第8条 信託財産の引渡し等 ⑤

【第8条・続き】
5 受託者は、信託金融財産を管理するため、金融機関において信託口口座を開設するものとする。

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信託不動産の登記に関する条項が続きましたが、5項は信託された現金の管理方法です。受託者の個人財産としての預貯金と、信託財産としての預貯金は、明確に分別して管理する信託法上の義務があります。両者が混在しない管理が必要です。

具体的には、金融機関の窓口で「委託者●●●●信託財産 受託者●●●●」という名義の口座を開設するのが正しい方法ですが、金融機関によっては内部ルールの整備ができていないなどの理由により口座開設を拒否されるケースも少なくありません。

このような場合には、受託者名義の新たな口座を開設し、信託財産だけを管理するための専用口座として指定する方法も考えられます。  (中里)

信託財産の債務は、債務控除の対象になる?

相続が発生した場合、プラス財産も相続しますが負債のようなマイナス財産も相続することはご承知のとおりです。そして相続税について検討する場合には、プラス財産からマイナス財産を控除します。それを「債務控除」といいます。

民事信託でも、相続時に債務控除はされるのでしょうか。

例えば、金融機関から信託財産へ融資が行われた場合、委託者兼受益者が他界したときに、その負債はプラス財産から控除されるか、という問題です。

現状の金融機関の実務では、信託財産への融資はほぼ行われていないと言ってもいいと思います。そうした中で、個別の案件では、いくつか債務控除が行われたという情報はあるのですが、税務当局の正式な見解はでていないというのが現状のようです。

特に金融機関のローンが絡む収益物件等の信託の場合には注意が必要となります。

(名波)