間もなくご臨終を迎える・・・ このような局面に遭遇したとき、しばしば「亡くなる前に預金を引き出しておいた方がよい」という話が持ち上がり、実際に銀行の窓口に出向いたところ「本人確認が取れないとダメ」と断られ、やむなくATMで1日の限度額いっぱいまで数日にわたって出金した等の経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか?
このような行動をとる目的のひとつには、相続人間で遺産分割協議がまとまらない可能性が高いため口座の長期凍結を避けようというものがあるでしょう。しかし、このような場合、往々にして後日の遺産分割調停などで出金した金額を遺産に組み戻す等の処理がなされるため、結局は無意味な行為となってしまいます。
もっとも、相続人間の紛争はあり得ないというご家族でも「葬儀や法要等で多額の支払いを要することになるため、その支払いに充てるために預金が凍結される前に引き出しておきたい」というニーズはあるでしょう。
確かに、相続開始後は、たとえ葬儀費用に充てる目的であったとしても、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書と印鑑証明書等をそろえて銀行に提出しなければ払戻しには応じてもらえないのが原則ですので、相続人の中に遠方や海外在住者、あるいは認知症を患う高齢者等がおり、遺産分割協議や必要書類の用意に支障が生じるケースなどでは、厄介な問題ともなるわけです。
ところで、実際の実務では、葬儀費用の請求書などを銀行に提出することにより、全員の印鑑がそろわない場合でも一部の払戻しに応じる事実上の処理に応じることで、顧客の便宜を図る銀行側の対応もしばしばみられますが、あくまで便宜的な取扱いにすぎませんでした。
しかし、改正法では、法律の規定によって各相続人が単独で一定の預金払戻しを求めることができるようになりました。
詳細は次回に! (中里)