遺言や相続の手続きが変わります(6)~150万円以上の出金が必要な場合

「預貯金債権の仮払い」が請求できるのは、最大でも1口座に対して150万円であることは、前回ご説明しました。
「仮払い」を利用するケースの多くは、葬儀費用や相続債務の支払いなどのように、緊急性が高くかつ金額もさほど高額にはならない資金需要が想定されるため、150万円あればさほど困るようなケースは生じないのではないかと考えられます。

しかし、相続人間の遺産分割協議が何年間もまとまらないという事態に陥ってしまうと、仮払いを受けられる限度を超えた部分の預貯金はいつまでたっても出金ができず、多額の預貯金債権あるような場合でも活用できないというケースも想定できます。
親の遺産を子どもの進学費用に充てることを目論んでいたり、予期せぬ大病を患った影響で高額の治療代が必要になる、あるいは収入が激減して生活費に困窮するなど、突発的な資金需要が生じたりするケースもあるでしょう。
このような場合には、改正法によって新たに新設されたもうひとつの仮払い制度を利用することができます。

この仮払い制度を利用するためには、前提として家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをする必要があります。そのうえで、調停の申立てとは別に「預貯金仮払いの保全処分」を求める申立書を家庭裁判所に提出しなければなりません。
この手続きは、改正民法の中に定められている手続きではなく、家事事件手続法という法律に新設される制度となります(同法200条3項)。
調停申立てと同時に保全処分の申立てをすることももちろん可能ですし、すでに調停が始まっている場合には、後から保全処分だけを追加で申し立てることもできます。

150万円までの簡易な仮払い制度とは違い、この保全処分が認められるためには、裁判官に対し、凍結されている被相続人名義の預貯金債権を相続人の生活費や相続債務の弁済のため利用しなければならない事情があることについて、客観的な資料を添えるなどしてできる限り明らかにしていく必要があります。
また、他の相続人の利益を害さないことも要件とされていますので、ご自身の法定相続分を超過することになるような仮払いは、原則として認められないことになるものと考えられます。

なお、前回までご説明した簡易な仮払い制度と異なり、遺産の一部分割とみなされる規定はありません。したがって、遺産分割調停(調停がまとまらなければ審判)において、保全処分によって仮払いを受けた預貯金分も含めた遺産分割が行われる点にもご注意ください。  (中里)

2019年2月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続セミナーの打ち合わせで・・

相続法が改正され、ハウスメーカーなどを中心にセミナーの開催が企画されています。

私も、ご縁があり2ヶ所で相続法改正を中心にお話をする機会をいただいています。

ただ、相続法改正の内容をしっかり説明しようとすると1,2時間では全然足りません。

打ち合わせでも、そういうご説明をしてどこを中心にお話をするのかを決めていくのですが、

今後の課題としての認知症の問題や選択肢の一つとしての民事信託のお話をすると・・

「是非、相続法改正の続きの企画として民事信託も話をしてください」となります。

日程の関係もあるので、本当は1回のセミナーで両方お話できると、聞く方も1回の参加で済むと思うところもあります。

例えば、前半と後半に分けて相続法改正と民事信託について、じっくりとお話できるといいのですが・・。

でも、そうすると飽きないようにお話をしないといけないので、セミナー講師の腕のみせどころですね。(名波)

2019年2月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続登記について(10)

不動産登記法にも確認の根拠を求めることができます。

不動産登記規則72条では、登記を申請する資格者代理人は面談して当事者を確認しなければならないと規定されています。

司法書士は、面談のときには、本人確認とともに登記申請意思の確認、実体関係の確認も行っています。

そして、司法書士が登記原因証明情報を作成するときは、実体的権利関係を忠実に反映することが期待されています。

ですから、遺産分割協議に基づく相続登記の場合も、契約による取引と同様の利害関係が生じていますので、登記原因である実体関係の確認・相続人の登記申請意思の確認・本人確認をするべきと考えられます。(本木敦)

2019年2月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎(完)

前々回及び前回の続き「後継ぎ遺贈型信託」です。

立案担当者による最初の解釈の方が条文に素直な解釈であると考える方が多いようです。しかし、この考えには問題となりそうな事案があります。以下のような事例です。

事例

「受益者を当初受益者Aの相続人と指定し、信託設定時から30年経過時点の受益者がXYです。Xには相続人としてPQYの相続人としてRSがいます。ここで、XYより先に死亡しました。」

 図12

立案担当者の見解は、30年経過した後の受益権の取得は1回限りというルールでした。したがって、PQは受益権を取得できます。しかし、その後にYが死亡したらRSはどうなるのでしょうか?取得できないのでしょうか?取得できないと解することもできますが、XYの死亡の前後で受益権の取得状況が変わるというのは釈然としません。

この点、もう一つの解釈なら、このような疑問点は生じないのです。

 

もし「後継ぎ遺贈型信託」を検討される方がいらしたら、今申し上げた問題点を認識して取り組んでください。個人的な意見ですが、結論がはっきりしない以上、積極的に取り組む設定方法ではないと思います。

 

さて、回数を数えてはおりませんが「信託の基礎」は、ここらで一旦終了にしたいと思います。もう少し、著しておきたい部分があるのですが(具体的には「受益者」「委託者」「信託の終了」について)自身の考えをもう少しまとめてから、あらためて述べてみたいと思います。(小出)

 

こば紀行#83 葛飾区亀有公園前

このコーナーでは、浜松から日帰りで行けるプチ観光スポットをご紹介しています。

第83回目は葛飾区亀有公園前

葛飾区亀有は常磐線沿線、都心から電車で40分のところに位置する。亀有駅を降りると、聖地に相応しく彼の銅像が私を出迎えてくれる。賢明な読者の皆さんには今さら説明するまでもないが、彼とは「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する主人公、両津勘吉のことであり、こち亀はその彼が亀有の街を舞台に繰り広げるギャグ漫画である。連載開始は1976年、私がまだ2歳の頃、以来2016年までの40年間休むことなく連載され、少年誌最長連載記録を持つに至った。今回のこば紀行のテーマは、その舞台の中心となる「派出所」はこちらにあるのか?だ。

駅構内にこち亀にまつわる銅像マップがある。このマップを頼りに散策すると、それなりに街の雰囲気は味わえる。全ての銅像を歩いて見て回ってもおよそ1時間半程度…全クリアの達成感はあるが、かなりの暇人認定をされてしまうリスクは否めない。見所は駅から徒歩10分程度のところにある香取神社で、こち亀とキャプテン翼の絵馬が売られている。キャプ翼の作者高橋陽一が葛飾区出身だそうで、南葛FCの「南葛」も葛飾区に由来するものだと今さら気付く。放映当時、小学生こばやしは、南葛市が静岡県にあるものと信じて必死に地図を探したものだが、あの時間を返して欲しい。。食事は本田像を少し西に行ったところにある「吟八亭やざ和」。食べログで4点を超える驚異の蕎麦屋であり、味も確かなのだが、ボリューム感はと言えば、思春期こばやしであれば発狂していたように思う。

こち亀にまつわるありとあらゆるバリエーションのキャラクター像が街の随所に散りばめられる中、とりわけ目を惹くのが麗子像だ。秋本・カトリーヌ・麗子…才色兼備の彼女の魅力に、例外なく思春期こばやしも取り憑かれていたし、メーテルに次ぐカリスマヒロインである。誌面の中、2Dでも抜群のスタイルを誇示していた彼女が今、3Dの銅像となって私の目の前にいる。上から眺めると、さっきの蕎麦と違いもの凄いボリューム感だ。ちなみに駅前にあるこの麗子像、当初は立像であったが、あまりに美脚であるが故に耐久面で難があり、現在の脚を組む座像に変更されたそうな。そして、立像は立像で別の屋内に安置されている。さすが麗子様…

そうそう、すっかり忘れていたが、亀有公園前に派出所はあるのか?亀有駅から徒歩5分もしないところに「亀有公園」は確かにある。そして、それとは逆方向、だいぶ離れたところに「亀有警察署」なるものがある。しかし、場所は葛飾区新宿というところ、亀有でも公園前でも派出所でもない。結論、ない。(こばやし)

 

2019年1月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

保証人には注意

最近、相談者の方から『お金を貸したけど返済されないので何とか取り戻したい』という相談をいただきました。借用書を確認したところ、借主(主債務者)と連帯保証人の署名捺印がありました。しかし、借主(主債務者)と連帯保証人に対して裁判を起こしたところ、連帯保証人から『連帯保証人になっていない』と主張されました。現在係争中のため、この連帯保証人がどのような主張で連帯保証人であることを否定するのか詳細は書けませんが、この事案のように、連帯保証人に請求したところ、連帯保証人から保証を拒否される事案がたまにあります。

