Q・私には、自宅のほかに、親から相続した兄弟3名の共有名義の実家がありますが、3名とも「終活」を考える時期を迎えたため、この際に売却することとなりました。何かの準備をしておく必要がありますか?

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員が売主として売買契約を締結する必要があります。契約締結から残金決済までは通常の場合1ヶ月程度の期間を要しますが、仮にこの間、共有者のうちの一人が認知症により契約を締結する意思能力が確認できない状態になってしまうと、売買契約は成立しません。この場合、家庭裁判所で成年後見人の選任をしてもらい、選任された成年後見人と他の共有者との間で改めて売却についての話し合いをしなければならなくなりますね。

また、共有者が多数で、それぞれ遠方に在住していたり、中には海外在住者などがいると、契約の締結その他の事務作業にいちいち全員が集まることも困難となります。
さらに、このようなケースでは、売買代金の分配を受けるために名義を共有としているが、売買条件の決定や契約締結の事務作業は代表者に一任したいなどのニーズがあるケースも少なくないでしょう。

信託の活用ができるでしょうか?
また、信託以外にもよい方法がありますか? (中里)

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Q・私には、自宅のほかに、親から相続した兄弟3名の共有名義の実家がありますが、3名とも「終活」を考える時期を迎えたため、この際に売却することとなりました。何かの準備をしておく必要がありますか?」への13件のフィードバック

  1. この場合、共有者全員を委託者兼受益者、共有者の一人(または、共有者以外の方)を受託者として信託を設定することができます。このように信託を利用すれば、不動産名義を一人に集約することができるため、売買条件の決定や契約締結の事務作業をスムーズに行うことができます。
    同じような事例にで遺産分割があります。遺産の中に売却希望の不動産があれば、共有名義のままにしておくのではなく、そこから信託を利用して売却すれば、早い段階で相続人に売却代金の分配をすることが期待できますね。

  2. 小出さん

    共有者がABCの3名で、このうちのAが受託者となる場合に、「共有者全員を委託者兼受益者」とする場合、Aの持分については自己信託を利用するということでしょうか?

  3. 中里さん、とても重要なご指摘ありがとうございます。

    本件では、「終活のための売却」という一定の目的に従い一体として管理・処分等がされることを意図しております。つまり、信託行為全体をみるとAだけでなくBやCの財産(持分)を含めて一体として管理・処分等するように信託行為が定められております。このような点を踏まえると、本件のような事例は、法3条3号の自己信託の定義(自己の有する一定の財産・・・自らすべき旨の意思表示)に当てはまらないということになります。
    したがって、Aの持分だけ自己信託ととらえるのではなく、本件を一つの信託行為とみて、一般的な契約信託を利用するということになります。

    (この議論は、もう少し深めると面白いし、実務上も重要な点だと思います。)

  4. 小出さんのご指摘は,ほかの事例で小出さんに問い合わせたことがあるのですが,自己賃借権のように考えておられるようです。中里さんの事例でいうと,ABCを委託者,Aを委託者,ABCが受益者というイメージだと思います。

    (参照)
    借地借家法第15条1項 借地権を設定する場合においては、他の者と共に有することとなるときに限り、借地権設定者が自らその借地権を有することを妨げない。

  5. 任意後見契約を検討する,ということも考えられないでしょうか。契約のなかで特に売却だけは絶対にやって欲しいという条項を設けておくとか。

  6. BCを委託者とし、BCの持分だけを信託財産とする方がシンプルで分かりやすいと思うのですが、何か問題がありますか?

  7. そもそも、このようなケースでABC連名の相続とせず、代表者のA単独名義で相続登記をし、売買に関する事務はAに一任したうえで売却代金から諸経費を控除した金員をABCであらかじめ合意した割合によって分配するという遺産分割協議をすることも考えられますし、実際にこのような取扱いも経験していますが、皆さんはいかがですか?

    また、このような場合の注意点があれば検討してみましょう。

  8. 今回の事例は、民事信託が活用できる例として紹介される事例ですよね。つまり、共有の物件を処分する場合には、共有者全員の足並みがそろわないといけないので、ABCを委託者、Aもしくは、その他の親族を受託者、ABCを受益者にするというスキームです。
    一方で、成年後見制度であっても、本人のための売却であれば、売却はできます。ただ、手続きに時間がかかります(2~3カ月?)ので、不安であれば、予め信託等を活用しておくというスタンスになると思います。

  9. この場合には,換価分割,という方法になるのかなと思います。
    一度検討したことがあるのですが,税理士さんに確認したところ,譲渡所得の申告について,ABCであらかじめ合意した割合によって分配された金額について譲渡所得を申告することになる,と教えてもらったことがあります。複雑だなーと思って,代償分割を検討したことがあります。

  10. 私は,中里さんの指摘のほうがしっくり来ます。
    先ほどの私のコメントは,僭越ではありますが横から小出さんの指摘を補足させていただいたものです。
    小出さん,解説をお願いします!!

  11. ABCを委託者、Aを受託者、ABCを受益者としたときに、問題点はないのでしょうか?
    Aから見て、自分で自分に信託して利益を享受するという状況に違和感を感じます。

  12. 事例を変えて、対象財産を貸付債権(債務者・債権額・弁済期等全て同じ)としましょう。B及びCを委託者兼受益者、受託者をA、とした信託財産である貸付債権と、Aの固有財産である貸付債権があるとします。このとき、債務者からAに全額弁済されなかった場合、AはA、B、Cの債権について同じ割合(本件では同額)で充当することを考えるでしょう。しかし、その行為は法32条1項の「固有財産・・・の計算でしてはならない。」に該当する、と私は考えるのです。「計算で」とは、一般的に経済上の利益の帰属に焦点を置く言葉として使用されております。この点を踏まえて本件を検討すると、未回収債権の負担を信託財産の貸付債権に振り分けた反射的効果として固有財産に経済上の利益が発生していることが分かります。よって、32条1項に該当すると考えるのです。
    もともと、信託財産に対する注意義務と固有財産に対する注意義務は異なるわけですから、同一人物が信託財産および固有財産を管理・処分することには法的リスクが内在していると考えるのは、むしろ当然でしょう。それならば、全てを信託財産として信託法の公平義務に従えば、上記のような問題も解消されるであろう、というのが私の考えです。

  13. 相続登記の法的リスクとしては、代表者Aが不動産の処分前に亡くなった場合に考えられます。

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