第12条 資金の借入れ等④ ~ 利益相反行為にご注意を!

(資金の借入れ等)【再掲】
第12条 (1項省略)
2 受託者は、前項の借入れを行う場合、信託不動産を担保に供することができるものとする。

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金銭の借入れと信託財産の担保提供に関連して、最近こんな契約条項を目にしました。

(1)受託者は信託された土地の無償貸与を受けられる
(2)土地上に受託者の固有財産として居住用建物を建築できる
(3)そのための住宅ローンを担保するため、信託財産を担保提供できる

これらはいずれも、受託者にとって「利益相反行為」に該当します。
なぜなら、受託者は、信託財産を受益者の利益のために管理する義務があるにもかかわらず、その実質あるいは委託者・受益者の内心(想い)はどうであれ、形式的に見れば受益者の利益となるのではなく、受託者自身の利益になる行為を行っていると評価せざるを得ないからです。

信託法では、受託者の利益相反行為について厳格な規定を設けており、契約条項にあらかじめ明記されていない限り原則として禁止されるのです。
そこで、受託者にとって利益相反行為に該当するような管理方法が想定され、かつこれを委託者や受益者が同意している場合(受益者の同意は必ず必要というわけではないが、委託者の同意は不可欠)は、これを契約条項の中に、曖昧さを可能な限り排除した明確な表現で規定しておく必要があるのです。

さらに、後日の登記申請の際「利益相反に該当するから受理できない」という取扱いを受けることがないよう、前回ご説明した「信託目録」にも同趣旨の条項を記録して置く必要があるわけです。

このように、金銭の借入れや担保提供の条項は、後日の登記申請に深く関連する重要なテーマとなりますので、司法書士との事前協議をお勧めいたします。  (中里)