相続に関する相談の中で、『親が無くなり、遺言を残していたのですが、遺言書と違う内容の遺産分割をしたいのですが、それは可能でしょうか?』という質問を頂くことがあります。
まず①遺言がある場合は遺言書のとおりに遺産をわける、②遺言書がない場合は相続人全員で話し合いをして遺産を分ける、というのが基本です。
しかし、遺言書と違う遺産分割協議でも、『亡くなった方が遺言と異なる遺産分割協議を禁じていない』『相続人全員が、遺言の内容を知った上で、これと違う分割を行うことについて同意している』『相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者の同意もあること』『遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意がある』などの一定条件があれば、その遺産分割は有効とされています。(※上記の条件を満たしている場合でも、遺言書の記載内容によっては、法律的な解釈の仕方に違いがありますのでご注意ください)
なので、遺言者にとっては、せっかく遺言書を書いたのに相続人により自分の希望とは異なる内容で遺産を分けられてしまう可能性があります。
このようなことを避けるために、様々な手段があります。遺言書に『遺言と異なる遺産分割協議を禁じる』と書くのも有効な手段の一つですが、今まで色々なケースを見てきて、一番効果があるのは『遺言者の意見や想いをしっかり伝える』ことだと思います。
遺言書に「相続人Aに不動産を相続される」とだけ書いてある場合、相続人は何故遺言者がAに不動産を相続させるのか、又は何故他の相続人ではだめなのかが分かりません。その場合、相続人は遺言者の想いを勝手に推測し、誤解する恐れもありますし、相続人自身の都合や想いに従って遺産を分割したいと考えるケースが多いです。
それと比べて、遺言書を書く前に家族と話し合い、遺言者の想いや遺言の意図を家族にしっかり伝えた場合や、遺言書の中に遺言者の想いを自分の言葉で書き残してある場合、相続人が遺言の内容に納得している場合が多く、遺言者の意思を尊重してくれるケースが非常に多いです。
ただ「遺言書を書いて遺産の分け方を決める」のではなく、「遺言書を通じ、家族に自分の想いを伝えること」が本当に遺言書を活かすことにつながると思います。