今年度の試験合格者をお迎えしました。

司法書士試験は毎年夏に開催され、秋に合格発表があります。
昨日は、毎年恒例となっている試験合格者をお迎えするためのセレモニーが開催されました。
これから合格者は、半年ほどの間、超過密スケジュールの新人研修期間を過ごしたうえで、晴れて司法書士の看板を掲げるための条件が調うこととなります。

近く「叶」にも新メンバーをお迎えしたいと思います! (中里)

2018年11月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

受託者がいれば成年後見人は不要?

民事信託のセミナーのチラシや、書籍、ホームページでの紹介文を読むと、成年後見制度の代わりに民事信託を活用することを推奨するような文章を目にします。

それを鵜呑みにして、民事信託を活用して受託者がいれば、あたかも成年後見人は不要のように思っていらっしゃる方がいたとしたら注意が必要です。

確かに、受託者は、委託者兼受益者が認知症になっても、あらかじめ信託契約等で定められた財産の管理、処分や資産の運用(特に積極的な運用は、成年後見制度では認められていません)をすることができます。

でも、そのことをもって、成年後見人が不要とまでは言えないのです。

例えば、年金などの本人にしか支給されない財産は、本人が認知症などにより判断能力に問題が発生した場合には、受託者は年金が振り込まれる銀行口座から出金したりすることはできません。たとえ、その口座から受託者が管理する口座へ自動送金することになっていても同じです。自動送金は継続すべきではありません。

そうした場合には、家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをして、成年後見人を選任してもらうことが必要となります。

しかも、受託者となっている方は、その役割の違いから成年後見人となることはできないとされています。

以上のように、民事信託を活用したからといって、成年後見制度の活用が不要になるわけではありませんので注意が必要です。(名波)

2018年11月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続登記について(3)

◎管理清算主義
この形態では、死亡などの相続原因が発生した場合、相続財産は直ちに相続人に承継されず、一旦死者の人格代表者(personal representative)に帰属させ管理させます。管理生産主義では【債務】について包括承継主義と異なり、建前上は相続人が被相続人の債務を承継することはないとされています。人格代表者が被相続人の利害関係人との間で財産関係の清算をし、その結果プラスの財産が残る場合はそれを相続人が承継します。

これは英米で採用されている形態です。もっとも、相続財産が小額の場合は費用倒れになること、多額の場合でも清算手続を経ない方が経済的に望ましい場合もあるため、現実には清算手続を経ずに債務も含めてそのまま相続人が財産を承継する便法が採られることもあります。

◎英米法では管理清算主義が採用されていますが,我が国・フランス・ドイツ・韓国・台湾では包括承継主義が採用されています。(本木敦)

2018年11月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

まず、31条1項に利益相反行為の禁止が定められています。

図7

1号は自己取引、2号は信託財産間取引、3号は双方代理取引、4号は間接取引です。

 ここでは、4号だけ確認します。

「信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの」

ここで注目してほしいのは、「利害関係人」という言葉です。この「利害関係人」とは、どの程度の範囲の人をいうのでしょうか?

 

事例を申し上げます。老齢の親が委託者兼受益者、受託者をその子とします。

図8

信託財産の一つに土地がありました。将来、孫が結婚して住宅を建築したいときにこの土地を提供したいと考えています。そうなると、金融機関から借り入れをする際、建物と同時に土地にも担保設定をすることが考えられます。物上保証です。このとき、このお孫さんは「利害関係人」に入るのでしょうか?これは、私が実際に経験した実例です。

実は、利害関係人に関して信託法は定義していません。したがって、これは解釈によるしかありません。そもそも、利益相反関係というものは、売買契約における売主と買主のような関係を指します。このとき、売買代金が上昇すれば、売主は利益に、買主は不利益に、といった関係になります。このように一方の利益が他方の不利益となる関係を禁止しているのは、受託者が「他人のため」に信託財産を所有しているからです。そして、間接取引まで禁止しているのは、利益相反行為の利益が、受託者の利益と同一視できる場合を対象とするからです。以上のような趣旨を考慮すれば、「利害関係人」とは、受託者と利益を共通にする者を指すと解することができます。

このように解釈した場合、具体的にどのような人が「利害関係人」になるのかを例示したものとして、アメリカ統一信託法典が参考になります。

これには、

・受託者の配偶者

・受託者の子孫・兄弟姉妹・親、またはそれぞれの配偶者

・受託者の代理人または弁護士

・受託者または受託者につき重要な利益を有する人が、受託者による最善の判断を下す際に影響を与える可能性をもつ利害関係にある法人その他の人または事業体

 

と規定されてます。もちろん、規定のあり方が異なりますので、そのまま日本の信託法に取り入れることはできないと思いますが、一つの参考になると思います。

私も、この規定を参考に孫を利害関係人と判断しました。したがって、孫を債務者とした物上保証は、利益相反行為の禁止によりできないことになります。(小出)