こんな信託には、贈与税がかかる?

信託契約によって委託者の財産が信託財産として受託者に移転した場合、贈与税がかからないのが原則です。

先日、久しぶりに民事信託のある書籍を読んでいいたところ、ハッとした言葉がありました。

「特定委託者」という言葉です。

相続税法第9条の2によると、「特定委託者」に該当すると、「信託」による移転でも贈与税がかかるということになります。よくよく考えてみると、この言葉は、民事信託の勉強し始めのときに学んでいた言葉でした。そのときも税務上の知識をしっかりと学んでいないといけないという意味でハッとしたことを思い出しました。あらためて、原点に戻って勉強を続ける大切さを感じた瞬間でした。

さて、お待たせいたしました。

「特定委託者」とは、信託の変更をする権限を現に有し、かつ、その信託の信託財産の給付を受けることとされている者をいいます。

例えば、帰属権利者になっている受託者が何でも変更できるようになっている信託契約です。民事信託を勉強されている方であれば、この事例に対し違和感を感じることができると思います。税務上の問題だけでなく、そもそも民事信託としての体をなしていない状態だと思います。これからも常に基本に戻りながら、勉強を続けていきたいと思います。(ななみ)

 

2018年9月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

親の建物に子が増築する

親名義の建物に子供が増築した場合、増築部分は建物の所有者(親)の所有物となります。この場合、親が子供に対して対価を支払わないときには、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。
しかし、子供が支払った増築資金に相当する建物の持分を親から子供へ移転させて共有とすれば、贈与税は課税されません。

以上がタックスアンサーの記述です。№4557

この登記は年末ころから年始くらいまでよくお話をいただく事例です。

理屈は上記のタックスアンサーのとおりでよいのですが、実際に建物の持分を親から子どもへ移転させて共有にすることは、実はとても難しいです。

増築資金は建築請負契約書から明確ですが、「増築資金に相当する建物の持分」は一体どのように計算するのか、という課題があるからです。それは、建物の価格をどのように計算するのかということと同義ではあります。上記のタックスアンサーでは、建物の価格については書かれていません。時価なのか、簿価なのか、相続税評価なのか、どれを使えばよいのか不明確であり、いつも悩むところです。

私たち司法書士は税の専門家ではないので、ここはどうしても責任のある回答ができません。このようなときは、お客さまと一緒に税務署に行って、お客さまから質問していただき、そこに同席させていただくことが良いと思っています。お客さまも理解いただけますし、司法書士も安心して登記手続を進めることができるからです。(本木敦)

2018年9月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

最後に遺留分に触れて、信託財産は区切りとします。

信託の設定によっても、遺留分減殺を免れることはできないことについては、異論がない状況です。そこで、図をご覧ください。

図4

図のように

1.信託が設定され、当初信託財産が受託者に対して処分されることを遺留分侵害行為であるととらえるか、

2.信託設定そのものは問題とせず、受益者の受益権取得を遺留分侵害行為ととらえるのか

という2つの見解が存在します。

では、遺留分減殺請求を受けた場合に、その後の信託運営はどうなるのかということを、2つの見解について簡単に触れておきたいと思います。(小出)

こば紀行#72 白倉峡

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第72回目は白倉峡

国道152線を水窪方面へ北上、休日にどこへ行って良いか分からないときはとりあえずこのルートを辿る。山奥で緑の木々に囲まれた静かな空間の中、ただただ自分の世界に浸るのが好きだからだ。そして今回、そんな私にふさわしい場所を見つけた。152号線を秋葉ダムの手前で西に外れ、車で15分程度進むと白倉峡はある。道中はどことなく青森の奥入瀬渓流を思わせる様な雰囲気だ(あくまでも雰囲気ね)。

看板があまりに控えめ過ぎて(←図)うっかりしてなくても見落としてしまう。駐車場なのか?廃墟に近い売店と覚しき場所に車を止め、そこから遊歩道に入る。遊歩道は全長約1キロ程度、階段を下ると小川といくつもの滝があらわれる。日曜の昼間にもかかわらずこの場に足を踏み入れる人はない。あたり一面が緑の世界、聞こえるのは水の音ばかり…ペットボトルを片手に岩場を辿り、川の水に足を浸せば、南アルプス天然水のCMに出てくる宇多田ヒカルの気分を味わえる。

