将来を考える

よく不動産の名義変更や相続、贈与などのご相談をいただくのですが、相談の中には(相談者の方には失礼な話ですが)『そもそも何でこんなことになってしまったの?』と思う事案があります。

1)親が死亡し、相続人は子供であるA、B、Cの3人。公平に分配しようと、親の土地建物をA、B、Cで3分の1ずつ相続した。その親の建物は親とAの家族が住んでおり、親の死亡後はAの家族が引き続き居住している。BとCは別に家を構えている。

2)甲の家は夫、妻、その夫婦の子(長男、長女)の4人暮らし。甲夫婦が自宅を建て直しする際、夫婦は高齢で住宅ローンが借りれなかったため、当時独身だった長男が住宅ローンを借りて自宅を建築(自宅の建物はその際に長男の名義となった)。その後、長男は結婚し自宅に同居せず別の場所に家を構えた。現在自宅は両親と長女の3人暮らし。長女は収入が少なく、一人暮らしは困難。

 

上記1)、2)のケースとも、実際に住んでいる人と不動産の所有者が異なっているケースです。このようなケースは、親族の関係性が近い場合(親子、夫婦など)や、当事者間の関係性が良好な場合は問題が生じないことが多いのですが、いざ不動産を処分しようとした場合や、相続が発生した場合、年月が経ち関係性が希薄になった場合にトラブルになる可能性が非常に高いです。

 

例えば、1)の場合、Aは自分の兄弟(B,C)と共同で自宅の土地を所有しているのですが、この状態のままB、Cが死亡すると、AはBやCの配偶者や子供(Aの甥や姪)と不動産を共有することになります。Aは自宅を売りたくてもB、Cの相続人が同意しなければ売ることはできません。
また、AやAの子どもが住宅ローンを組んで自宅を建て直す場合、多くの金融機関は自宅の土地建物を抵当に入れることを要求します。B、Cの相続人が抵当をつけることに難色を示した場合、住宅ローンを組むことが出来ない場合があります。

1)の場合、そもそも相続の際、不動産はAが相続し、B、Cには不動産の持分に当たる現金を渡すなどの形で遺産を分割していればこのような問題は生じません。

2)のケースも、独身の長男が両親の家の住宅ローンを組むのであれば、

・将来長男が結婚した際は2世帯住宅として同居するのか、そのつもりで結婚相手を探すのか

・長男が別居する場合は両親が長男に家賃を支払うのか

・長女が実家に住み続ける場合、長男の持家で長女が暮らし続けることの是非

など、本来は家族でよく話し合いをしてから進めるべきです。しかし、ローンが組めるのが長男だった、ということで、あまり深く考えずに手続きを進めた結果、長男は結婚して別世帯となったにもかかわらず、親兄弟が住む家のローンを払い続けることになりました。

相続についても、『平等に分ける』ことにこだわりすぎるあまり、相続人全員の共有とする方がいらっしゃいますが、不動産を共有にした場合、売却して現金化でもしない限り分けることが出来ません。

 

今現在の状況だけではなく、将来にわたりこの不動産をどのように利用、処分していくか、誰に渡すべきかをよく考えた上で手続きしないと、トラブルのもとになります。

2018年10月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

こんな信託には、贈与税がかかる?

信託契約によって委託者の財産が信託財産として受託者に移転した場合、贈与税がかからないのが原則です。

先日、久しぶりに民事信託のある書籍を読んでいいたところ、ハッとした言葉がありました。

「特定委託者」という言葉です。

相続税法第9条の2によると、「特定委託者」に該当すると、「信託」による移転でも贈与税がかかるということになります。よくよく考えてみると、この言葉は、民事信託の勉強し始めのときに学んでいた言葉でした。そのときも税務上の知識をしっかりと学んでいないといけないという意味でハッとしたことを思い出しました。あらためて、原点に戻って勉強を続ける大切さを感じた瞬間でした。

さて、お待たせいたしました。

「特定委託者」とは、信託の変更をする権限を現に有し、かつ、その信託の信託財産の給付を受けることとされている者をいいます。

例えば、帰属権利者になっている受託者が何でも変更できるようになっている信託契約です。民事信託を勉強されている方であれば、この事例に対し違和感を感じることができると思います。税務上の問題だけでなく、そもそも民事信託としての体をなしていない状態だと思います。これからも常に基本に戻りながら、勉強を続けていきたいと思います。(ななみ)

