遺言と異なる遺産分割

相続に関する相談の中で、『親が無くなり、遺言を残していたのですが、遺言書と違う内容の遺産分割をしたいのですが、それは可能でしょうか?』という質問を頂くことがあります。

 

まず①遺言がある場合は遺言書のとおりに遺産をわける、②遺言書がない場合は相続人全員で話し合いをして遺産を分ける、というのが基本です。

 

しかし、遺言書と違う遺産分割協議でも、『亡くなった方が遺言と異なる遺産分割協議を禁じていない』『相続人全員が、遺言の内容を知った上で、これと違う分割を行うことについて同意している』『相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者の同意もあること』『遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意がある』などの一定条件があれば、その遺産分割は有効とされています。(※上記の条件を満たしている場合でも、遺言書の記載内容によっては、法律的な解釈の仕方に違いがありますのでご注意ください)

 

なので、遺言者にとっては、せっかく遺言書を書いたのに相続人により自分の希望とは異なる内容で遺産を分けられてしまう可能性があります。

このようなことを避けるために、様々な手段があります。遺言書に『遺言と異なる遺産分割協議を禁じる』と書くのも有効な手段の一つですが、今まで色々なケースを見てきて、一番効果があるのは『遺言者の意見や想いをしっかり伝える』ことだと思います。

 

遺言書に「相続人Aに不動産を相続される」とだけ書いてある場合、相続人は何故遺言者がAに不動産を相続させるのか、又は何故他の相続人ではだめなのかが分かりません。その場合、相続人は遺言者の想いを勝手に推測し、誤解する恐れもありますし、相続人自身の都合や想いに従って遺産を分割したいと考えるケースが多いです。

それと比べて、遺言書を書く前に家族と話し合い、遺言者の想いや遺言の意図を家族にしっかり伝えた場合や、遺言書の中に遺言者の想いを自分の言葉で書き残してある場合、相続人が遺言の内容に納得している場合が多く、遺言者の意思を尊重してくれるケースが非常に多いです。

ただ「遺言書を書いて遺産の分け方を決める」のではなく、「遺言書を通じ、家族に自分の想いを伝えること」が本当に遺言書を活かすことにつながると思います。

2018年9月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(15)

今回からは、具体的な報酬規定を綴ってみます。
ここは「叶」のブログですが、司法書士の報酬は各事務所で定めなければならないことになっていますので、今回から掲げていく数字は中里の事務所に限って適用される金額となることをご承知おきください。

まず、単純なケースとして、登記申請だけの依頼を受けたパターンです。つまり、すでに契約書ができあがっており、あとは登記申請をするだけというケースですね。

この場合、司法書士報酬は登記申請に関する報酬に限定されます。信託の登記は、「所有権移転登記」+「信託登記」の累計が最も多いので、以下、このパターンでお示ししていきます。

具体的な報酬規定は下記の示したとおりです。課税価格というのは「登記すべき土地建物の固定資産評価額の合計」と考えていただければ結構です。
たとえば、固定資産評価額3,000万円の土地と800万円の建物を信託登記する場合の司法書士報酬は約18万円となります(なお、この金額には登記の際に必要な登録免許税額は含みません)。

【報酬規定】

◆所有権移転登記
課税価格が     ☆ 1,000万円まで          43,200円
☆ 1,000万円超~1億円    1,000万円までごとに    + 5,400円
☆ 1億超                                1,000万円までごとに    + 6,480円

◆信託登記      10,800円

◆筆数加算  登記すべき土地建物が1件増えるごとに、+864円

◆信託目録  108,000円

◆そのほか、住民票や評価通知の取得費用、登記事項証明書の交付申請費用などが発生します。

2018年9月10日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust

叶(かなう)のメンバーが講師に招かれる理由

このところの立て続けの災害で、多くの方々が被災されています。心からお見舞い申し上げます。

最近、叶(かなう)の個々のメンバーが「民事信託」をテーマとしたセミナー等に講師として招かれています。

私も、保険会社さんが主催する民事信託を活用した事業承継のセミナーと社会保険労務士さんが主催する「民事信託」のセミナーの講師としてお招きいただいています。

「民事信託」という言葉自体が、市民の中に浸透し始めていること実感する動きでもあるのですが、講師を受ける側からすると多くの方々の前であるテーマについてお話させていただくには、それなりの勇気が必要となります。

私自身、何件かの実際の案件にも携わらせていただいているので、それなりに民事信託のポイントはわかっているつもりですが、一人からの視点は、客観的に見るともしかしたら偏りがあるかもしれません。様々な不安もあります。

ただ、叶(かなう)の勉強会に参加させていただいているお陰で、いろいろな論点に対して、様々な視点、角度からの検討の過程に身を置くことができています。

その経験が、「何をお伝えしたらいいのだろう」という不安を「このことをお伝えしたい」の勇気に変えることができているのだと実感しています。

これからも叶(かなう)のメンバーと共に切磋琢磨できればと想いつつ。(ななみ)

 

2018年9月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

雑感

今朝(9/6)の北海道胆振東部地震によりお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞いを申し上げます。また,一刻も早い復旧を心よりお祈りいたしております。

 

最近,中学の後輩が仕事を依頼したいと事務所に来所してくれた。

一通り仕事の話を終えたあと,雑談になった。

彼は会社の経営者で,いろいろな事業を始めているという。

その話の中で,「本木さんの仕事は本当の意味での競争社会ではない」という発言があった。

これは,常々感じていることである。私たち司法書士は司法書士法という法律によりその業務については独占業務であり,司法書士ではない者が業務を行うことはできない。司法書士同士の競争はあるが司法書士の人数から考えると,彼のライバルというべき者との競争とは比べものにならないだろう。私たちのおかれている状況だからこそ一定の質を保つことができるという考え方と独占業務に対する批判という考え方が成り立つ。

