引き続き、信託業務について司法書士が「信託財産の●%を報酬とする」というような成功報酬制を採用することの妥当性について検討します。
信託契約締結後の「継続的なフォロー」や「コンサルティング」という用語でくくられた、司法書士が実際に提供する業務の中身を検証する必要があるというのが前回の指摘でした。「フォロー」なり「コンサルティング」なりが、受託者を司法書士のコントロール下に置くような外観を作出していたとすれば、信託業法脱法の疑いもあるというのが前回のまとめでした。
しかし、信託契約締結に関連する事務作業がひと段落した時点、つまり受託者としての日常の受託業務が回り始めた以降は、司法書士が受託者の相談に応じたり、あるいは信託財産全般のコンサルティング(もっとも、「コンサルティング」の実態が何なのかは未だ明らかではありませんが)をしなければならないニーズがどれだけあるのかは疑問です。
受託者の業務遂行が適正か否かを監督する必要があるならば、あらかじめ信託契約の中で信託監督人の定めを置き、その報酬に関する規定も設けられるはずです。逆に信託監督人の定めがないのであれば、委託者は「受託者の監督」という機能を求めていないと判断できます。受託者自身が「自分の業務遂行に不安がある」ということで司法書士に相談するということは考えられますが、この場合の相談料が信託財産から支出されるのはおかしいですよね。受託者が自身で相談を求めたわけですから、信託財産からではなく、受託者の固有財産から支払われなければなりません。
また、この手の受託者からの相談は、信託契約締結後の個別事情に起因する相談であり、契約締結前にこのような相談が定期的かつ継続的に発生するという事態は想定されていないはずです(仮に想定していたとするならば、それこそ信託監督人の定めをしておくべき事案でしょう)。この際の金額は、各事務所の報酬規程が「相談業務」をいくらとしているのかによりますが、通常は、1時間あたり数千円~1万円程度という価格設定をしているケースが多いように感じます。この点は、各事務所の報酬規程を確認する必要がありますが、単発的相談の積み重ねの対価が「信託財産の●%」というのは、私は均衡性に欠くように感じます。 (中里)