今回は遺言の方式について確認していきます。
遺言の方式は大きく分けて普通方式と特別方式に分かれます。特別方式は、さらに分けると危急時遺言と隔絶地遺言などがあります。この特別方式というのは、普段の日常生活において活用されることのない遺言ですので説明はこの程度としておきます。
私たちが利用する遺言は普通方式の遺言となります。この普通方式の遺言をさらに分けると自筆証書遺言、公正証書遺言そして秘密証書遺言の3つがあります。このうち、最も利用頻度が高い遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。そこで、ここでは自筆証書遺言と公正証書遺言に絞って説明をしていきたいと思います。
その前に、公正証書遺言と遺産分割調停の件数をご紹介したいと思います。公正証書遺言という言葉を耳にされた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは公証人と呼ばれる方が証人2名以上を立ち会わせて作成する遺言書です。公証人とは、公証人役場において公正証書の作成や認証を行う公務員で、裁判官出身の方が多いといわれております。つまり、公証人は法律において専門的な知識を持ち合わせている方と言えます。したがって、内容的にも明確で適正な遺言が作成されますし、遺言能力の点でも、公証人や証人が立ち会って意思能力を確認するため、遺言を無効とされる可能性が少ない特徴があります。公正証書遺言の作成件数ですが、平成28年で105,350件と20年前の件数と比べて2倍以上となっております。
次に遺産分割調停ですが、これは相続人関で遺産分割協議がまとまらない場合に裁判所を利用して遺産分割を解決しようとする制度です。平成28年の遺産分割調停の件数は12,766件で、こちらも20年間で約1.5倍となっております。ただ一言補足しますと、公正証書遺言の件数は年々増加をしているのですが、遺産分割調停は近年、特に平成24年頃から若干減少傾向を示しております。これには様々な理由が考えられますが、一つには遺言の効果が発揮しているのではないかと個人的には考えているところです。(つづく)