第5条 信託監督人

(信託監督人)
第5条 委託者及び受託者は、下記の者を信託監督人として定めるものとする。
静岡県浜松市・・・・ 一般社団法人 叶

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信託の最大のウィークポイントは、監督機能がないという点です。
この点、成年後見制度では裁判所の監督下で財産管理が行われますので、制度への信頼性は高まります。
そこで、法律専門家を信託監督人として定め、受託者の管理監督と信託事務の適正な履行の確保を図るべきであると考えます。

「叶」では、グループメンバーで一般社団法人を設立し、信託監督業務に従事する予定で、現在その準備を進めています。報酬を低額化し、利用者の利便性に応えることを想定しており、税理士や不動産業者など、司法書士以外の方にも参画を呼び掛けていきたいと考えています。
(中里)

第4条 信託事務処理代行者

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(信託事務処理代行者)
第4条 受託者は、本信託の事務の処理につき必要な場合は、専門的知識を有する第三者(以下、「信託事務処理代行者」という)に委託することができる。
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受託者が行うべき事務には、専門的な知識を必要とする作業も少なくありません。そこで、円滑な受託事務が遂行できるよう、信託法では、一定の条件を定めて第三者への委託を認めています。
第三者の委託に一定の条件を付した理由は、包括的にすべての事務を第三者に委託するようなことになれば、委託者の「この人に託そう」という信頼を覆してしまうことになるからです。

そこで、モデル契約書では「専門的な知識を有する第三者」という要件を設けることにより、法的な問題や税務の問題などに関する事務処理が必要な場合は弁護士、司法書士、税理士など、介護や医療に関する事務処理が必要な場合には社会福祉士や精神保健福祉士などのそれぞれの分野の専門家の支援を受けられる配慮を施しています。

(中里)

 

第3条 受託者

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(受託者)
第3条 本信託の受託者は、次の者とする。
静岡県浜松市・・・・ B
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受託者を誰にするかはまさにケース・バイ・ケースなのですが、ここでは、障がいを抱えたお子さんの将来の生活を長期にわたりサポートできる方という観点で、健康な兄弟を想定しています。
もっとも、適任者がいないケースも少なくありませんし、障がいを抱えたお子さんとの年齢差が大きい場合、二次受託者の定めをしておく必要もありそうです。

このようなケースでは、受託者または二次受託者の成り手として新規で設立した一般社団法人を指定し、司法書士などの専門家が法人の理事に就任するなどの方法により継続性を担保することも考えられます。

第2条 信託契約及び信託財産

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(信託契約及び信託財産)

第2条 委託者は、受託者に対し、後記「信託財産目録」第1記載の不動産(以下、「信託不動産」という)及び同第2記載の現金を信託財産として信託し、受託者はこれを引き受けた。
2 信託財産から生じる賃料、売却代金その他の運用益または果実は、信託財産に帰属するものとする(以下、前項記載の現金及び本項により信託財産に帰属するものとされた金銭をまとめて「信託金融資産」という)。
3 信託財産は、前各項の財産のほか、受託者の要請に基づき委託者または受益者が追加した財産を含むものとする。
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このあたりは、一般的な条項ですね。

2項では、アパートの賃料や売却した際の代金、預金利息なども当然に信託財産に含まれることを、注意的に明らかにしています。

3項は、受益者となる障がいを抱えたお子さんの生活状況に大きな変化が現れ、当初の信託財産だけでは生計の維持が困難な状況に至るようなケースを想定し、受託者から信託財産の追加要請をすることができる条項となります。
「受益者が追加した財産を含む」とあるのは、障がいのあるお子さんのほかに受益者がいるようなケース、例えば、父親が委託者でその配偶者も受益者に含むような作りこみをした場合などを想定しています。      (中里)

 

第1条(信託の目的)

今回から始めるモデル契約書の解説コーナーです。
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(信託の目的)
第1条 本信託は、次条記載の財産を信託財産として管理、運用、処分その他本信託の目的達成のために必要な行為を行うことにより、知的障がいを抱える委託者と受託者との間の子C【受益者】の生涯にわたる安定した生活の支援と最善の福祉を確保することを目的とする。
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「親亡き後」への備えのための信託契約ですので、障がいや引きこもりなどの理由により自立した社会生活を営むことに支障があると考えられる子が将来にわたって安定した日常生活を送ることができ、必要な福祉サービスを最大限に受けられることを願い、限りある信託財産を有効活用することを受託者に託す内容となっています。

新シリーズへ移行します。

19回に亘って「信託の“肝”」についてまとめてきましたが、新年度突入を機に私の担当ブログもリニューアルすることにします。

「叶」では、親亡き後への民事信託の活用をテーマにモデル契約書を取りまとめています。
次回からは、契約書の各条項を逐条的にご紹介しながら、条文にこめた私たちの考え方や実務上の工夫についてご紹介しようと思います。

引き続き、新シリーズをお楽しみに! (中里)