今年は、相続法の改正もあり、相続や財産管理のセミナーが多く開催されています。私が講師をお受けするときに必ずお伝えする数字があります。認知症患者の増加のデータと今回ご紹介する認知症患者の保有財産の額です。すでに相当な金額になっているようですが2030年には215兆円に達するようです。GDPの4倍の額といわれています。
このままでは、日本の経済にも影響を及ぼすと思います。
だからこそ、お元気なうちに、民事信託等で財産の運用を次の世代に託しておくことが重要となると私は思っています。(名波)
今年は、相続法の改正もあり、相続や財産管理のセミナーが多く開催されています。私が講師をお受けするときに必ずお伝えする数字があります。認知症患者の増加のデータと今回ご紹介する認知症患者の保有財産の額です。すでに相当な金額になっているようですが2030年には215兆円に達するようです。GDPの4倍の額といわれています。
このままでは、日本の経済にも影響を及ぼすと思います。
だからこそ、お元気なうちに、民事信託等で財産の運用を次の世代に託しておくことが重要となると私は思っています。(名波)
後見組織の形成は、たとえていうならば、自己の福祉を目的とする新たな会社を設立するようなものです。
どういうことかといいますと、株式会社では、株主の意思を尊重しつつも、取締役や監査役が実際の企業経営を行うように、
後見組織では、本人の意思を尊重しつつも、後見人が実際の財産管理・運用を行うことになります。
複雑なガバナンス(企業統治)のしくみを備える会社と同様に、後見のしくみは、相続に劣らず複雑であり、難解といえます。その難解さゆえに、その利用の仕方を一歩間違えると本人の福祉をかえって悪いものにしてしまうこともある制度ともいえます。 (本木敦)
台風19号に関して被災された方を対象に、伊豆の国市で以下の要領で相談会を開催します。
日時:10月30日(水)、31日(木)9:00~15:00
場所:伊豆の国市役所 伊豆長岡庁舎3階
相談員は、弁護士、司法書士、行政書士、建築士、公認会計士、技術士、土地調査家屋士、社会保険労務士です。 私も相談員として両日伺います。お知り合いに伊豆の国市にお住まいの方がいらっしゃったら、ぜひ教えてあげてください。(小出)
このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。
第98回目は信州縦断
前回までのあらすじ~最近、若干人生に疲れ気味のこばやしは、金曜の午後に職場放棄し、下部温泉で自分の殻に閉じこもったあと、ほんとの自分を求めて野辺山高原までやって来た。
涼しい。この景色を眺めてるだけで癒される。夏の高原は素晴らしい!この一言に尽きる。標高1345M、JR駅で最も高い位置にある野辺山駅を出ると雲ひとつない真っ青な空と、正面にそびえる八ヶ岳の風景が眼前に広がる。駅前でレンタルしたチャリで、2時間野辺山高原をひた走る。目指すは高原牧場のソフトクリームだ。
道は八ヶ岳の方向に向かって緩やかな登り坂になっている。辺り一面に広がるレタスだかキャベツ畑の中にポツンと一見この風景には似つかわしくないパラボラアンテナが立っている。ここ野辺山高原には、電波天文学の国際的な拠点の一つである国立天文台野辺山宇宙電波観測所が置かれている。そういえば、私の業界には宇宙人並みの電波(発言、メッセージ)を放つ人達が非常に多いのだが、このアンテナのような受信力(感受性、言語力)を身に付けねばと密かに決意する。
高原チャリ走はソフトクリーム牧場めがけて爆走する。JR線路の最高地点も駅からチャリ圏内にある。時間さえあれば半日は走っていられるほどに快適だ。そして、目的のソフトクリーム牧場にたどり着く。パット見平凡なソフトだが、牛のお乳をふんだんに盛り込んだ(はずの)濃厚な味わいだ。加えて、牧場の雰囲気と真昼なのに気温24℃の涼やかな空気の中で食べるそれは死ぬほどうまい。これにて、今回の旅の目的はほぼ達成された。(つづく)
先日、超大型台風が日本を襲いましたが、皆様ご無事だったでしょうか?浜松市は停電や断水、冠水などの被害もほぼなく、大過なく乗り切ることができましたが、全国的には大きな被害がでており、今後の作業にかかる時間や費用、手間は大変なものと思われます。
