信託の基礎

最後に遺留分に触れて、信託財産は区切りとします。

信託の設定によっても、遺留分減殺を免れることはできないことについては、異論がない状況です。そこで、図をご覧ください。

図4

図のように

1.信託が設定され、当初信託財産が受託者に対して処分されることを遺留分侵害行為であるととらえるか、

2.信託設定そのものは問題とせず、受益者の受益権取得を遺留分侵害行為ととらえるのか

という2つの見解が存在します。

では、遺留分減殺請求を受けた場合に、その後の信託運営はどうなるのかということを、2つの見解について簡単に触れておきたいと思います。(小出)

こば紀行#72 白倉峡

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第72回目は白倉峡

国道152線を水窪方面へ北上、休日にどこへ行って良いか分からないときはとりあえずこのルートを辿る。山奥で緑の木々に囲まれた静かな空間の中、ただただ自分の世界に浸るのが好きだからだ。そして今回、そんな私にふさわしい場所を見つけた。152号線を秋葉ダムの手前で西に外れ、車で15分程度進むと白倉峡はある。道中はどことなく青森の奥入瀬渓流を思わせる様な雰囲気だ(あくまでも雰囲気ね)。

看板があまりに控えめ過ぎて(←図)うっかりしてなくても見落としてしまう。駐車場なのか?廃墟に近い売店と覚しき場所に車を止め、そこから遊歩道に入る。遊歩道は全長約1キロ程度、階段を下ると小川といくつもの滝があらわれる。日曜の昼間にもかかわらずこの場に足を踏み入れる人はない。あたり一面が緑の世界、聞こえるのは水の音ばかり…ペットボトルを片手に岩場を辿り、川の水に足を浸せば、南アルプス天然水のCMに出てくる宇多田ヒカルの気分を味わえる。

猛暑中の避暑地として、これからの時期なら紅葉スポットとしてもおすすめかも知れない。(こばやし)

 

2018年9月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

『いつか』は突然やってくる

先日、ある方(相談者Aさん)から夫の財産の贈与のご相談をいただきました。

Aさんの夫は最近入院し、命に別状はないものの、かなり衰弱している状態。このまま寝たきりになってしまうのではないか、介護生活になるのではないか、とAさんは突然不安になり、『夫の財産を何とか今のうちに移さなくては!』と思い立ってご相談に来たそうです。

当然のことですが、財産を贈与するにしろ、遺言書を書くにしろ、何らかの別の処分をするにしろ、本人(この場合はAさんの夫)の意思により行われなければ無効です。病気でよく分からないのをいいことに、家族が勝手に財産を処分することはできません。

Aさんに夫の状態を聞いてみると、字は書けないが、現在は意思疎通ができる状態とのことでした。しかし、高齢であることや入院生活で刺激が少ないことなどから、半年、1年経過した場合はAさんの夫の意思能力が衰えて認知症になっている可能性もあるそうです。

『本人の意思能力がなければ財産を処分できない』と聞き、Aさんは益々焦って、『早く対応しなくちゃ。財産はどうするのが1番いいでしょうか』と私に尋ねられましたが、それはAさんやAさんの夫の財産の額や相続人との関係、税務手続や本人の意向などをすべて検討した上で、本人やご家族がよく話し合って決めていただくべきものなので、私が決めるものではない。また、よく検討せずに焦って手続きすると失敗しかねない旨をお伝えしました。

不動産を贈与した場合、名義を変更する登記費用だけではなく、『不動産取得税』や『固定資産税』などの税金が発生しますし、『贈与税』がかかる場合があります。特に『贈与税』は財産の価格によっては多額の税金の支払義務が発生する場合があります。

財産をどう処分するかという問題は、法律面だけではなく、税務面の問題も生じる可能性があるため、本来であれば、法律家だけではなく税理士等にも相談し、遺言や生前贈与、民事信託など様々な方法を検討した上で対応しなければ、後日多額の税金を払うことになったり、親族間でトラブルが発生したりする可能性があります。

自分にとっての最善の対策を見つけるには、時間もかかりますし、様々な対策を検討するだけの理解力と体力も必要です。

元気なうちに、時間をかけて対策すべきものになりますので、『いつかやればいい』と思わずにご相談することをお勧めします。

 

2018年9月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(16)

前回は、信託の登記申請だけを頼まれた場合の司法書士報酬についてご説明しましたが、登記申請だけの依頼を受けるだけでなく、登記申請の依頼に先立って契約書案を示されその内容や登記手続き上の支障の有無などについて助言・確認を求められることも少なくありません。

