(受託者の注意義務)【1項のみ再掲】
第13条 受託者は、本契約の趣旨に従い、信託財産の管理、運用、処分その他の信託事務を善良な管理者の注意義務をもって処理するものとし、これを怠らない限り、信託財産の価額の下落その他原因のいかんを問わず、受益者または信託財産に関して生じた一切の損害について委託者および受益者に対する責任を負わない。
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信託法40条では、受託者が任務を怠ったことにより信託財産に損失が生じた場合、受託者はその損失を填補しなければならないと定められています。
一方で42条では、受益者がこの損失填補義務を免除できると定めています。
前回指摘したとおり、受託者は、委託者から頼まれた親族や知人が無報酬で就任するケースが多いでしょうから、42条の免除規定を活用し、受託者のハードルを下げる工夫が必要になります。
しかし一方、契約締結以後、受託者と取引関係が生じることとなる対第三者との関係では、責任の所在を明確にしておくことが「信託」という仕組みへの安心感・信頼感につながることも事実です。
そこでモデル契約書では、受託者の過失に起因しない損失について、対委託者・受益者との関係ではその責任を免除する規定を置く一方、対第三者との関係では、受託者が填補責任を負担することとしました。
ところで、委託者・受益者と受託者との関係を考慮すれば、仮に受託者の過失に起因して生じた損失であっても、対委託者・受益者(あるいは対委託者に限って)への填補責任は免除するという条項を置くことも、十分に検討の余地があるでしょう。 (中里)