実は、私はとある方の成年後見となっているのですが、その方の自宅の屋根が台風前の強風の日に飛んでしまい、工事をお願いしていました。そうしたら何と工事施工予定日に台風が直撃し、工期が伸びてしまいました。応急処置はしていただいてあったものの、台風で家が傷んだりしたらどうしよう、、と思うとハラハラしました。結果、特段の被害もなく工事の方も無事に完了し、安心しました。
ここで気づいたのですが、家の所有者が認知症で成年後見制度を利用していない方の場合、復興作業は一体どうなるのでしょうか?厚生労働省の2015年1月の発表によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人ですが、成年後見制度の利用者は約21万人(平成29年12月末日時点)と非常に少ないのが実情です。家族が認知症だけど、普段の生活にはあまり支障がないので成年後見制度を利用していない方が多いのではないかと思われます。ただ、自宅が大きな被害を受ければ、多額の預金の引き出しが必要になったり、保険金の請求をしたり、場合によっては自宅の処分をしなければならない場合もあります。その時になってから成年後見制度を利用することもできますが、申し立ててから審判が下りるまでに1~3か月程度かかるのが一般的なため、その期間中は手続きが止まってしまうことも考えられます。
生活が懸かる問題なので、迅速な対応が必要になりますが、被災してから申し立てるのでは、迅速な対応ができません。高齢者の財産管理については、何か問題が発生してから対応するのは遅いのだな、と実感しました。
現在、3件の信託監督人に就任しています。
信託の解説書を紐解けば、信託監督人の理論的な説明にこと欠くことはありませんが、実務的な観点から信託監督人としての業務を解説する文献は目にしたことがなく、信託の当事者、ことに受益者にとってどんな業務の進め方、あるいはどんなスタンスが妥当であるのかを、日々模索しています。
参考にしているのは、過去に2件就任したことがある任意後見監督人の業務です。
このときは、数か月に一度、任意後見人から財産管理や身上監護に関する記録の提出を受け、主に書類上で任意後見人の業務の様子や本人の生活状況を確認し、裁判所に対して簡単な報告書を提出するという作業を行っていました。
任意後見人が日々の業務の中で判断に困ることがあれば、メール相談に対応することもあります。
もっとも、このときの任意後見人はいずれも司法書士でしたので、監督人といってもほぼ問題となるような事態はありません。
しかし、3件の信託監督人はいずれも委託者の親族が受託者です。しかも、信託監督人を選任した目的は、受託者が他の親族に対し正々堂々と信託業務を遂行することができるようにしようというニーズに対応するためです。
そこで、受託者にとっては面倒かもしれませんが、少なくとも2カ月にいちど、受託者には関係資料一式をそろえて事務所にお越しいただき、帳簿類や領収書、通帳の動きなどに注意を払いながら30分ほどかけて業務の様子を詳細に伺うようにしています。
また、面談の最後には「信託監督報告書」を発行し、受託者に保管をお願いしています。この報告書には、①前回報告時の管理財産一覧、②報告期間中の収支状況、③今回報告時の管理財産一覧、④高額な支出を伴う際にはその使途、⑤受託者から相談を受け、あるいは受託者に改善・修正を求めた事項、などを記載しています。
後日、親族の皆さんが受託者の業務に疑いの目を持った際にも、業務が適正であったこと、あるいは是正すべき事態に至ったときにどのような対応をしたのか等が一目で確認できるような記録の保管に資するようにと考え、現在のスタイルに到達しました。
私の場合、信託監督人の報酬は、特別な事情のない限り月額1万円。
成年後見制度のような裁判所による監督機能がない信託を、社会の中で信頼に足る制度として認知されるようにすることも、信託に携わる実務家の役割だと考えています。
そこで、できるだけ金額をおさえ、多くの信託で信託監督人制度を導入してもらいたいという希望を持って対応しています。 (中里)
