民事信託のセミナーのチラシや、書籍、ホームページでの紹介文を読むと、成年後見制度の代わりに民事信託を活用することを推奨するような文章を目にします。
それを鵜呑みにして、民事信託を活用して受託者がいれば、あたかも成年後見人は不要のように思っていらっしゃる方がいたとしたら注意が必要です。
確かに、受託者は、委託者兼受益者が認知症になっても、あらかじめ信託契約等で定められた財産の管理、処分や資産の運用(特に積極的な運用は、成年後見制度では認められていません)をすることができます。
でも、そのことをもって、成年後見人が不要とまでは言えないのです。
例えば、年金などの本人にしか支給されない財産は、本人が認知症などにより判断能力に問題が発生した場合には、受託者は年金が振り込まれる銀行口座から出金したりすることはできません。たとえ、その口座から受託者が管理する口座へ自動送金することになっていても同じです。自動送金は継続すべきではありません。
そうした場合には、家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをして、成年後見人を選任してもらうことが必要となります。
しかも、受託者となっている方は、その役割の違いから成年後見人となることはできないとされています。
以上のように、民事信託を活用したからといって、成年後見制度の活用が不要になるわけではありませんので注意が必要です。(名波)