民事信託の契約を締結する際、必ず「信託の目的」を決めます。
この「信託の目的」は、信託をなぜ、何のために、誰のためにするのかを設定するもので、信託契約締結後、受託者が委託者の財産をどのように管理するか、処分するのかの行動指針になる非常に大切な要素です。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・自分が家族のように大切にしているペットの管理、生活の保護
・自分の老後の財産管理
・後継者への円滑な事業承継のため
・障害のある子の生涯にわたる生活支援、財産管理
しかし、最近になり、信託をやりたい方(といっても財産を所有している方(委託者となる方)ではなく、家族の財産を管理したい方(受託者になりたい方))がご相談にお見えになり、
「信託の目的は特にないが、家族が認知症になって財産が自由に処分できなくなったら困るから信託したい」
と言われることがあります。
信託後の財産の使い道を詳しく聞いてみると、
・本人(財産を所有している方)の生活費、介護費、医療費
・自分(受託者になりたい方)の住宅資金
・孫の教育資金に充てるかもしれない
・とにかく何が起こるか分からないから何でも使えるようにしたい
と言われ、要は自分(受託者)の自由な判断で、家族の財産を自由に処分できるようにしたいという希望でした。
しかし、民事信託は、委託者の財産を受託者の方に丸投げするものではありません。
委託者は、自分の希望や方針及び権限をきちんと決めた上で受託者に財産を託し、受託者は、その委託者の希望や方針に反しない限り、柔軟な財産管理・積極的な資産の有効活用を実行できます。
受託者は、委託者の財産をあくまでも委託者の希望に反しない範囲内で自由に管理処分することしかできませんが、どうも「民事信託すれば家族の財産の財産を何でも自由にできる」と思われている方が増えているように思います。