ちなみに『保証人』とは、簡単にいえば、主債務者がお金を返済しない場合に、借りた人に代わってそのお金を返済する人のことです。『保証人』には単なる『保証人』と『連帯保証人』がありますが、『連帯保証人』は単なる『保証人』と比較して非常に責任が重いものです。

貸主がいきなり(連帯)保証人に対して請求をしてきた場合には,保証人であれば「まずは主債務者に請求してください」と主張することができますが、連帯保証人はそのような主張をすることができません。

また、主債務者が返済できる資力があるにもかかわらず返済を拒否した場合、保証人であれば主債務者に資力があることを理由に、貸主に対して主債務者の財産に強制執行をするように主張することができますが、連帯保証人はこのような主張をすることができず、主債務者に資力があっても貸主に対して返済しなければなりません。

 

借金だけでなく賃貸借契約や施設入所など、『連帯保証人』を求められるケースは多いのですが、貸主側も主債務者側も契約の際は(言葉は悪いですが)適当に手続きしていることが多いため、実際にトラブルになった際、この連帯保証の有効性をめぐって争いになることがあります。

よくある主張としては、以下のものが挙げられます。

1)保証人自身が署名捺印していない(勝手に主債務者が書いた)

2)署名捺印したが、主債務者に形だけの連帯保証人なので迷惑かけないと言われた

 

1)の場合でも、契約書に保証人の実印が押印されている場合などは、反証がない限り保証人の意思に基づいて契約書が作成されたと推定され、保証契約が有効とされる場合があります。

逆に、保証人自身が署名押印しているのにもかかわらず保証契約を否定しているような場合でも、保証人の実印が押印されており貸主が保証人の印鑑証明書を持っていれば、その保証契約が保証人の意思に基づいた契約であることが容易に立証することができます。そのため、認印でも契約書は有効なのですが、後日、保証人が『そんな契約は知らない』と言いだしたときのために、公証役場で契約書を作成してもらうか、契約書に実印を押してもらい、印鑑証明書をもらうのがお勧めです。

2)の場合は、「迷惑かけないと言われた」などの主張は原則的には認めらず、連帯保証契約の成立が認められるのが一般的ですが、保証人が保証内容を全く教えてもらえないまま署名捺印した場合や、貸主が保証人に全く連絡せず保証の意思を確認していない場合などは保証契約の成立が否定される場合もあります。

 

連帯保証人を取る側、連帯保証人になる側双方に言えることですが、

・貸主は基本的には連帯保証人とは面談し、目の前で署名押印してもらうようにする

・保証人に押してもらう印鑑は実印とし、印鑑証明書をもらうようにする

・保証人が保証する内容をしっかり説明し、理解してもらう

・(保証人になる側としては)実印、印鑑証明書は厳重に保管し、人に預けない

・契約書に署名押印する際は内容をよく確認する

上記を徹底してもらえば、(連帯)保証人から保証を拒否される確率や、連帯保証人として突然身に覚えのない請求がされる可能性は非常に低いと思います。

 

保証人を取る際は、『借用書に保証人の署名押印があるから大丈夫』と思わず、事前の対策をすることが大切です。

 

※ 2020年4月1日から民法が改正され、連帯保証もルールが変わります。この事案は現行の民法  を基に記載しておりますのでご注意ください。

2019年1月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

遺言や相続の手続きが変わります(5)~葬儀費用の払戻しは可能?②

前回ご説明のとおり、各相続人は、相続開始後、遺産分割協議が成立する前であっても、金融機関に対し、一定の預貯金債権について払戻しを請求することができるようになりました。
「預貯金の仮払い制度」と呼ばれる方法で、改正相続法によって新設された規定です(改正民法909条の2)。

仮払いを請求できる預貯金の金額には、次の(1)(2)のいずれか少ない額という上限が定められています。
(1)相続開始時の預貯金債権の残高の3分の1に法定相続分を乗じた額
(2)150万円

相続人が子供二人、相続開始時、A銀行に600万円の預金残高があったとすると、各相続人は次の計算式により100万円の仮払いをA銀行に請求することができるわけです。
600万 × 1/3 × 1/2(法定相続分)= 100万円

この請求は、法律が各相続人に認めた権利ですので、他の相続人の同意がなくても金融機関に対して支払いを求めることができます。請求を受けた金融機関側も、遺産分割協議が成立していないことを理由に払戻しを拒むことはできません。

