≪前回の整理≫
「貸したお金を返してほしい」という相談であっても、司法書士は、返してもらいたいお金が140万円超なら「個別受任事案」として、140万円以下なら「包括受任事案」として対応できる。
(※)140万円以下であっても、あえて「個別受任事案」として受任することはもちろん可能です。
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さて、「司法書士にお任せ!」というスタイルを取ることができるのが「包括受任事案」です。「お任せ!」ですので「130万円の残金のうち30万円を免除して100万円を一括で払ってもらうことでよしとしましょう」とか、「50万円を一括。残りは毎月5万円ずつの分割でいいですよ」とか、「分割払いにするなら保証人を付けてほしい」など、具体的な解決案を司法書士独自の判断で決定できる点に、大きな特徴があります。
これに対し、個々の書類作成の積み上げにすぎない「個別受任事案」の場合、司法書士が依頼を受けることのできる内容は「この書類を作って!」という限定的内容となります。「お任せ!」というわけにはいかないのです。
司法書士ができるのは書類の作成だけですから、実際に裁判所へ出かけていくのも、相手方と交渉して具体的な解決案を決定するのも、すべて依頼者ご自身が行う必要がある点に、ご注意ください。
なぜ、こんなふうに分かりにくい仕組みになったのかというと、本来、民事トラブルの解決を「お任せ!」というスタイルで受けることができるのは弁護士に限られていました。しかし、平成14当時、弁護士が今のように多くなく、少額のトラブルまで弁護士が対応しきれていない現実があったため、少額トラブルに限って、司法書士に弁護士と同様の「お任せ!」スタイルを解禁した経緯があるのです。
このとき、いくらを「少額」のラインとするかが検討されたのですが、簡易裁判所で取り扱うことのできる裁判が140万円であることから、140万円以下を「少額」と取り扱うことにしたわけです。
このように「包括受任事案」と「個別受任事案」では、司法書士に依頼することのできる範囲も大きく異なりますし、依頼者ご自身が担わなければならない範囲も同様に大きく異なります。
当然、司法書士に支払う報酬にも、両者の間で違いが出ることになります。 (中里)