今,私にできることは質を保ちつづけていくことだろう。それは業務においてもそうだが,もっと大きく司法書士に対する信頼もだ。

最近の報道で,高度経済成長期に建てた構造物の維持が難しくなっているというようなものを見た。新しく構造物を建てることは予算も付きやすいが維持には予算がつきにくい。司法書士の信頼を勝ち得ていくには地道な努力しかない。

本木敦

2018年9月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

 前回の続きです。

 

図3

 

 右から2番目の矢印のように、受託者は信託財産負担債務を固有財産にて負担するということを説明しました。ところが、「信託財産負担債務を固有財産にて負担する」ことを明確に記した条文は信託法には存在しません。したがって、この点を指摘していない書籍も散見します。しかし、丹念に条文を読み込むと、今、申し上げたことが正しいということが分かります。信託法21条1項と2項です。

 

第21条 

 1 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

    (1号~9号略)

 2 信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。

    (1号~4号略)

 

 1項は「次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。」と規定しているのに対して、2項は「信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。」と規定されています。分かりますか?2項は「のみ」と規定しているのです。つまり、信託財産だけが責任財産である債務を2項は規定しています。しかし、1項は違います。「のみ」がないのです。信託財産責任負担債務であっても固有財産で責任を負う場合もあることを、1項と2項の区別から読み取ることができるのです。

 他に破産法244条の7第1項からも読み取ることが可能です。

 

第244条の7 

 1 信託財産について破産手続開始の決定があった場合には、信託債権を有する者及び受益者は、受託者について破産手続開始の決定があったときでも、破産手続開始の時において有する債権の全額について破産手続に参加することができる。

(2項以下略)

 

 この条文から、受託者の固有財産が信託債権にとって責任財産になることを意味しております。

 

 あと、信託法76条も各自調べてみてください。(小出)

 

こば紀行#70 白沢温泉もりのいずみ

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第70回目は白沢温泉

仕事でできあがった書類をお客様の自宅まで直接届けに行くことがある。たいていは市内か近隣なのだが、今回は森町のはずれ、島田市との境だという。島田市といっても旧川根町との境にある山奥で、買い物に出かけるときは車で1時間近くかけて島田か袋井の街中まで下りるのだとか。そんな中をわざわざ磐田までお越し頂いたのだ、誠意を持ってお届けにあがらねばならない。

地までは山道を1時間半、片側1車線で途中、ガードレールもない崖道のような所をひたすら登る。お届け先はそのほぼ山頂、すれ違う車どころか周囲には民家もない。標高700Mに位置し、木々に囲まれているせいか真夏の日中にもかかわらずクーラーなしでも凌げる。大自然に囲まれた昔ながらの家、あまりに居心地が良く1時間以上も居座ってしまった。

来た道を引き返すのはこばやしのポリシーに反するため、そのまま反対の島田側へと下山する。下りた先が川根町の真ん中あたりだったので、大井川沿いの国道をそのまま北上、いつか鉄道で来た道を今度は車で北上した。すると、寸又峡へ続く道の手前あたりに「白沢温泉」なる看板を発見、吸い寄せられるように直行する。

寸又峡や接岨峡温泉には何度か足を運んだことがあるが、ここは初めてだ。「もりのいずみ」という温泉施設で、周囲にはコテージやキャンプ場も備える複合施設のようだ。日帰り温泉には8つの湯船と露天風呂があり、食事処や休憩処も充実している。大井川のほとり、真夏の夕暮れに、川のせせらぎと鳥のさえずり、蝉の鳴き声を聞きながら浸かる露天風呂…何とも心地よい時間を過ごすことができる。新たな癒やしスポットを発見した思いだが、片道2時間はちょっと遠いかな。。(こばやし)

2018年9月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

受託者になったら

信託契約を締結すると、『受託者』となられた方に『信託目的に従って、受益者のために、委託者が信託した財産を管理・処分する権限が生じます。

よって、信託契約後、様々な契約の契約者を変更したり、信託財産管理用の口座を作成したり、管理に必要な行為をどんどん行っていく必要があります。

これらの手続きは、信託契約を締結しても自動的に変更されるわけではなく、受託者が自ら役所や金融機関、各関係機関に連絡し、様々な手続きをしなければなりません。

実際に信託契約を締結した方から、これらの手続きが想像より大変、何をしたらいいのか分からない、というご相談を頂くことがあります。

我々司法書士にご相談をいただいた場合、受託者となられる方に対し、契約締結後にどのような手続きをしなければならないのか、代表的な手続きや重要な事項についてはご説明しますが、管理・処分行為自体が多岐にわたるため、全てを詳細に説明することはできません。

また、信託の目的に反しない限り、受託者となられる方の判断で財産を管理処分することが認められているので、受託者の裁量部分による部分は、最終的には受託者に決めていただく他ありません。

受託者の方は、他人の財産を預かる立場になりますので、大きな責任が伴います。財産管理が雑でお金の使い道が説明できない場合や、手続きを放置していて受益者の方に損害が生じれば、損害賠償請求される場合もあります。

受託者になることは、大きな権限を手にすると同時に大きな責任を負います。

そこをしっかり説明し理解していただいた上で契約していただきたいと思います。

 

2018年9月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust