前々回及び前回の続き「後継ぎ遺贈型信託」です。
立案担当者による最初の解釈の方が条文に素直な解釈であると考える方が多いようです。しかし、この考えには問題となりそうな事案があります。以下のような事例です。
事例
「受益者を当初受益者Aの相続人と指定し、信託設定時から30年経過時点の受益者がX、Yです。Xには相続人としてPとQ、Yの相続人としてRとSがいます。ここで、XがYより先に死亡しました。」
立案担当者の見解は、30年経過した後の受益権の取得は1回限りというルールでした。したがって、PとQは受益権を取得できます。しかし、その後にYが死亡したらRとSはどうなるのでしょうか?取得できないのでしょうか?取得できないと解することもできますが、XとYの死亡の前後で受益権の取得状況が変わるというのは釈然としません。
この点、もう一つの解釈なら、このような疑問点は生じないのです。
もし「後継ぎ遺贈型信託」を検討される方がいらしたら、今申し上げた問題点を認識して取り組んでください。個人的な意見ですが、結論がはっきりしない以上、積極的に取り組む設定方法ではないと思います。
さて、回数を数えてはおりませんが「信託の基礎」は、ここらで一旦終了にしたいと思います。もう少し、著しておきたい部分があるのですが(具体的には「受益者」「委託者」「信託の終了」について)自身の考えをもう少しまとめてから、あらためて述べてみたいと思います。(小出)