 

2018年9月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

親の建物に子が増築する

親名義の建物に子供が増築した場合、増築部分は建物の所有者(親)の所有物となります。この場合、親が子供に対して対価を支払わないときには、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。
しかし、子供が支払った増築資金に相当する建物の持分を親から子供へ移転させて共有とすれば、贈与税は課税されません。

以上がタックスアンサーの記述です。№4557

この登記は年末ころから年始くらいまでよくお話をいただく事例です。

理屈は上記のタックスアンサーのとおりでよいのですが、実際に建物の持分を親から子どもへ移転させて共有にすることは、実はとても難しいです。

増築資金は建築請負契約書から明確ですが、「増築資金に相当する建物の持分」は一体どのように計算するのか、という課題があるからです。それは、建物の価格をどのように計算するのかということと同義ではあります。上記のタックスアンサーでは、建物の価格については書かれていません。時価なのか、簿価なのか、相続税評価なのか、どれを使えばよいのか不明確であり、いつも悩むところです。

私たち司法書士は税の専門家ではないので、ここはどうしても責任のある回答ができません。このようなときは、お客さまと一緒に税務署に行って、お客さまから質問していただき、そこに同席させていただくことが良いと思っています。お客さまも理解いただけますし、司法書士も安心して登記手続を進めることができるからです。(本木敦)

2018年9月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

こば紀行#72 白倉峡

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第72回目は白倉峡

国道152線を水窪方面へ北上、休日にどこへ行って良いか分からないときはとりあえずこのルートを辿る。山奥で緑の木々に囲まれた静かな空間の中、ただただ自分の世界に浸るのが好きだからだ。そして今回、そんな私にふさわしい場所を見つけた。152号線を秋葉ダムの手前で西に外れ、車で15分程度進むと白倉峡はある。道中はどことなく青森の奥入瀬渓流を思わせる様な雰囲気だ(あくまでも雰囲気ね)。

看板があまりに控えめ過ぎて(←図)うっかりしてなくても見落としてしまう。駐車場なのか?廃墟に近い売店と覚しき場所に車を止め、そこから遊歩道に入る。遊歩道は全長約1キロ程度、階段を下ると小川といくつもの滝があらわれる。日曜の昼間にもかかわらずこの場に足を踏み入れる人はない。あたり一面が緑の世界、聞こえるのは水の音ばかり…ペットボトルを片手に岩場を辿り、川の水に足を浸せば、南アルプス天然水のCMに出てくる宇多田ヒカルの気分を味わえる。

猛暑中の避暑地として、これからの時期なら紅葉スポットとしてもおすすめかも知れない。(こばやし)

 

2018年9月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

『いつか』は突然やってくる

先日、ある方(相談者Aさん)から夫の財産の贈与のご相談をいただきました。

Aさんの夫は最近入院し、命に別状はないものの、かなり衰弱している状態。このまま寝たきりになってしまうのではないか、介護生活になるのではないか、とAさんは突然不安になり、『夫の財産を何とか今のうちに移さなくては!』と思い立ってご相談に来たそうです。

当然のことですが、財産を贈与するにしろ、遺言書を書くにしろ、何らかの別の処分をするにしろ、本人(この場合はAさんの夫)の意思により行われなければ無効です。病気でよく分からないのをいいことに、家族が勝手に財産を処分することはできません。

Aさんに夫の状態を聞いてみると、字は書けないが、現在は意思疎通ができる状態とのことでした。しかし、高齢であることや入院生活で刺激が少ないことなどから、半年、1年経過した場合はAさんの夫の意思能力が衰えて認知症になっている可能性もあるそうです。

『本人の意思能力がなければ財産を処分できない』と聞き、Aさんは益々焦って、『早く対応しなくちゃ。財産はどうするのが1番いいでしょうか』と私に尋ねられましたが、それはAさんやAさんの夫の財産の額や相続人との関係、税務手続や本人の意向などをすべて検討した上で、本人やご家族がよく話し合って決めていただくべきものなので、私が決めるものではない。また、よく検討せずに焦って手続きすると失敗しかねない旨をお伝えしました。

