信託の基礎

今回は、固有財産に関する取引の債権者は、信託財産を責任財産とすることはできるのでしょうか?図では左から2番目の矢印です。

図3

図では「×」と記されてます。信託法23条を見てみましょう。固有財産の債権者は信託財産に対して強制執行ができないと規定されている条文です。

第23条 

信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

(2項以下、略)

 

強制執行することができないということは、信託財産に属する財産を引き当てにできないことを意味します。つまり、図のような説明となるのです。

しかし、固有財産と信託財産の区別が当事者だけではなく、第三者から見ても明確にされていないと、固有財産に関する取引の債権者は信託財産に対して強制執行等の手続をしてしまうかもしれません。そうならないためには、ある程度債権者に配慮する必要があります。具体的には、「これは、信託財産だ」と公示することです。

公示方法の典型例は登記になります。登記をすることによって信託財産と固有財産の取り分けが明確になります。逆に、登記を怠れば第三者に対抗することができないということになります。(小出)

 

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