報酬(2)

司法書士報酬を考えるに先立ち「司法書士の業務」についての整理を試みることにします。

司法書士業務そのものは多岐に亘りますが、大別すると「個別受任事案」と「包括受任事案」のふたつに整理できるのではないかと考えます。
登記申請や破産申立書の作成などは「個別受任事案」に該当すると考えられる一方、いわゆる簡裁代理業務(※)や成年後見人への就任などは「包括受任事案」と考えられるでしょう。

「個別受任事案」における業務の中心は【書類作成】であると考えられます。もちろん、適正な書類を作成するためには、事情聴取・調査・意思確認等の作業が不可欠ですが、これらはいずれも最終的に【書類作成】に収斂されると考えられるでしょう。つまり〔いかに早く正確に書類を作成するか〕が、依頼者のニーズであると考えられるわけです。
したがって、「個別受任事案」における司法書士報酬のほとんどは【書類作成】と対価関係にあるといえます(「ほとんど」としたのは、日当や交通費、証明書申請手続き等に対する事務報酬も含まれるからです)。

一方、「包括受任事案」においては〔依頼者にどれだけの利益をもたらすことができるのか?〕が重視されるといってよいでしょう。裁判や交渉の代理であれば「いくら回収したか?」、成年後見業務であれば「本人の財産管理,身上監護にどれだけ寄与したか?」が、報酬の多寡に影響を及ぼすことになります。
つまり「包括受任事案」では、司法書士報酬は【依頼者が得た利益】と対価関係にあると考えられます。
裁判や交渉の代理の場合は、着手金のほかに「回収額の〇%相当額」の成功報酬をいただくのは、利益が多いほど報酬が高くなることの現れですね。成年後見人の報酬は裁判所が決定しますが、この場合も管理すべき財産の多寡や事案の難易度が考慮されることになるのです。

このように、司法書士業務が「個別受任事案」と「包括受任事案」とに大別できるとすると、【民事信託の支援】はいずれの業務に属するのか? また、私たちがいただく報酬は何に対する対価なのか? が問題となってきます。   (中里)

(※)司法書士は、140万円以内の民事トラブルについて依頼者の代理人として交渉や裁判をすることができます。裁判の代理は「簡易裁判所」に属する事件に限定されていることから、私たちの業界ではこのような業務を「簡裁代理業務」と呼ぶことが多いのです。

2018年4月20日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust