相談者の意向を汲み取る

先日、『民事信託をやりたいので相談したい』という方のご相談を受けました。

 

この方のように相談者から「『民事信託』をやりたい!」と言われるケースは最近少しずつですが増えてきました。

この方の場合、司法書士事務所を訪ねる前に、無料のセミナーで民事信託を勧められたようで、「自分たちの問題を解決するためには民事信託が適している」という認識をお持ちでした。

このような場合でも、司法書士は言われるままに信託手続きを進めることはありません。

まずはゆっくりと時間をかけて相談者の家庭の事情や様々な悩みをお伺いし、一つ一つ問題を確認していく作業が必要になります。

というのも、相談者の抱える問題が本当に民事信託で解消されるのかどうか、しっかり見極める必要があるからです。

 

相談者が「民事信託がいい」と言っているのに、司法書士がすぐに対応せず、事情を細々と説明しなければならないのは相談者の方にとってストレスかもしれません。

 

しかし、「そもそも民事信託が適しているのかどうか?」「他の解決策はないのか」という点を確認するため、必ず事情を聴くようにしています。

 

というのも、昨今民事信託に熱心な業者が増え、色々なセミナー、説明会、無料相談が行われているのですが、「民事信託をしておけば何でも可能」「認知症になっても家族が財産を好きに処分できるので安心」など、誤解を招く表現で説明され、まるで民事信託が万能であるかのように推奨されている場合があります。

 

なかには、困った事情がない方や民事信託をする必要性がない方から、「周りに『とりあえず信託しておけば困ることはない』『民事信託はいいものだ』と言われたので、とりあえず信託したい」と言われて閉口したことがあります。

 

無論、信託には様々なメリットがありますが、デメリットや注意点もあります。

よく説明せずに、相談者の方に言われるがままに信託した場合、かえって相談者の方の意向とは異なる結果になる可能性があります。

相談者の本当の意向に沿うため、ゆっくりと時間をかけて事情を伺ってから、ようやく伺った問題を解決するために最適な信託のスキームを提案する作業へ移ります。

 

相談者の方から見ると、まどろっこしいかもしれませんが、この事情聴取により、相談者の方にとっていい信託となるか否かが決まるので、お付き合いいただきたいと思います。

2018年6月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(7)

前提となるご説明が長く続きましたが、そろそろ本題となる信託の報酬に入っていきましょう。
今までの説明でご理解いただけたかと思いますが、信託に関する司法書士報酬がいくらかという問題を考える場合、信託に関する司法書士業務の性質を考えなければなりません。
つまり、信託に関する業務が、成年後見人に就任したり、140万円以内の金銭の請求を「司法書士にお任せ!」方式で依頼されたりするような「包括受任事案」に該当するのか、あるいは個々の書類の作成や事務手続きの依頼が積み重なっているにすぎない「個別受任事案」に該当するのかによって、司法書士が請求できる報酬の根拠も大きく変わってくることになるわけです。

私たちが民事信託に関する業務の依頼を受ける際の「頼まれ方」には、いくつかのパターンがあります。

(1)弁護士や行政書士などの他の法律専門職が起案した不動産を信託財産に含んだ信託契約書が司法書士事務所に持ち込まれ、「この契約書に基づいて不動産について信託の登記をしてほしい」と頼まれるパターン

(2)当事者や関係者の中に信託に詳しい方がおり、すでに希望する信託のスキームはでき上がっているが、契約書の起案をするスキルがないため、「こういう内容の契約書を作ってほしい」と頼まれるパターン。

(3)相談者らが「自分たちの問題を解決するためには民事信託が適している」という認識をすでに持っていて、「民事信託をお願いしたい」と頼まれるパターン。
司法書士事務所を訪ねる前に、無料の法律相談等で民事信託を勧められたようなケースが、このパターンの代表例ですね。
この場合、司法書士は「そもそも民事信託が適しているのかどうか?」という点から相談者の抱える事情を紐解いていく必要がありますので、まずは時間をかけた事情聴取が必要になります。
次に、伺った問題を解決するために最適な信託のスキームを提案する作業へ移ります。もちろん、この段階で契約条項の起案もあわせて行うのが通常です。

(4)最後に、実はこのパターンが一番多いのですが、相談者は「民事信託」という言葉すら聞いたことがないパターンです。
「相談がある」ということでお話を聞くうちに、「これは民事信託が使えそうだ」と司法書士側から提案をするパターンですね。司法書士の作業としては(3)とほぼ変わりません。