「父が認知症と診断されたのですが、どの程度まで民事信託ができますか?」
ときどき、問合せがある内容です。
私がお答えする基本スタンスは、「成年後見制度の検討をされた方がいいと思います」ということです。
ちなみに、後見制度を活用する場合、家庭裁判所に医師の診断書を提出します。
診断書の抜粋です。
3 判断能力についての意見
□ 契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。
□ 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。
□ 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。
□ 支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。
一番下が、後見相当で、一番上が、判断能力に問題ないということになります。
民事信託をは、お元気な内にご検討されることをお勧めいたたします。
もっというと、お子さんではなく、ご本人のしっかりとした理解と決断があることが必要であることは言うまでもありません。(名波)
どんな人でも、その身にふりかかることのある重大なことに対して、その人が持っている財産の行く末を決める2つの法制度があります。
人の死亡に対処する相続制度と、人の判断能力の低下に対処する成年後見制度です。
「人はいつか必ず死ぬ」ということは誰でも知っています。それなので、人は自分が死んだ後のことを心配して、相続制度について勉強します。もしも、自分が今死んだら、身内の誰がどれだけ相続することになるのか、あるいは、どれだけの相続税を払わないといけないのか、遺言書は作成した方がいいのか、作成する場合にはどのように作成したらよいのか、といったことです。
これに対して、「人はいつか必ず認知症になる」とはいえません。
幸いにして脳が健全なまま天寿をまっとうする人も多いでしょうし、精神に障害をきたすまでもなく、想定していなかった事故により突然命を絶たれる人もいます。そのためか、人は、自分が期せずして判断能力が低下してしまったときのことを、あえて想像しようとはしません。
厚生労働省の2015年1月の発表によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。
今後高齢化がさらに進んでいくにつれ、認知症の患者数がさらに膨らんでいくことは確実です。
厚労省が今回発表した推計によれば、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。
成年後見制度に対する理解がまだ浸透しているとはいえないのですが、その理由の一つといえると思います。
しかし、成年後見制度の必要性・重要性は、相続制度の必要性・重要性を上回るとさえ言われています。
それは、死後の財産を1回限りで処分する目的の相続制度よりも、生前の財産を継続的に管理する目的の成年後見制度の方が、財産保有者の尊厳に配慮した繊細な法的規律が必要といえるからです。
本日、連休最終日である。ブログを書こうと思っていたのだが、最終日に書く始末である。忙しいのも理由の一つであるが、時間があれば書くことは山ほどある。だいたい三週間に一度のペースだから、その間何も起きないということは仕事柄あり得ないからである。それにも関わらず、最終日までブログを引き延ばしたのは私のずぼらさもあろうが、言うまい言うまいと思っていたのだが、やっぱり言う。我慢ならない。先日の保佐人の代理権の件である。
結論は出た。司法書士には遺産分割調停・審判の代理権付与はできないというのである。しかし、本件は問題ないと私は考えている。以下、お話しできる範囲で申し上げる。
本件、本人は法的問題を多数抱えており、将来においても抱える可能性が十分にある方であった。しかし、本人にはほとんど資力がない。つまり、本人の財産から報酬を支弁することは不可能なのである。このような場合、一定の条件を満たせば、市町村が報酬の助成をするが、それは保佐人の仕事の多寡にかかわらず一定額という決まりである。 一方、弁護士法72条は「報酬を得る目的で」「業とすることができない」と規定している。このことから、本件は72条に実質的に該当せず、本件保佐人を受任する者は、成年後見制度を社会全体で支えるための社会的責任として引き受ける、というのような運用も可能だったはずである。
「調停が必要になったら、そのとき考えれば・・。」などと悠長なご提案を頂戴したが、「家事事件手続法【第3版】」(有斐閣:梶村太一他)298頁では、「法律行為をすることを認めるべき保護の必要性があること」が代理権付与の要件であるから、必要であれば事前に付与するのが原則である、必要性を認識しながら上記のような考えをすることは、司法の怠慢である。
仮に、司法書士に手続代理人としての能力にご心配されていても、これはまったく理由にならない。そもそも、手続代理人は訴訟代理人と違って、利益相反を厳格に禁じていない運用をしている。一例を申し上げると、遺産分割調停は、本来、相続人全員が利害対立している場面であるから、訴訟法の考えを貫けば一人の相続人の代理人となれば、他の相続人の代理人になれないはずである。しかし、実際には、相続人間でいくつかのグループに分かれた場合、そのグループごとに代理人弁護士がつくことがよくあるという(「家事事件手続法逐条解説(一):テイハン:梶村太一:67頁」)。このような運用実績に鑑みれば、手続代理人資格を訴訟ほどに審査する必要性は低いと考える。さらに、家事事件手続法は22条2項で手続代理人許可の取消しが規定されているのだから、能力面に不安があっても、本人の利益を保護することが法制度上担保されているのである。
我々もそうだが、司法もリーガル・プロフェッションであるはずだ。加藤慎太郎がいうリーガル・プロフェッションとは、「単に法的な情報や知識を持っているのではなく、法によって正義の実現のために、その知恵を生かそうとする価値観を持って仕事をしていく専門的技能を活用すべき職層」である。だから、私は「司法書士に」ではなく「本人のために」代理権付与を首尾一貫して主張してきたのである。しかし、今回の司法の判断は、形式的な司法制度に拘泥し、正義の実現のためになんら努力を払おうとはしない。この点が非常に腹立たしい。
守秘義務の関係から、核心的な部分は触れずに、論を終えることはいささか心残りであるが、キリがないので、この件はここまでとする。
このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。
第97回目は甲州縦断
今回は青春18きっぷの残りを無理やり消化する旅。期限は9/10までなのでこの週末で使い切るしかない。金曜の昼に仕事を切り上げ、最寄り駅から鈍行列車に乗り込む。初日の目的地は山梨県下部温泉。浜松から列車でおよそ4時間の道のりだ。道中、どんなに尻が痛くなろうとも特急に乗り換えることは許されないし、かつ話し相手も誰もいない過酷な旅である。
信玄公の隠し湯として知られる下部温泉は、JR身延線沿線のひっそりとした山里のなかにある。温泉街と呼べるほど土産物屋や施設が林立する訳でもなく駅も無人だが、個人的にはこのひっそり感が逆に好きである。夏の終わりの夕暮れに、ヒグラシの鳴き声を聞きながら沈みゆく夕暮れをぼんやり眺めでいると、気づけば宿に着く。この温泉の湯はかなりぬるめ(30度くらい)だが、夏の夕暮れ時だとかえって心地よく、いつまでも浸かっていられる。このひっそりとした秘湯でこばやしはひっそり湯に浸かり、ひっそり過ごす。
翌朝、下部温泉をあとにしたこばやしは身延線でさらに北上、甲府で中央本線に乗り換え小淵沢という駅でJR小海線を待つ。小海線はこの山梨県の小淵沢駅から長野県小諸駅まで全長78.9㎞の路線で、別称「八ヶ岳高原線」ともいう。八ヶ岳東麓を走り、山梨と長野の県境にあたる清里-野辺山間には標高1375mのJR鉄道最高地点がある。小淵沢から清里あたりまでの車窓はほぼ森林の中で、その中に時折別荘地が現れる。森林を抜けるとそこはスーパー観光地清里で、その先がJR最高地点及び目的地でもある野辺山である。ここでとびきりうまいソフトクリームを食う!目的地が高所であることに比べ、こばやしの野望は著しく低い。(つづく)