第8条 信託財産の引渡し等 ②

【第8条・続き】
3 委託者及び受託者は、信託不動産について、本信託の締結後直ちに所轄法務局に対し、委託者の死亡を始期とする始期付き所有権移転仮登記及び始期付き信託仮登記 を申請するものとする。この場合の登録免許税その他登記申請手続きに要する一切の費用は、委託者の負担とする。

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この契約は、 委託者の死亡を効力発生日とする始期付き信託契約を想定しています。
そうすると、契約締結時から委託者死亡までの間は、信託財産を構成する不動産は受託者の管理下には置かれず、委託者が自由に管理・処分できる資産ということになります。

ところで、不動産登記には、土地や建物の権利関係を対外的に公示するという機能が期待されています。土地や建物の取引を希望する者は、公示された情報を調査することにより安全・安心な取引が可能か否かの判断材料を入手できるわけですね。
そうすると、現在すでに効力が生じている権利関係だけでなく、近い将来発生することが予定あるいは予測される権利関係についても可能な限り公示しておくことは、円滑な経済活動の推進に資することとなります。

また、死亡によって信託財産となる不動産は委託者の遺産を構成しないこととなり、速やかに受託者に引き渡されるべき資産となるはずですが、契約だけして登記記録上に何の公示もされていないとなると、受託者や受益者としてはも不安が残ることでしょう。

そこで「将来、委託者である所有権登記名義人が死亡したときには、この不動産は信託財産となります。委託者の遺産は構成しません!」という情報を「仮登記」という方法があるのです。   (中里)