次に「コンサルティング」を検討しましょう。
とは言っても、再三指摘のとおり「コンサルティング」の具体的な中身は明らかではなく、筆者の想像をもとに書き進めるしかないわけで、この点は実際とは異なる部分も少なくないと思います。あらかじめご承知おきください。
「コンサルティング」という言葉で筆者が想像するのは、信託の全容を管理し、当事者の選定、信託財産の管理・運用方法や処分方法等をすべて自身の描いたプランにしたがって実現化することを請け負う業務、というイメージです。
極端かもしれませんが、委託者のどのような財産をどのように管理し、運用し、処分するのかは「コンサルティング請負人」の胸先三寸で決まり、受託者は、いわば「コンサルティング請負人」の使者にすぎないというような姿を想像してしまいます。
ここまで極端でないとしても、信託の全容を多かれ少なかれコントロールする立場にある者と位置付けられることができるでしょう。この想像が業務の実態と合致しているのであれば、信託財産を包括的に管理しているように理解できますので、報酬の点だけ見れば「信託財産の●%」という定めも妥当といえなくはなさそうです。
ところで、このような業務は、司法書士法による制約がないのでしょうか?
このシリーズの最初の方で、くどくどと司法書士業務について解説をしてきました。その際に指摘したことの要旨は「司法書士にお任せします!」という依頼の仕方ができるのは140万円以内の民事の紛争に限りますよ、ということでした。
もっとも、司法書士は家庭裁判所から成年後見人などに選任される場合もあり、この場合も包括的な財産管理は可能です。信託における「コンサルティング」の性質は、「140万円以内に民事紛争」よりも「成年後見業務」に近いと言えるでしょう。
しかし、信託財産を包括的に管理すべき立場にあるのは「受託者」であって、「コンサルティング請負人」ではないはずです。「コンサルティング」と称して信託の全容に多かれ少なかれコントロールしたいのであれば「受託者」に就任するか、これが信託業法の規制に抵触するのであれば少なくとも「信託監督人」の地位に選任してもらうべきではないでしょうか?
そうすると、「コンサルティング」という名の下に信託を管理下に置き、「信託財産の●%」という報酬を受領する行為は、やはり信託業法の脱法に該当すると指摘できるように思うわけです。 (中里)