このような場合、司法書士は提示された契約条項案を精査し、単に登記上の支障の有無を検討するだけでなく、場合によっては「この条項の意味するところが曖昧」「この点は・・・・のような条項を設けておいた方が将来予測される問題を回避できるのでは?」「この条項は、信託法の趣旨に合致しないので削除を検討すべき」など、全面的なアドバイスも含めて対応します。
場合によっては、条項案を起案して当事者に再考を求めるようなことも考えられます。

したがって司法書士報酬には、登記申請だけを頼まれた場合の金額に、以上のような助言・確認(・起案)等の作業に対する対価をオンされます。
ここでオンする金額は、作業内容によってだいぶ幅ができるわけですが、何ら手直しが必要ないような場合で3万円程度、多くのケースでは10万円程度となります。   (中里)

 

※ 前回も指摘しましたが、金額は中里の事務所における報酬規定です。司法書士に依頼の際には必ず事前に見積もりの確認をしてください。

2018年9月20日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust

民事信託の遺言機能の活用

遺言のご相談をお受けしていると、「遺書」と勘違いされている方々が多くいらっしゃいます。

確かに、遺言は書かれた方がお亡くなりになられたときに効力が発生しますが、すぐにお亡くなりなることを前提にしているわけではありません。ただ、どうしても「死」をイメージしてしまう方が多いようです。

実際、配偶者や子供のために遺言書を書こうとされる方が、いざ書こうとすると手が震えてなかなか書けないという光景を何度も拝見しています。また、子供たちが、親御さんに遺言書をかいていただこうと頼むと「私を殺す気か!」と怒られてしまったというお話もたくさんお聞きしています。

そんなときに、民事信託の選択肢のお話をさせていただくことがあります。民事信託は生前の財産管理機能と遺言機能の双方を兼ねているからです。

相続対策は多くの方々がやられるようになってきているのですが、生前の認知症対策のことまでは意識されていない方がほとんどです。

民事信託は長生きされることを前提にでてくる選択肢ですので、民事信託のご説明をさせていただくと皆さんの視点が変わることがよくあります。

だからといって、無理矢理、民事信託を選択することは本末転倒になってしまいますので、十分に検討しながら、どの制度がご自身の問題解決に最適なのかを見極めながら選択肢を決めていかれることをお勧めいたします。

(ななみ)

2018年9月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

少しづつ「民事信託」への理解が広まっているのかな

先日、信託契約を締結したお客さま(Aさん)がいます。全ての手続が完了した後、ある介護施設の方(Bさん)の名刺をいただきました。

BさんはAさんを担当しているようでした。

Aさんの説明によれば、Bさんは介護の現場で主に成年後見制度と馴染みがあった。しかし、最近、成年後見制度とは異なる仕組みがあるように感じている、もう少し勉強しておきたいので研修会等があれば参加したい。ということでした。

信託契約の締結に関与させていただいた上に、介護施設のBさんまで紹介していただき感謝しつつ、私は早速Bさんに電話してみました。

Aさんの説明どおり、成年後見の制度は入所者さんの手続をするうちに理解できるようになったけれど、信託については馴染みがない、というものでした。

当グループ叶うでも3年くらい前に、ある施設で民事信託について研修会をさせていただく機会に恵まれました。当時は施設の方も民事信託について初めて耳にされる方が多かったと記憶しています。この時は、私たちの方から民事信託について研修会を開催させていただきたいと持ちかけて研修会が実現しました。

今回のBさんでは、施設の方から勉強したいとのことです。民事信託への理解が浸透してきているのを感じました。

叶うでは成年後見制度と民事信託の違いを徹底的に分析しており、その分析についてはいつでも研修を開催することができます。

民事信託の制度の理解のために是非叶うにお声かけください。(本木敦)

 

2018年9月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

今回は、固有財産に関する取引の債権者は、信託財産を責任財産とすることはできるのでしょうか?図では左から2番目の矢印です。

図3

図では「×」と記されてます。信託法23条を見てみましょう。固有財産の債権者は信託財産に対して強制執行ができないと規定されている条文です。

第23条 

信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

(2項以下、略)

 

強制執行することができないということは、信託財産に属する財産を引き当てにできないことを意味します。つまり、図のような説明となるのです。

しかし、固有財産と信託財産の区別が当事者だけではなく、第三者から見ても明確にされていないと、固有財産に関する取引の債権者は信託財産に対して強制執行等の手続をしてしまうかもしれません。そうならないためには、ある程度債権者に配慮する必要があります。具体的には、「これは、信託財産だ」と公示することです。

公示方法の典型例は登記になります。登記をすることによって信託財産と固有財産の取り分けが明確になります。逆に、登記を怠れば第三者に対抗することができないということになります。(小出)

 

