地目変更を条件とする農地の信託契約

現状,Aを所有権の登記名義人とする農地である甲土地について,自然人Bに対して,信託を登記原因とする所有権移転及び信託の登記を申請することはできません。理由は,自然人Bに対しては農地法所定の許可が下りないからです。

 さて,今回のお客様であるAは,その農地である甲土地についても信託契約をしたいという希望をお持ちでした。そこで,農地については,条件付きで信託契約したいということです。その条件とは,甲土地の地目が農地ではなくなった場合には,甲土地についてもBに対して信託したいということです。

 この場合には,条件が成就したときに問題が生じるおそれがあると考えています。それは,Aの意思能力の問題です。信託契約の効力が発生したことと信託の登記の申請意思はまた別の問題です。信託の登記を申請する場合には,そのときに申請意思がなくてはならないと考えています。

 折角のAの希望も,効力発生時の意思能力の問題で登記ができないというのは些か理不尽な気もいたしますが,登記に携わる司法書士としては避けて通ることのできない問題です。(本木)