登記申請だけの依頼を受ける(1)のパターンの場合、他の登記の依頼と同じように必要な書類を準備して当事者から印鑑をもらい、法務局に提出すれば作業は完了します。
(2)~(4)の場合も、信託財産に不動産が含まれていれば(1)と同様に登記申請が必要となるのは当然ですが、ほかにも(2)~(4)の場合には、契約書を公正証書とする必要がある場合の公証役場の手配や、受託者名義の信託口口座開設の手配、信託財産たる預貯金を委託者の口座から受託者名義の信託口口座に送金する作業への立会いなどの付随的作業が追加されるのが通常です。
口座の開設や送金は、司法書士が関与しなくても当事者だけで完結するのが本来なのですが、信託口口座の開設にはまだまだ不慣れな金融機関がほとんどですし、信託財産となると高額の資金移動を伴ううえ、委託者は高齢の方も多いため、金融機関の窓口では「何かの詐欺案件?」と警戒されてスムーズに送金できないケースも少なくないため、中里の場合は基本的にこれらの作業に同行するようにしているのです。    (中里)

2018年6月13日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust

株式の信託は株式の機能を2つに分けて活用する

株式を所有するということは、株式を使用、収益および処分する権利をもっていることになります。

株式を信託する場合、この権利(機能)を2つに分けて別々の人に持たせることで単に所有するだけではできないことができるようになります。今回はそのイメージだけつかんでください。(ななみ)

 

2018年6月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

金融機関の対応

信託に向き合ってくださる金融機関も増えて,この実務に携わる者としては喜ばしい限りなのですが,金融機関さんですと独自の基準が設けられていることがありました。

今回,お手伝いさせていただいたお客様には,理由あって信託監督人の定めを置いていなかったのですが,ある金融機関さんですと信託監督人の定めがないとお取引できないと言われてしまいました。

金融機関さんの立場も理解できますが,信託の趣旨から考えますと法律違反をしているわけではないのですからある程度自由な設計が認められてもよいのではないかと思いました。

文責:本木敦

2018年6月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

「再審の請求」と「再審の開始」

刑事事件において確定した判決を再び審理(再審)するには、再審の請求をする必要があります。再審の請求をするための要件は刑事訴訟法435条に定められています。いくつか規定されていますが、その一つに「原判決の証拠となつた証拠書類又は証拠物が確定判決により偽造又は変造であつたことが証明されたとき。」というものがあります。今回の「袴田事件」はこの要件をもとに、再審の請求を行っているものと思います。法律上、再審の開始を勝ち取ることはとても大きな意味を持っています。

刑事訴訟法448条2項では、「再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。」と規定されています。

一方、442条は、「再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。但し、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。」

つまり、再審の開始を勝ち取れば、死刑執行の停止を確実に認めてもらう道が開けるのです。それに対し、再審の請求では、それがないのです。これは、当事者にとっては大きな違いとなります。

「再審の請求」と「再審の開始」。似ているようで、その重みは全く異なります。(小出)

2018年6月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

こば紀行#62 箱根周遊①

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第62回目は箱根周遊①

とある休日、箱根を目指して車を走らせる。前日夜はメイストームと呼ばれる荒天候だったが、朝には雨も止み晴れ間も見えてきた。今回の目的は「箱根フリーパス」(4,000円)を利用してあらゆる乗り物を制覇すること。今回は同行者もいるため、いつになく気合いが入る。計画したコースは次のようなものだ。

車で元箱根まで→そこから海賊船で芦ノ湖遊覧→船で桃源台駅に着いたらそこからロープウェイに乗り換える→大涌谷で黒たまごを食しそのまま早雲山まで上る→早雲山からはケーブルカーにて強羅まで下り→強羅周辺の公園、美術館を巡り→登山鉄道にて湯本まで行き食事、温泉で〆る。我ながら壮大な計画だ、ワクワクする!

が、この計画は初っ端の元箱根でつまづく。乗り換え予定の海賊船が濃霧で運転見合わせなんだとか。こうして見ると、幽霊船のような風格がある。出鼻をくじかれた形だが、そのまま車で桃源台駅へ向かう。霧の芦ノ湖を眺めながら、虚しく船に乗った自分を妄想する。そして、桃源台に着くとそこには次なる試練が待ち受けていた。運休かよ(゚ロ゚)→

これも運命なのか…期待に胸を膨らませ描いていたものが音を立てて崩れていく。どうしよう…途方に暮れるこばやし。

箱根神社に立ち寄った後、計画どおり早雲山駅へ向かう。ただ、ロープウェイではなく車なのだが。早雲山駅付近の駐車場に車を止め、ケーブルカーに乗り換える。さすがにケーブルカーや鉄道は通常どおりの運転だ。この沿線は6月中旬からあじさい列車と呼ばれる程、たくさんのあじさいが咲き誇るという。が、この日咲き誇っていたのは列車のシートのあじさいだ。そうこうしているうちに、ケーブルカーは終点強羅に辿り着く。(つづく)

 

2018年6月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

家族の資産を考える

ご両親が不動産賃貸業を営んでいる方から相談されました。

 

相談内容としては、以下のようなものでした。

『両親とも不動産が大好きで、不動産屋さんに勧められるとすぐに欲しくなって買ってしまいます。

しかも、現金では買えないので毎回金融機関から借入をして購入しています。

両親は高齢なので、借入返済が終わる前に亡くなる可能性が高く、自分が最終的に借金を引き継ぐことになるのではないかと思いますが、ちゃんと返済できるか不安です。

これ以上、両親が不動産を買うのを止めることはできないでしょうか?』

 

お話を聞くと、ご両親は認知症などではなく、業者さんに騙されているわけでもなく、自分がその物件を欲しくて、検討した上で購入しているようでした。

 

そうなると、お子さんが不動産購入を反対することはできますが、購入するのはあくまでもご両親であり、お子さんは当事者ではないので、ご両親が説得により考えを変えない限り、不動産の購入をすることはいくら家族といえども止められません。

その方には、よく家族で話し合ってもらうしかない旨をお話しました。

 

親の財産はあくまでも親のものですが、こどもの人生にも大きく影響します。

親子でお金の話をすることは難しいかもしれませんが、そういう機会を持つことの重要性を感じました。

 

2018年6月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

報酬(6)

≪前回の整理≫
「個別受任事案」としての【書類作成】業務では、司法書士は成功報酬を請求できない。
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引き続き、司法書士報酬の『対価』は何かを検証します。

前回は「150万円の貸金を請求したい」という依頼でしたが、これが「130万円」なら、「司法書士にお任せで!」つまり「包括受任事案」としての対応が可能でしたね。

「包括受任事案」の報酬請求は、通常は「着手金」と「成功報酬」とに分けられます。
「着手金」は、文字どおり依頼を受けるにあたって最初にいただく報酬です。したがって「着手金」の『対価』は【仕事への着手】ですので、着手した時点で業務は完結します。
ということは、依頼者が途中で依頼を断った場合も原則として返金できませんし、結果的に1円も回収できなかったとしても同様に返金はできません。

では「成功報酬」はどうでしょう?
「成功報酬」の『対価』は【依頼者が得た利益】でした。したがって単純に考えれば、130万円全額回収できたのなら130万円が依頼者の利益ですし、100万円しか回収できなかったのなら100万円です。このため、「成功報酬は回収した金額の〇%」と定めるケースが一般的なわけです。
ただし実際には、一括払いか分割払いか、分割払いだけど不動産を担保に取ることができたなど、付随要素を加味して検討する必要があることも少なくありませんので、これらの付随要素によって若干の調整がなされることもあるでしょう。

「着手金」と「成功報酬」がいくらか? というのは読者の関心ではあるでしょうが、これは事務所によって異なりますから、依頼の際に事前に説明を受けてもらうしかありません。
ちなみに、中里の事務所では次のような報酬規程を設けています(いずれも税別)。付随要素による加算もありますが、ここでは省略します。
なお、「原告事案」とは請求を希望する方からの依頼、「被告事案」は逆に請求された方からの依頼を指します。「被告事案」における経済的利益とは、たとえば100万円の請求を受けたけど、訴訟の結果60万円の支払いで済んだ場合、これを40万円と計算します。                  (中里)

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【原告事案】
「着手金」 請求希望額の1割(ただし最低2万円)
「成功報酬」 経済的利益が50万円未満 ・・・ 利益の1割
経済的利益が50万円以上 ・・・ 利益の2割

【被告事案】
「着手金」 請求されている額の1割(ただし最低2万円)
「成功報酬」 経済的利益が50万円未満 ・・・ 利益の5分
経済的利益が50万円以上 ・・・ 利益の1割

2018年6月1日 | カテゴリー : 報酬 | 投稿者 : trust