遺言について~⑦~

本日は遺留分についてお話します。父を被相続人、息子を相続人という単純な事例で考えてみます。父が亡くなり、息子が相続の手続を進めようと遺品を整理していたところ、公正証書遺言を発見しました。その遺言には、全財産をご近所のAさんに遺贈させるという内容でした。このままでは、息子さんは相続人であるにもかかわらず、遺言によっては遺産を相続できそうもありません。遺言は故人の最後の意思表示ですから、尊重しなければならない面もあるからです。しかし、相続人が何も相続できないという結論は妥当であるのか考えてみたいと思います。

まず、遺言者の立場から考えると、自分の財産を自由に処分することができるのは当然ですから遺言は尊重されるべきだということになります。財産処分の自由ということです。

では、相続人の立場はどうでしょうか。そもそも相続制度というのは、遺族の生活保障という面がとても大きいと思われます。それにもかかわらず、遺言者の考えだけで相続人の生活をないがしろにするのも問題があると思われます。つまり、相続人の保護も必要だということです。

このことから、遺言者の財産処分の自由を許しつつも、相続人に一定の割合の財産の承継を保障することも重要です。このように、相続人に一定割合の財産承継を認める制度を遺留分制度といいます。この制度によって、遺言者による自由な処分に制限が加えられることになります。(小出)