Q・私は、介護付き有料老人ホームに入居しています。独身の私は、自身の葬儀や供養などが気になっています…

このようなご心配は、お子さんや近親者のない方にとっては、特に深刻な問題です。解決策の一つとして、ご自身の資産の中から葬儀や永代供養等に充てる費用を信託財産とし、希望する具体的方法を信託条項によって、受託者に指示しておく方法が有効です。遠縁の方、友人などから信頼できる受託者を選定し、この方への報酬も定めておくとよいでしょう。また、その他の資産について遺言を作成しておくことも、あわせてご検討ください。

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Q・私は、介護付き有料老人ホームに入居しています。独身の私は、自身の葬儀や供養などが気になっています…」への12件のフィードバック

  1. 「お一人様」の増加は、社会活動の多様化が進み新たなビジネスチャンスが広がる意味で注目される事象ですが、一方で「お一人様」ライフを送る当事者の方にとって、「終活」は悩みの種ではないでしょうか?

    こんなお悩みに、信託のスキームを利用して備えることができないかというのが、今回のFAQのテーマです。いわゆる「死後事務委任型信託」と呼ばれるものですね。

    「死後事務委任」ってどんな契約でしょう?
    どなたか詳しく教えてください!   (中里)

  2. 人が死亡した場合、相続手続き以外にも、葬儀の手配、入院費の支払、市役所、年金事務所への届出、納骨など様々な手続きが発生します。

    一般的にこれらの諸手続きは相続人や親族がやってくれるのですが、「お一人様」の場合はこれらの手続きをやる方がおりません。

    こうした場合に備えて、自分の死後のどのような作業をやってほしいか生前に「死後事務委任契約」という契約を結び、こうした事務を行ってくれるように生前に依頼しておく方法があります。

    事前に細かく供養の方法や葬儀の仕方を決めておき、信頼できる方に委任しておくことで死亡後の手続きがスムーズになり、ご本人の生前の想いをかなえることができます。

  3. 中里さん、こんにちは。

    ご質問の「死後事務委任」契約についてですが、死後における債務の弁済や葬儀、埋葬などの事務を委任する契約と言われています。(「言われている」と表現したのは、「死後事務委任」は民法などの条文に直接規定されたものではなく、判例によって認められた委任契約の一種だからです。)

    契約当事者の一方当事者(委任者)が死亡しているにも関わらず、受任者は契約を忠実に守らなければならないわけですから、自身の亡くなった後の財産処分を自身で決めることができるということになります。(小出)

  4. 民法653条では、委任契約は委任者が死亡すると終了すると規定されていますよね。

    死後事務委任契約というのは、委任者の死後における受任者が担うべき事務を定めた契約と考えられますので、同条との関係が疑問です。

    どのように理解すればよいのでしょうか?  (中里)

  5. たしかに、653条によると委任者の死亡によって委任は終了しますが、この条文は任意規定として位置づけられています。任意規定とは、当事者(この場合は委任者と受任者)が法律の規定と異なる特約をした場合、その特約を優先して適用しても有効である(結果として法律の規定を排除してしまう)規定を言います。
    死後事務委任は条文の規定に反する特約を定めていますが、以上のことから問題はないということです。(小出)

  6. 死後の手続を進める方法には遺言もあります。
    それとの違いについて。

    死後事務委任の受任者と,遺言は,どちらも亡くなった方のために手続きを進めるという点では同じにみえます。
    しかし,遺言は,財産承継についての記載しかすることができません。遺言執行者は,遺言で定められた承継についてしか手続きを行うことができません。
    一方,死後事務委任契約は,遺言と違って「契約」なので自由に取り決めることができます。もっとも,財産の承継に定めることはできません。

    死後事務委任だけを作っておいても財産承継の部分については対応できませんし、遺言だけ書いても死後事務については任せることができません。

  7. 死後事務契約を有効と判断した初めての最高裁判決が平成4年9月22日判決のようですね。

    「委任者が、受任者に対し、入院中の諸費用の病院への支払、自己の死後の葬式を含む法要の施行とその費用の支払、入院中に世話になった家政婦や友人に対する応分の謝礼金の支払を依頼する委任契約は、当然委任者の死亡によっても右契約を終了させない旨の合意を包合する趣旨のものであり、民法653条の法意は右合意の効力を否定するものではない」と判示されています。
    (中里)

  8. 本木さん

    受任者と財産の承継人が同一人物である場合、死後事務委任契約に基づき受任者が負担すべき債務を負担とする負担付遺贈を遺すことにより、ひとつの手続きでいずれをもカバーすることができそうですね。

    一方で、負担付遺贈の場合、負担が重いことを理由に受遺者が遺贈を放棄するリスクがあり、この場合には遺言者が希望する死後事務が実現しませんので、この当たりの手当を考えると、本木さんが指摘するように二つの手続きを組み合わせるのが妥当なのでしょうか?

    皆さんは、どう考えますか?  (中里)

  9. 財産承継と死後事務委任をセットにした信託契約は可能なのでしょうか?
    遺言により承継させたい財産と、葬儀費用等死後事務で必要となる費用を信託財産として受託者に託す。
    受託者は受益者である相続人のために、財産承継と死後事務双方について手続きを進める、というような..

  10. がりがりがりくそん さん、コメントありがとうございます。

    私が取り扱った実例に、まさにこのケースがあります。ただし、一つの契約書にまとめたのではなく、信託契約と死後事務委任契約の二つの契約に分かれています。

    いずれも公正証書としたのですが、当初の私の起案は一つの契約にまとめていたところ、公証人から「わかりやすさ」を重視してふたつに分けましょうと提案いただいた経緯があります。  

    死後事務委任契約における事務遂行には多額の費用が見込まれますので、あわせて信託契約なり、任意後見契約なりを利用する必要がある場面は多いと思います。  (中里)

  11. 私は中里さんのご指摘部分について問題が生じることはないであろうと考えます。
    死後事務委任契約における受任者の債務と負担付遺贈における受贈者の負担の内容が同じであれば、契約締結時点で受任者兼受贈者は債務=負担は了知しておりますし、受任者の債務と受贈者の負担が異なる内容であったとしても、委任者兼贈与者はそのことを了知して遺言書を作成(あるいは契約を締結)しているわけですから、当事者を拘束しない負担付遺贈が放棄されることを委任者兼贈与者は予想の範囲内として受忍すべき事柄と言えるからです。(小出)

  12. 受任者が死後事務を行うには、多額の費用が必要であることが分かりました。
    その問題を解決すべく今まで出てきた解決策は、
    ①「死後事務委任契約」+「信託契約」
    ②「死後事務委任契約」+「負担付遺贈」
    ③「死後事務委任契約」+「遺言」
    ④「死後事務委任契約」+「任意後見契約」
    の4つだと思いますが、これ以外に、「死後事務委任契約を締結する際に、死後事務を行うのに必要な金額を委任者から受任者に対してあらかじめ預託しておく」という方法もあると思います。

    この方法が一番シンプルで分かりやすいのではないかと思うのですが、何か問題点はありますでしょうか?

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