不動産を贈与した場合、名義を変更する登記費用だけではなく、『不動産取得税』や『固定資産税』などの税金が発生しますし、『贈与税』がかかる場合があります。特に『贈与税』は財産の価格によっては多額の税金の支払義務が発生する場合があります。

財産をどう処分するかという問題は、法律面だけではなく、税務面の問題も生じる可能性があるため、本来であれば、法律家だけではなく税理士等にも相談し、遺言や生前贈与、民事信託など様々な方法を検討した上で対応しなければ、後日多額の税金を払うことになったり、親族間でトラブルが発生したりする可能性があります。

自分にとっての最善の対策を見つけるには、時間もかかりますし、様々な対策を検討するだけの理解力と体力も必要です。

元気なうちに、時間をかけて対策すべきものになりますので、『いつかやればいい』と思わずにご相談することをお勧めします。

 

2018年9月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

民事信託の遺言機能の活用

遺言のご相談をお受けしていると、「遺書」と勘違いされている方々が多くいらっしゃいます。

確かに、遺言は書かれた方がお亡くなりになられたときに効力が発生しますが、すぐにお亡くなりなることを前提にしているわけではありません。ただ、どうしても「死」をイメージしてしまう方が多いようです。

実際、配偶者や子供のために遺言書を書こうとされる方が、いざ書こうとすると手が震えてなかなか書けないという光景を何度も拝見しています。また、子供たちが、親御さんに遺言書をかいていただこうと頼むと「私を殺す気か!」と怒られてしまったというお話もたくさんお聞きしています。

そんなときに、民事信託の選択肢のお話をさせていただくことがあります。民事信託は生前の財産管理機能と遺言機能の双方を兼ねているからです。

相続対策は多くの方々がやられるようになってきているのですが、生前の認知症対策のことまでは意識されていない方がほとんどです。

民事信託は長生きされることを前提にでてくる選択肢ですので、民事信託のご説明をさせていただくと皆さんの視点が変わることがよくあります。

だからといって、無理矢理、民事信託を選択することは本末転倒になってしまいますので、十分に検討しながら、どの制度がご自身の問題解決に最適なのかを見極めながら選択肢を決めていかれることをお勧めいたします。

(ななみ)

2018年9月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

少しづつ「民事信託」への理解が広まっているのかな

先日、信託契約を締結したお客さま(Aさん)がいます。全ての手続が完了した後、ある介護施設の方(Bさん)の名刺をいただきました。

BさんはAさんを担当しているようでした。

Aさんの説明によれば、Bさんは介護の現場で主に成年後見制度と馴染みがあった。しかし、最近、成年後見制度とは異なる仕組みがあるように感じている、もう少し勉強しておきたいので研修会等があれば参加したい。ということでした。

信託契約の締結に関与させていただいた上に、介護施設のBさんまで紹介していただき感謝しつつ、私は早速Bさんに電話してみました。

Aさんの説明どおり、成年後見の制度は入所者さんの手続をするうちに理解できるようになったけれど、信託については馴染みがない、というものでした。

当グループ叶うでも3年くらい前に、ある施設で民事信託について研修会をさせていただく機会に恵まれました。当時は施設の方も民事信託について初めて耳にされる方が多かったと記憶しています。この時は、私たちの方から民事信託について研修会を開催させていただきたいと持ちかけて研修会が実現しました。

今回のBさんでは、施設の方から勉強したいとのことです。民事信託への理解が浸透してきているのを感じました。

叶うでは成年後見制度と民事信託の違いを徹底的に分析しており、その分析についてはいつでも研修を開催することができます。

民事信託の制度の理解のために是非叶うにお声かけください。(本木敦)

 

2018年9月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

こば紀行#71 美ヶ原高原

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第71回目は美ヶ原高原

今年の夏は暑すぎた。エアコンの効いた部屋にひき籠もり、体育座りをしながら世の中を憂う日々であったが、本当の涼を求めて家を出た。

浜松から車で4時間半、国道151号線をひたすら北上し、諏訪湖を越えたあたりからビーナスラインを経て美ヶ原山頂付近、山本小屋に辿り着く。山本小屋から10分も歩くと広大な牧草地が広がる。標高2,000Mの高地、下界は30度を超える真夏日も、ここではシャツを羽織るくらいでちょうどいい。

澄み渡る青い空、その青い空にくっきりと浮かぶ真っ白な雲。緑の大地はどこまでも広がり、その向こうには遠く連なる北アルプスの山々…降り注ぐ太陽の光の中、草を食む牛たちとそれを横目にただひたすら歩くこばやし。この日常とはかけ離れた牧歌的な風景を眺めていると、時間はゆったりと流れ、どこか心も澄み渡る。猛暑が続く日常の中、標高2,000Mの空中散歩は最高に贅沢な時間でもある。(こばやし)

2018年9月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

遺言と異なる遺産分割

相続に関する相談の中で、『親が無くなり、遺言を残していたのですが、遺言書と違う内容の遺産分割をしたいのですが、それは可能でしょうか?』という質問を頂くことがあります。

 

まず①遺言がある場合は遺言書のとおりに遺産をわける、②遺言書がない場合は相続人全員で話し合いをして遺産を分ける、というのが基本です。

 

しかし、遺言書と違う遺産分割協議でも、『亡くなった方が遺言と異なる遺産分割協議を禁じていない』『相続人全員が、遺言の内容を知った上で、これと違う分割を行うことについて同意している』『相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者の同意もあること』『遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意がある』などの一定条件があれば、その遺産分割は有効とされています。(※上記の条件を満たしている場合でも、遺言書の記載内容によっては、法律的な解釈の仕方に違いがありますのでご注意ください)

 

なので、遺言者にとっては、せっかく遺言書を書いたのに相続人により自分の希望とは異なる内容で遺産を分けられてしまう可能性があります。

このようなことを避けるために、様々な手段があります。遺言書に『遺言と異なる遺産分割協議を禁じる』と書くのも有効な手段の一つですが、今まで色々なケースを見てきて、一番効果があるのは『遺言者の意見や想いをしっかり伝える』ことだと思います。

 

遺言書に「相続人Aに不動産を相続される」とだけ書いてある場合、相続人は何故遺言者がAに不動産を相続させるのか、又は何故他の相続人ではだめなのかが分かりません。その場合、相続人は遺言者の想いを勝手に推測し、誤解する恐れもありますし、相続人自身の都合や想いに従って遺産を分割したいと考えるケースが多いです。

それと比べて、遺言書を書く前に家族と話し合い、遺言者の想いや遺言の意図を家族にしっかり伝えた場合や、遺言書の中に遺言者の想いを自分の言葉で書き残してある場合、相続人が遺言の内容に納得している場合が多く、遺言者の意思を尊重してくれるケースが非常に多いです。

ただ「遺言書を書いて遺産の分け方を決める」のではなく、「遺言書を通じ、家族に自分の想いを伝えること」が本当に遺言書を活かすことにつながると思います。

2018年9月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

叶(かなう)のメンバーが講師に招かれる理由

このところの立て続けの災害で、多くの方々が被災されています。心からお見舞い申し上げます。

最近、叶(かなう)の個々のメンバーが「民事信託」をテーマとしたセミナー等に講師として招かれています。

私も、保険会社さんが主催する民事信託を活用した事業承継のセミナーと社会保険労務士さんが主催する「民事信託」のセミナーの講師としてお招きいただいています。

「民事信託」という言葉自体が、市民の中に浸透し始めていること実感する動きでもあるのですが、講師を受ける側からすると多くの方々の前であるテーマについてお話させていただくには、それなりの勇気が必要となります。

私自身、何件かの実際の案件にも携わらせていただいているので、それなりに民事信託のポイントはわかっているつもりですが、一人からの視点は、客観的に見るともしかしたら偏りがあるかもしれません。様々な不安もあります。

ただ、叶(かなう)の勉強会に参加させていただいているお陰で、いろいろな論点に対して、様々な視点、角度からの検討の過程に身を置くことができています。

その経験が、「何をお伝えしたらいいのだろう」という不安を「このことをお伝えしたい」の勇気に変えることができているのだと実感しています。

これからも叶(かなう)のメンバーと共に切磋琢磨できればと想いつつ。(ななみ)

 

2018年9月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust