最近、女性の社会進出が進んだことにより、結婚後も旧姓で仕事をすることが認める職場が増えてきています。
弁護士、司法書士などの士業も旧姓(司法書士会では「職名」と呼称しています)で活動することが認められておりますし、裁判所や市役所などの公務員も旧姓(職名)で職務を行うことが認められております。
私は職名を使用して活動しているのですが、業務上、様々な場面で職名を使用していることによる業務への支障を感じます。
例えば、司法書士の鈴木花子さんが結婚し、田中花子になった場合。「鈴木花子」として司法書士業務を行うことはできますが、「鈴木花子」名義の銀行預金口座を作成することはできません。預貯金は本名でなければ作成できないからです。そうすると、司法書士鈴木花子として活動しているのに、報酬は「田中花子」名義の口座に振り込んでもらうことになります。
また、司法書士が成年後見人に選任されるケースがありますが、成年後見人は本名で登録されます。なので、司法書士鈴木花子がどなたかの成年後見人になった場合、成年後見人の住所氏名は『住所 (司法書士事務所の住所)、氏名 田中花子』と登録されます。『司法書士田中花子』がいると思って事務所に電話すると『鈴木花子』が出ます。旧姓使用を説明すれば理解してもらえることが多いですが、結局旧姓と本名の両方を先方に伝える必要があります。
最近では、本人確認の手続きが厳格になり、金融機関等で本人確認書類の提出が要求されます。司法書士は他人の財産管理も行うため、仕事上やり取りをする機会が多いのですが、職名使用者は本人確認で必ず手間取ります。
「司法書士鈴木花子」は、運転免許証、個人番号カードなどのような一般的に定められている本人確認書類はありません。すべて田中花子になっています。鈴木花子と田中花子が同一人物かどうか、どうやって証明すべきか、画一的な処理はありません。戸籍を持って来い、と言われることもあります。
いつも窓口で待たされ、あの書類はあるか、この書類はあるかと聞かれて、ありとあらゆる書類の提出を要求されます。そして窓口の人が困り果てて本部の人に確認し、本部の人もよく分からず、何となく『これだけ提出すれば手続きを受け付けてもいいでしょう』となり、やっと手続きが進む、ということがよくあります。
手続を受ける立場からすると、そもそも本名が違う人が窓口に来ることが想定されておらず、マニュアルにない対応を迫られ、かつ法令遵守しなければならないので、法律違反にならないように本人確認するにはどうすればよいか、四苦八苦されたことと思います。自分のことをきっと非常に迷惑に思っていることでしょう。
これらの原因は、職名というのは正式な名前でなく、その職場内で使用が認められているだけの名前です。何ら法律的な根拠もありませんし、立法段階で職名を使用している人なんて考慮されません。
『婚姻後の名前で仕事すればすべて解決するでしょ』
と言われればその通りですが、それってどうなんでしょうか。
選択的夫婦別姓制度の合憲性が争われ違憲ではないとされた際、「最近は旧姓使用も進んでいるので、別姓が選択できなくても不都合は少ない」というようなことが言われたようですが、何て浅い意見なのかと思いました。
かなり愚痴っぽいブログになりましたことをお詫びします。