猛暑中の避暑地として、これからの時期なら紅葉スポットとしてもおすすめかも知れない。(こばやし)

 

2018年9月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

『いつか』は突然やってくる

先日、ある方(相談者Aさん)から夫の財産の贈与のご相談をいただきました。

Aさんの夫は最近入院し、命に別状はないものの、かなり衰弱している状態。このまま寝たきりになってしまうのではないか、介護生活になるのではないか、とAさんは突然不安になり、『夫の財産を何とか今のうちに移さなくては!』と思い立ってご相談に来たそうです。

当然のことですが、財産を贈与するにしろ、遺言書を書くにしろ、何らかの別の処分をするにしろ、本人(この場合はAさんの夫)の意思により行われなければ無効です。病気でよく分からないのをいいことに、家族が勝手に財産を処分することはできません。

Aさんに夫の状態を聞いてみると、字は書けないが、現在は意思疎通ができる状態とのことでした。しかし、高齢であることや入院生活で刺激が少ないことなどから、半年、1年経過した場合はAさんの夫の意思能力が衰えて認知症になっている可能性もあるそうです。

『本人の意思能力がなければ財産を処分できない』と聞き、Aさんは益々焦って、『早く対応しなくちゃ。財産はどうするのが1番いいでしょうか』と私に尋ねられましたが、それはAさんやAさんの夫の財産の額や相続人との関係、税務手続や本人の意向などをすべて検討した上で、本人やご家族がよく話し合って決めていただくべきものなので、私が決めるものではない。また、よく検討せずに焦って手続きすると失敗しかねない旨をお伝えしました。

不動産を贈与した場合、名義を変更する登記費用だけではなく、『不動産取得税』や『固定資産税』などの税金が発生しますし、『贈与税』がかかる場合があります。特に『贈与税』は財産の価格によっては多額の税金の支払義務が発生する場合があります。

財産をどう処分するかという問題は、法律面だけではなく、税務面の問題も生じる可能性があるため、本来であれば、法律家だけではなく税理士等にも相談し、遺言や生前贈与、民事信託など様々な方法を検討した上で対応しなければ、後日多額の税金を払うことになったり、親族間でトラブルが発生したりする可能性があります。

自分にとっての最善の対策を見つけるには、時間もかかりますし、様々な対策を検討するだけの理解力と体力も必要です。

元気なうちに、時間をかけて対策すべきものになりますので、『いつかやればいい』と思わずにご相談することをお勧めします。

 

2018年9月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(16)

前回は、信託の登記申請だけを頼まれた場合の司法書士報酬についてご説明しましたが、登記申請だけの依頼を受けるだけでなく、登記申請の依頼に先立って契約書案を示されその内容や登記手続き上の支障の有無などについて助言・確認を求められることも少なくありません。

このような場合、司法書士は提示された契約条項案を精査し、単に登記上の支障の有無を検討するだけでなく、場合によっては「この条項の意味するところが曖昧」「この点は・・・・のような条項を設けておいた方が将来予測される問題を回避できるのでは?」「この条項は、信託法の趣旨に合致しないので削除を検討すべき」など、全面的なアドバイスも含めて対応します。
場合によっては、条項案を起案して当事者に再考を求めるようなことも考えられます。

したがって司法書士報酬には、登記申請だけを頼まれた場合の金額に、以上のような助言・確認(・起案)等の作業に対する対価をオンされます。
ここでオンする金額は、作業内容によってだいぶ幅ができるわけですが、何ら手直しが必要ないような場合で3万円程度、多くのケースでは10万円程度となります。   (中里)

 

※ 前回も指摘しましたが、金額は中里の事務所における報酬規定です。司法書士に依頼の際には必ず事前に見積もりの確認をしてください。

2018年9月20日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust

民事信託の遺言機能の活用

遺言のご相談をお受けしていると、「遺書」と勘違いされている方々が多くいらっしゃいます。

確かに、遺言は書かれた方がお亡くなりになられたときに効力が発生しますが、すぐにお亡くなりなることを前提にしているわけではありません。ただ、どうしても「死」をイメージしてしまう方が多いようです。

実際、配偶者や子供のために遺言書を書こうとされる方が、いざ書こうとすると手が震えてなかなか書けないという光景を何度も拝見しています。また、子供たちが、親御さんに遺言書をかいていただこうと頼むと「私を殺す気か!」と怒られてしまったというお話もたくさんお聞きしています。

