題ですよ」とお話しても、「会社の方は、そうなったら考えます」という方が多いことに法律に携わる者としての無力感を感じるときがあります。

特に、身内以外の株主がほとんどいない中小企業の経営者の方々にとっては、会社の中での意思能力の問題は、あまりピンときていないようです。

会社経営こそ、成年後見人では代わることができない意思決定の連続なのですがね。

中小企業のリスク管理にもっと積極的に関わっていく必要性を感じています。(名波)

2018年11月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続登記について(4)

次に相続人の確認方法です。

◎フランスには日本のような戸籍制度がないため、相続関係に関しては公証人が調査します。また、公証人は遺言の作成、保管、遺言執行も行います。

◎ドイツでは原則として遺産裁判所が相続人の確認を行います。遺産裁判所が発行する相続証明書によって相続関係が証明されています。相続登記の申請にも裁判所による相続証明書が必要となります。

◎韓国では相続人の確認は法務士が調査した証明書類をもとに、登記機関である法院が行います。

◎台湾は、戸籍制度も採用しているため、相続人の調査方法は日本と同様である。相続人の確認は登記機関である地政事務所(行政官庁)が行います。

(本木敦)

2018年11月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

前回は、利益相反行為の禁止に関する31条1項について話しました。では、利益相反行為はすべからく禁止かというと2項でその許容を定めています。

図7

1号は信託行為の許容の定め、2号は受益者の承認、3号は包括承継、4号は合理的必要性・受益者の利益・正当理由です。

前回の事例は利益相反行為に該当すると判断しました。そこで31条2項1号の信託行為の許容の定めを信託契約に記載しました。つまり、物上保証ができるようにしたわけです。

これが委託者の要望だったからです(余談ですが、委託者は孫へ贈与の意向があったものの税の関係から断念し、信託設定を選択したものです)。

このように、信託設定・信託契約の段階から携わった場合は、委託者の意向をしっかり汲み取って、利益相反行為に該当する事項があれば、あらかじめ信託契約に反映して31条2項1号の利益相反行為の許容を定めておくことが大事です。これは、登記の方にも影響します。信託登記の後続登記として抵当権設定登記をする際、信託目録に利益相反行為の許容を定めておけば安心して取り組むことができます。絶対に見落としてはいけない条文です。(小出)

 

2018年11月19日 | カテゴリー : 信託の基礎 | 投稿者 : trust

こば紀行#77 浜名湖チャリ走③

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第77回目は浜名湖チャリ走③~奥浜名湖編

前回までのあらすじ~ 4年前の9月、こばやしと3名の仲間達はチャリで浜名湖を1周する冒険に出た。どこか真夏の面影を残しつつも優しく照らす日差しと、さわやかな空気、青く澄み渡る湖面を眺めながら、浜名湖東岸をチャリで走り抜けた。そして、問題の難所にさしかかった。

遊園地パルパル、浜松動物園を過ぎたあたりから緩やかな上り坂にさしかかる。それまでのサイクリングロードから一変、普通の県道の、ただの上り坂がひたすら続く。ロードバイクならともかく、ママチャリに乗ったまま漕ぎ続けるなど到底不可能で、必然、降りて山を越えることとなる。距離にして1.2キロ、上り坂の上、チャリを引いて歩くとなると時間にして30分はかかる。9月といえど、この時ばかりは日差しが強烈に僕らを照りつけ、汗を拭いながらひたすら上る。当然、会話などはない。この山越えが仲間達の心を折った。

山を越えると奥浜名湖、気賀の街並みが現れる。観光案内を兼ねてることもあり、ベタなところだが、鰻の名店「清水屋」で昼食を取った。およそ1時間待った後、待望の鰻重が登場!しかし、一同どこかテンションは上がらない。その理由は無論、あの山越えのダメージによるものだ。食後、4人の間で会談が開かれる。議題はもちろん、「浜名湖チャリ1周計画」の続行か断念か。4人の内訳はゆとり世代(1986年生)の2人とオイルショック世代(1974年生)のこばやし、その中間のおしん世代(1983年生)のもう1人。意見は割れた。断念、引き返しを主張するゆとりの2人と、計画続行を主張する強行派のこばやし、そして、沈黙を続けるもう1人…この計画の立案者であるこばやしとしてはここで引き返すなどもってのほかで、むしろここからの道のりがこの計画の真骨頂だと訴えた。

しかし、「疲れた疲れた」と駄々をこねるゆとり達には何も響かない。駄々っ子達の意見には抗えず、結局鰻屋を出て、来た道を引き返すこととなった。無念だ…浜名湖を照らす午後の日差しがどこか切ない。と、思っていたのは私だけで、他の3名はそうでもないようだ→。こんなポーズとる体力が残ってるなら1周できただろ!! まあいい、いずれにせよ少なくとも私にとってはかけがいのない思い出の1ページとなった。(こばやし)

2018年11月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

遺言書を見直す

数年前、弊所で遺言書の作成のお手伝いをした相談者の方から、

『A土地を息子に生前贈与することにしたから手続きをお願いしたい』

とご相談をいただきました。

以前作成した遺言書では、A不動産は相談者の死亡後に売却した上、相続人全員で売却代金を分配することになっていました。

今回A土地を息子に生前贈与してしまったら、遺言書の内容を履行することができません。このような場合、遺言書の「A不動産は相談者の死亡後に売却した上、相続人全員で売却代金を分配する」という部分が撤回されたことになります。

遺言書は、何度でも撤回や書き換えが可能ですし、遺言書の内容と矛盾する財産の処分も有効です。

相談者の方に、『生前贈与は可能ですが、遺言書のA土地に関する部分を撤回することになりますが、それで大丈夫ですか?他の相続人のことも考えて遺言書のほかの部分を手直ししますか?』と確認したところ、実は、相談者の方には遺言書作成後に新たに取得した不動産があったり、A土地以外に処分した不動産があったりと財産内容が遺言書作成時と大きく異なっていました。

相談者の方は、遺言書を作成して以来、ご自身の遺言書を見返したことがなかったため、どんな内容の遺言書にしたのか正確に覚えておらず、また、財産内容も変動したので、それぞれの財産が結局どう承継されるのか(遺言書の効力がどのように及ぶのか)よく分からなくなってしまったそうです。

一旦遺言書を作成した場合でも、相続が起こるまでに長い時間がかかる場合も多く、その間に事情が変わったことなどを理由に、遺言書の内容を撤回したいと考え直す場合や、その修正が必要となる場合があります。ただ、遺言の撤回や、その修正方法には決まりごとがあり、法律で定められている方法で撤回や修正を行わないと、その撤回や修正が認められないという危険があります。

 

遺言書を作成した場合でも、定期的に見直しを行い、過不足がないか確認されることをお勧めいたします。

2018年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust