このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。
第41回目は秘境駅
秘境駅とは、人家のほとんどない地帯に存在する駅のことを指し(ウィキペディア)、そんな駅が政令指定都市浜松にも存在する。市内を通過する鉄道といえば、JR東海道線や遠鉄電車(赤電)、天竜浜名湖線あたりが思い浮かぶが、もう一つ、JR飯田線が浜松市北部山間部をかすめる様に走っている。秘境駅と言われる「小和田駅」はこの沿線、佐久間、水窪のさらに奥地にある。
朝7:19に浜松駅を出発、豊橋駅で飯田線に乗り換え、11:19小和田駅到着、浜松駅から実に4時間を要する。そして、この駅には道路が通じていないため事実上、飯田線でしか行けない。さらに、電車を下りるとホーム上には→の様な立て看板があり、ここが静岡、愛知、長野3県の県境にあることを示している。ちなみに、次の電車が来るまで2時間半…まさに秘境だ。
ホームを出ると木造の駅舎がある。もちろん、改札もなく無人だ。中を見渡すと周辺案内板なるものがあるが、なぜか手書きな上に、スケール感が大きすぎるため、詳細は全く分からない。加えて、1993年、皇太子殿下と小和田雅子様のご成婚の折に「小和田」つながりで恋愛成就の駅としてブームとなった様で、当時の写真や、外には残骸らしき記念碑やベンチがある。しかし、駅舎を出てもそれら以外は施設どころか民家すらなく、特に案内図が必要になる程案内するものもないと分かる。
駅の眼下には天竜川が流れ、周囲は緑の木々が生い茂っている。その中を少し散策をすると、廃墟と化した製茶工場?の跡や、ボロボロのダイハツミゼットが出てくる。大自然が人工物を飲み込む姿はまるで、「天空の城ラピュタ」を思わせるような雰囲気だ。かつて、この駅周辺には大規模な集落があったものの、1956年の佐久間ダム完成により水没…今では駅から険しい山道を1時間ほど登ったところまで人の住む家はなく、この駅の生活利用者はいない。そんな背景を知ると、ここで過ごす時間はますます神秘的で、昭和にタイムスリップしたかのような感覚すら覚え、感慨深い。
しかし、帰りの豊橋駅で私は知る、飯田線「急行秘境駅号」なるものの存在を…何だか興ざめした。私がプチ観光スポットとして紹介するまでもなく、観光地化しているではないか!
便利な世の中になる反面、本当の秘境を探すのは難しい。(こばやし)