そんなときに、民事信託の選択肢のお話をさせていただくことがあります。民事信託は生前の財産管理機能と遺言機能の双方を兼ねているからです。

相続対策は多くの方々がやられるようになってきているのですが、生前の認知症対策のことまでは意識されていない方がほとんどです。

民事信託は長生きされることを前提にでてくる選択肢ですので、民事信託のご説明をさせていただくと皆さんの視点が変わることがよくあります。

だからといって、無理矢理、民事信託を選択することは本末転倒になってしまいますので、十分に検討しながら、どの制度がご自身の問題解決に最適なのかを見極めながら選択肢を決めていかれることをお勧めいたします。

(ななみ)

2018年9月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

少しづつ「民事信託」への理解が広まっているのかな

先日、信託契約を締結したお客さま(Aさん)がいます。全ての手続が完了した後、ある介護施設の方(Bさん)の名刺をいただきました。

BさんはAさんを担当しているようでした。

Aさんの説明によれば、Bさんは介護の現場で主に成年後見制度と馴染みがあった。しかし、最近、成年後見制度とは異なる仕組みがあるように感じている、もう少し勉強しておきたいので研修会等があれば参加したい。ということでした。

信託契約の締結に関与させていただいた上に、介護施設のBさんまで紹介していただき感謝しつつ、私は早速Bさんに電話してみました。

Aさんの説明どおり、成年後見の制度は入所者さんの手続をするうちに理解できるようになったけれど、信託については馴染みがない、というものでした。

当グループ叶うでも3年くらい前に、ある施設で民事信託について研修会をさせていただく機会に恵まれました。当時は施設の方も民事信託について初めて耳にされる方が多かったと記憶しています。この時は、私たちの方から民事信託について研修会を開催させていただきたいと持ちかけて研修会が実現しました。

今回のBさんでは、施設の方から勉強したいとのことです。民事信託への理解が浸透してきているのを感じました。

叶うでは成年後見制度と民事信託の違いを徹底的に分析しており、その分析についてはいつでも研修を開催することができます。

民事信託の制度の理解のために是非叶うにお声かけください。(本木敦)

 

2018年9月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

今回は、固有財産に関する取引の債権者は、信託財産を責任財産とすることはできるのでしょうか?図では左から2番目の矢印です。

図3

図では「×」と記されてます。信託法23条を見てみましょう。固有財産の債権者は信託財産に対して強制執行ができないと規定されている条文です。

第23条 

信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

(2項以下、略)

 

強制執行することができないということは、信託財産に属する財産を引き当てにできないことを意味します。つまり、図のような説明となるのです。

しかし、固有財産と信託財産の区別が当事者だけではなく、第三者から見ても明確にされていないと、固有財産に関する取引の債権者は信託財産に対して強制執行等の手続をしてしまうかもしれません。そうならないためには、ある程度債権者に配慮する必要があります。具体的には、「これは、信託財産だ」と公示することです。

公示方法の典型例は登記になります。登記をすることによって信託財産と固有財産の取り分けが明確になります。逆に、登記を怠れば第三者に対抗することができないということになります。(小出)

 

こば紀行#71 美ヶ原高原

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第71回目は美ヶ原高原

今年の夏は暑すぎた。エアコンの効いた部屋にひき籠もり、体育座りをしながら世の中を憂う日々であったが、本当の涼を求めて家を出た。

浜松から車で4時間半、国道151号線をひたすら北上し、諏訪湖を越えたあたりからビーナスラインを経て美ヶ原山頂付近、山本小屋に辿り着く。山本小屋から10分も歩くと広大な牧草地が広がる。標高2,000Mの高地、下界は30度を超える真夏日も、ここではシャツを羽織るくらいでちょうどいい。

澄み渡る青い空、その青い空にくっきりと浮かぶ真っ白な雲。緑の大地はどこまでも広がり、その向こうには遠く連なる北アルプスの山々…降り注ぐ太陽の光の中、草を食む牛たちとそれを横目にただひたすら歩くこばやし。この日常とはかけ離れた牧歌的な風景を眺めていると、時間はゆったりと流れ、どこか心も澄み渡る。猛暑が続く日常の中、標高2,000Mの空中散歩は最高に贅沢な時間でもある。(こばやし)

2018年9月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust