Q・所有するアパート1棟を二人の子に相続させ、家賃は平等に分けて欲しいのですが、名義を共有とすることには抵抗があります・・・

ご兄弟が1棟のアパートを共有すると、家賃の改定や大規模修繕、建替えなどの際に、お二人の意見調整が必要となり、柔軟な対応に支障が生じる可能性も否めませんね。また、将来の相続を考えると、いとこ同士、さらにははとこ同士の共有状態が生じ、さらに意見調整が困難となる事態も想定できます。

このようなケースでも民事信託が活用できます。受託者を兄弟の一人、受益者を兄弟お二人とすることで、ご希望を叶えることができそうです。

この回答者の小林さん、もう少し詳しく解説して下さい!

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Q・所有するアパート1棟を二人の子に相続させ、家賃は平等に分けて欲しいのですが、名義を共有とすることには抵抗があります・・・」への12件のフィードバック

  1. ご本人が所有するアパートを信託財産として兄弟のうちの一人に託します。これによりアパートの所有権は委託者から受託者へと移ると同時に「賃貸人としての地位」も委託者から受託者へと引き継がれます。

    受託者は以後、賃貸人として家賃の管理や経費の支払、修繕、建替え等を行います。受託者は兄弟の一人なのでこれらの判断は受託者が単独でできます。

    一方、受益者は兄弟二人であるため、家賃収入は兄弟平等に分けることができます。

  2. 賃貸人たる地位は当然に移転するのでしょうか?
    借主に対する連絡も必要になりそうですね?

    また、借主に対する敷金の返還義務も当然に引き継ぐことになるのでしょうか?

    火災保険や管理契約などは、名義変更したり更新したりする必要がありますか?

    アパートローンの返済が終わっていない場合、どんな点に注意する必要がありますか?

  3. 賃貸人の地位は、所有権が委託者から受託者へ移ることで法律上当然に移転します。

    借主に対しては賃貸人が受託者に変更された旨を通知し、今後の賃料の振込先を委託者(旧貸主)の口座から受託者(新貸主)の口座へ変更するよう依頼します。また、退去や修繕の依頼も今後は受託者に連絡するよう伝えます。

    受託者は敷金の返還義務も引き継ぐため、すでに委託者が預かっていた敷金も信託しておきます。受託者は借主が退去後、その信託された財産の中から敷金を返還します。

    火災保険や管理契約等も、賃貸人が委託者から受託者へ変更になったわけですから、契約者を受託者に変更します。あわせて、これら費用の支払口座も信託口座に変更します。

    アパーローンの返済について、当然これも受託者が信託財産の中から返済していくことになる訳ですが、まだまだ信託に対応していない金融機関も多いため、事前に信託への対応が可能かを金融機関に確認した方がよいでしょう。

  4. 賃貸物件を信託する場合、敷金返還に備えるほかにも、固定資産税の納付や管理費の支払い、将来の修繕費のための積立てなど、ある程度のまとまった現金が必要になりますよね。

    信託契約では、どのような条項を設けることにより対応しておくべきでしょうか?

  5. 万が一、信託された財産の中から敷金の返還や管理費等の支払いが困難となった場合、受託者は自らの財産の中から支払わなければなりません。

    そこで下記のような条項を設けておきます。これにより、受託者はあくまで信託された財産の範囲内でアパートを維持・管理することとなります。

    第●条 受託者は、信託不動産につき、継続的に相当の対価を得て他人に使用させて安定的な収益を図るものとする。
    2 受託者は、信託不動産について安定的な収益が見込まれなくなったとき、管理が困難になったときその他相当な理由があるときは、これを売却できるものとする。

  6. こばさん、ありがとうございます。
    他の皆さんは、ほかにどんなことに工夫していますか?

  7. 工夫ではありませんが、このような事案で皆さんに伺いたいことがあります。

    少し、整理します。

    (Q)は、親から相続したアパートの共有者(A、B)が、信託を利用して受託者Aに管理しているという状態だと思います。

    これは具体的に

    ① B持分を信託財産として、民事信託を組成する。
    ② B持分だけでなくA持分も加えて(つまり、アパート全体)を信託財産として、民事信託を組成する。

    のどちらの方法を考えますか?

    ちなみに私は・・・・。(小出)

  8. 先ほどのコメントに以下の点を加えます。

    ①は、受託者はAで受益者はBとなります。
    ②は、受託者はAで受益者はAとBになります。(小出)

  9. ①ですと,Bを委託者,Aを受託者とする信託契約の一つの契約ですね。
    ②ですと,Bを委託者,Aを受託者とする信託契約とAを委託者,Aを受託者とする信託契約の二つの契約になりそうですね。

  10. 本木さん、ありがとうございます。

    なるほど、本木さんのご指摘によると、②よりも①の方がシンプルで当事者にも理解しやすいですね。

    ちなみに、私がこのような事案を受けたら、②を一つの契約にまとめて提案すると思います。

    例えば、家賃10万円のところ、賃借人が6万円しか入金しなかった場合を考えます。
    このとき、②であれば法33条より受託者Aは受益者A及びBに3万円ずつ公平に給付しても問題はないと思います。①の場合でも受益者Bと共有者Aに比例的割合で3万円ずつ給付すれば問題ないように思われますが、そのような行為は、法32条1項に抵触する可能性があるのでは、と考えております。
    法32条1項の「計算で」の意味は、一般的には「経済上の効果(または利益)の帰属」と解されます。その点を踏まえて条文を読み込むと、比例的割合の給付は競合行為に該当するのでは、と思うのです。

    少し、考えすぎでしょうか?(小出)

  11. ②を一つにまとめる契約とはどんな感じでしょうか。

    小出さんの懸案については,AとBに利益相反が生じる,ということでしょうか。

  12. 本木さん、ありがとうございます。

    法32条1項は「受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。」と規定されてます。
    ①を選択した場合に、10万円の賃料に対し6万円が支払われたとき、受益者Bに3万円、共有者Aに3万円という給付をすることは、受託者は賃借人から残り4万円の回収をすることなく、その未回収分の半分を受益者Bに負担させていることになります。結果として、受託者兼共有者Aは、未回収分の半分を負担させた反射的利益として賃料を3万円手に入れる、これは、32条1項に規定する競合行為に当てはまる行為ではないかと懸念しているのです。
    この点、②のように共有者A、Bを委託者兼受益者とすれば、受託者は33条により受益者を公平に扱わなければならない義務がありますから、A、Bに3万円ずつ給付しても問題ないと考えているわけです。(小出)

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