先日、母親の家族信託について相談したい、という方のお話を伺いました。
お話の内容としては、
・現在は母親は元気で意思能力も問題ないが、高齢なので認知症が心配
・資産は預貯金と自宅の建物(自宅の土地は相談者名義)
・母親としては、自分が亡くなった場合の遺産は子供たちで相談して分けてくれればよいと思っている
(特に『誰に何を残したい』『自宅の建物を継いでほしい」などの意思はなく、自分が亡くなったら子供が好きに処分していいと思っている)
・母親は自宅で一人暮らし。子供はそれぞれ家があり、実家に戻ることはない。
・子供たちの中では、母親が亡くなったらどう相続するかは何となく話し合っており、相続でもめることはなさそう
というものでした。
母親の収入は年金のみだそうですが、多額ではない(相談者曰く)が預貯金があり、
出費も多くないので、生活としては成り立つそうです。
ここまで聞いて、正直『信託する』必要はないのではないか、と思いました。
特別に管理しなければならない(管理が大変な)財産があるわけでもなく、
財産の承継が難しそうな特別な事情もなく、
本人(母親)が「財産をこのように承継したい」という意思があるわけでもないからです。
別に『信託』せず、通常通りの財産管理を母親が行い、
もし認知症になったら『成年後見制度』を利用すればよいのではないかと思い、
その旨を相談者にお伝えしたところ、
『だって、成年後見制度って面倒くさいんでしょう?』
『お金が動かせなくなるって聞いた』
『家族が自由にできないんでしょう?』
と言われてしまいました。
巷で『成年後見制度』『家族信託』が話題になる一方で、
こういった誤解が多くなった気がします。
『家族信託』しても、家族が勝手に母親のお金を何にでも使えるわけではありませんし、
『成年後見制度』を使っても裁判所にお金を取り上げられたり、お金が使えなくなるわけではありません。
相談者の方は、メディアで認知症対策として『信託』が取り上げられたのを見て、
とりあえず『信託』しておけば家族が困ることはない、と思ったそうです。
高齢化が進む日本で、財産管理の方法として『信託』は有効な手段の一つではありますが、
親に『信託』させて家族が好きに使う、という構図になってならないと思います。。