≪前回の整理≫
「個別受任事案」としての【書類作成】業務では、司法書士は成功報酬を請求できない。
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引き続き、司法書士報酬の『対価』は何かを検証します。
前回は「150万円の貸金を請求したい」という依頼でしたが、これが「130万円」なら、「司法書士にお任せで!」つまり「包括受任事案」としての対応が可能でしたね。
「包括受任事案」の報酬請求は、通常は「着手金」と「成功報酬」とに分けられます。
「着手金」は、文字どおり依頼を受けるにあたって最初にいただく報酬です。したがって「着手金」の『対価』は【仕事への着手】ですので、着手した時点で業務は完結します。
ということは、依頼者が途中で依頼を断った場合も原則として返金できませんし、結果的に1円も回収できなかったとしても同様に返金はできません。
では「成功報酬」はどうでしょう?
「成功報酬」の『対価』は【依頼者が得た利益】でした。したがって単純に考えれば、130万円全額回収できたのなら130万円が依頼者の利益ですし、100万円しか回収できなかったのなら100万円です。このため、「成功報酬は回収した金額の〇%」と定めるケースが一般的なわけです。
ただし実際には、一括払いか分割払いか、分割払いだけど不動産を担保に取ることができたなど、付随要素を加味して検討する必要があることも少なくありませんので、これらの付随要素によって若干の調整がなされることもあるでしょう。
「着手金」と「成功報酬」がいくらか? というのは読者の関心ではあるでしょうが、これは事務所によって異なりますから、依頼の際に事前に説明を受けてもらうしかありません。
ちなみに、中里の事務所では次のような報酬規程を設けています(いずれも税別)。付随要素による加算もありますが、ここでは省略します。
なお、「原告事案」とは請求を希望する方からの依頼、「被告事案」は逆に請求された方からの依頼を指します。「被告事案」における経済的利益とは、たとえば100万円の請求を受けたけど、訴訟の結果60万円の支払いで済んだ場合、これを40万円と計算します。 (中里)
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【原告事案】
「着手金」 請求希望額の1割(ただし最低2万円)
「成功報酬」 経済的利益が50万円未満 ・・・ 利益の1割
経済的利益が50万円以上 ・・・ 利益の2割
【被告事案】
「着手金」 請求されている額の1割(ただし最低2万円)
「成功報酬」 経済的利益が50万円未満 ・・・ 利益の5分
経済的利益が50万円以上 ・・・ 利益の1割