こば紀行#71 美ヶ原高原

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第71回目は美ヶ原高原

今年の夏は暑すぎた。エアコンの効いた部屋にひき籠もり、体育座りをしながら世の中を憂う日々であったが、本当の涼を求めて家を出た。

浜松から車で4時間半、国道151号線をひたすら北上し、諏訪湖を越えたあたりからビーナスラインを経て美ヶ原山頂付近、山本小屋に辿り着く。山本小屋から10分も歩くと広大な牧草地が広がる。標高2,000Mの高地、下界は30度を超える真夏日も、ここではシャツを羽織るくらいでちょうどいい。

澄み渡る青い空、その青い空にくっきりと浮かぶ真っ白な雲。緑の大地はどこまでも広がり、その向こうには遠く連なる北アルプスの山々…降り注ぐ太陽の光の中、草を食む牛たちとそれを横目にただひたすら歩くこばやし。この日常とはかけ離れた牧歌的な風景を眺めていると、時間はゆったりと流れ、どこか心も澄み渡る。猛暑が続く日常の中、標高2,000Mの空中散歩は最高に贅沢な時間でもある。(こばやし)

2018年9月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

遺言と異なる遺産分割

相続に関する相談の中で、『親が無くなり、遺言を残していたのですが、遺言書と違う内容の遺産分割をしたいのですが、それは可能でしょうか?』という質問を頂くことがあります。

 

まず①遺言がある場合は遺言書のとおりに遺産をわける、②遺言書がない場合は相続人全員で話し合いをして遺産を分ける、というのが基本です。

 

しかし、遺言書と違う遺産分割協議でも、『亡くなった方が遺言と異なる遺産分割協議を禁じていない』『相続人全員が、遺言の内容を知った上で、これと違う分割を行うことについて同意している』『相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者の同意もあること』『遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意がある』などの一定条件があれば、その遺産分割は有効とされています。(※上記の条件を満たしている場合でも、遺言書の記載内容によっては、法律的な解釈の仕方に違いがありますのでご注意ください)

 

なので、遺言者にとっては、せっかく遺言書を書いたのに相続人により自分の希望とは異なる内容で遺産を分けられてしまう可能性があります。

このようなことを避けるために、様々な手段があります。遺言書に『遺言と異なる遺産分割協議を禁じる』と書くのも有効な手段の一つですが、今まで色々なケースを見てきて、一番効果があるのは『遺言者の意見や想いをしっかり伝える』ことだと思います。

 

遺言書に「相続人Aに不動産を相続される」とだけ書いてある場合、相続人は何故遺言者がAに不動産を相続させるのか、又は何故他の相続人ではだめなのかが分かりません。その場合、相続人は遺言者の想いを勝手に推測し、誤解する恐れもありますし、相続人自身の都合や想いに従って遺産を分割したいと考えるケースが多いです。

それと比べて、遺言書を書く前に家族と話し合い、遺言者の想いや遺言の意図を家族にしっかり伝えた場合や、遺言書の中に遺言者の想いを自分の言葉で書き残してある場合、相続人が遺言の内容に納得している場合が多く、遺言者の意思を尊重してくれるケースが非常に多いです。

ただ「遺言書を書いて遺産の分け方を決める」のではなく、「遺言書を通じ、家族に自分の想いを伝えること」が本当に遺言書を活かすことにつながると思います。

2018年9月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(15)

今回からは、具体的な報酬規定を綴ってみます。
ここは「叶」のブログですが、司法書士の報酬は各事務所で定めなければならないことになっていますので、今回から掲げていく数字は中里の事務所に限って適用される金額となることをご承知おきください。

まず、単純なケースとして、登記申請だけの依頼を受けたパターンです。つまり、すでに契約書ができあがっており、あとは登記申請をするだけというケースですね。

この場合、司法書士報酬は登記申請に関する報酬に限定されます。信託の登記は、「所有権移転登記」+「信託登記」の累計が最も多いので、以下、このパターンでお示ししていきます。

具体的な報酬規定は下記の示したとおりです。課税価格というのは「登記すべき土地建物の固定資産評価額の合計」と考えていただければ結構です。
たとえば、固定資産評価額3,000万円の土地と800万円の建物を信託登記する場合の司法書士報酬は約18万円となります(なお、この金額には登記の際に必要な登録免許税額は含みません)。

【報酬規定】

◆所有権移転登記
課税価格が     ☆ 1,000万円まで          43,200円
☆ 1,000万円超~1億円    1,000万円までごとに    + 5,400円
☆ 1億超                                1,000万円までごとに    + 6,480円

◆信託登記      10,800円

◆筆数加算  登記すべき土地建物が1件増えるごとに、+864円

◆信託目録  108,000円

◆そのほか、住民票や評価通知の取得費用、登記事項証明書の交付申請費用などが発生します。

2018年9月10日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust