遺言や相続の手続きが変わります(7)~「仮払い」の補足

前々回、次のようなことを書きました。
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仮払いを請求できる預貯金の金額には、次の(1)(2)のいずれか少ない額という上限が定められています。
(1)相続開始時の預貯金債権の残高の3分の1に法定相続分を乗じた額
(2)150万円
相続人が子供二人、【相続開始時、A銀行に600万円の預金残高】があったとすると、各相続人は次の計算式により100万円の仮払いをA銀行に請求することができるわけです。
600万 × 1/3 × 1/2(法定相続分)= 100万円
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このうち【相続開始時、A銀行に600万円の預金残高】の部分は「金融機関ごと」に考えます。

たとえば、この事例設定で、A銀行のア普通預金に300万円、イ定期預金に600万円、B信金にウ普通預金30万円の遺産があったとしましょう。
この場合、相続人の一人が仮払いの請求をできるのは、A銀行に対して150万円、B信金に対して5万円となります。
A銀行について、仮払い請求のできる上限額が「口座ごと」ではなく「金融機関ごと」、つまりA銀行の預金残高全体から判断しますので、必ずしもア普通預金から50万円、イ定期預金から100万円という払戻しとなるわけではなく、ア普通預金から150万円の払戻しということもあり得ます。

では、金融機関は現実にどのような対応をするのでしょうか?
現時点で、この点について明確な指針を示している金融機関は、私の知る限りありません。そもそも、現場の行員のなかには、このようなせいどが間もなく施行されることすら知らない方も少なくないのではないでしょうか?
複数口座からそれぞれ限度額を払い戻す方法は、口座が複数口に分かれていたり、複数の支店にまたがって取引をしていたりしたケースでは、事務処理の煩雑さを招きます。
しかし、預金利率の違いなどがあるので、ある特定の口座から限度額いっぱいまで払戻しをすることが、相続開始後の発生利息に影響を与えるという事態も全く考えられないわけではなく、何とも悩ましい点です・・・

このあたりは、実務の動向を注視するしかありませんが、私見としては、仮払いの請求があった時点で、特定の普通預金口座を除くたのすべての預金を仮払い請求者である相続人から解約させ、残る普通預金口座にすべてを集約したうえで、仮払いの限度額を算定する方法が妥当ではないかと考えています。   (中里)

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