民事信託が向いているケース

本年度から、「叶」は民事信託を中心に、その周辺の事柄も紹介していこうと考えております。ここまで、任意後見や死後事務委任契約などを機関紙「想い叶う」で紹介してきました。 このように紹介している趣旨は、「何でもかんでも民事信託」というわけではなく、様々な法制度を比較検討し、皆さんに最適な制度を選択していただきたいと思っているからです。

それぞれの法制度にはそれぞれに適した場面があります。民事信託も同様です。本日は、「このようなケースでは民事信託」というのを一つご紹介したいと思います。

しかし、賃貸アパートのような建物は、老朽化の場合はもちろん、台風等の床上浸水などで被害に見舞われた場合にも大きな修繕費用の発生が見込まれます。このとき、後見制度を利用していると、手元の現金で費用を賄えない限り、賃貸アパートの修繕をすることができなくなります。結果として、賃借人が離れてしまい、収益が悪化するおそれが生じてしまいます。 この点、民事信託は借入行為も信託条項に含めれば可能となりますから、賃貸アパートの管理という面での不安はかなり軽減されます。収益面での悪化も防ぐことができ、安定した老後を送ることができるということになります。

民事信託が適切であると思われるケースは、「借入れ」を検討している場合です。典型的なのは、賃貸アパートの大規模修繕での「借入れ」です。

成年後見であれ任意後見であれ後見制度を利用していると、本人を債務者とする借り入れはできないと考えていいと思います。浜松の家庭裁判所では、後見人なる方に家庭裁判所が作成した誓約書に署名することを求められますが、その誓約書には「借り入れをしない」といった項目があります。この点は、後見制度の理念から考えてある意味仕方がないなぁと個人的には考えております。