なお、この制度を利用して払戻しを受けた預貯金は、払戻しを受けた相続人が遺産の一部分割によって取得したものとみなされます。つまり、先の例では、払戻しを受けた100万円について「実際には遺産分割協議が行われていないにもかかわらず、法律の規定によって遺産分割協議が完了したものと取り扱う」ということになります。したがって、払戻しを受けた100万円については、以後の相続人間の遺産分割協議の際に分割協議の対象となる財産から除外される点にご注意ください。

また、前回の設問では、資金使途を「葬儀費用」としていましたが、この制度は資金とを限定していませんので、生活費や借金の返済(相続債務だけでなく、相続人自身の借金の返済に充てることも可)など、払戻しを受けた預貯金は何のために利用しても構いません。

遺産分割協議の長期化が見込まれるような場合には、利便性の高い制度となりそうですね。なお、この制度を利用した払戻請求ができるのは平成31年7月1日以降ですが、同日以降の請求であれば、同日以前に開始した相続に関しても利用できます。  (中里)

 

期限は1月31日はまでですよ!

信託の場合、個別に税務署に調書等を提出する必要があります。

例えば、

①信託の効力発生

②受益者変更

③信託終了

④権利内容変更

等が発生した場合には、その事由が生じた日の属ずる月の翌月末日までに調書を提出する必要があります。

但し、例外(概略です。詳細はご自身でご確認ください)があって、

①相続税評価額が50万円以下であること

②効力発生時の委託者と受益者が同一である場合

③信託終了直前の受益者と信託財産の帰属者となる者が同一である場合

④信託終了時に信託の残余財産がない場合

⑤信託に関する権利の変更があった場合において、その信託の受益者等が同じである場合

等の場合は、提出が不要となっています。

★ご注意ください★

上記の例外にあたるとしても、信託財産に年間3万円(1年未満の場合には1万5千円)以上の利益が発生している場合には、◆1月31日まで◆に別途、信託の計算書を税務署に提出する必要があります。

特に、去年1年以内に、信託不動産を売却された方、収益物件を信託されている方は、専門家にに相談することをお勧めいたします。(名波)

※注意を促すために、概略を記載しています。信託を活用されている方は、この記事だけで判断なさらずに、個別に、専門家にご相談してください。

 

 

2019年1月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

相続登記について(9)

司法書士が遺産分割協議書の内容を確認する根拠についてです。

まず、司法書士法第3条1項です。すなわち、
(業務)
第三条   司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一  登記又は供託に関する手続について代理すること。
二  (略)
司法書士が登記原因たる遺産分割協議の内容を確認することは登記手続きの代理を行う上で必要不可欠ですので、司法書士が遺産分割協議書の内容を確認する根拠は司法書士法第3条1項にあるといっていいと思います。

また、注釈司法書士法によれば、同号の業務においては登記原因の調査や登記義務者の本人確認が義務となる場合があるとされています。

このため、登記原因の中に遺産分割協議があるときには、その内容について調査が必要となることがありうることになります。

従って、登記原因に疑うべき事情がある場合に遺産分割協議の内容を調査しなかったことや遺産分割の当事者の意思確認・本人確認を怠れば、懲戒事由となることもある、ということになります。

ちなみに、司法書士が遺産分割協議書の内容を確認することについて、規則31条を根拠とすることができるか、ということも検討しています。

司法書士法施行規則第31条の各種業務は、本来的には特定の資格を必要とせず誰でも行える附帯業務を定めているものです。

つまり、規則31条は、ある一定の地位についていること、ある程度包括的な権限をもって他人の財産の管理あるいは処分等を行うことを指しています。

ですから、ある特定の事務のみの委任を受けてその事務のみを行うことは含まれていません。

ですから、規則31条の業務は、司法書士法3条1項に定めてられている独占業務とは全く異なる性質のものですので、相続登記における遺産分割協議を含む登記原因の調査等の登記業務での確認事務を規則31条に根拠とすることはできません。
(司法書士法人の業務の範囲)

第三十一条   法第二十九条第一項第一号 の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一   当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務

二   当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務

三   司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務

四   競争の導入による公共サービスの改革に関する法律 (平成十八年法律第五十一号)第三十三条の二第一項 に規定する特定業務

五   法第三条第一項第一号 から第五号 まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務

2019年1月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : trust

信託の基礎

前回の続きです。

前回は「後継ぎ遺贈信託」の「30年」という期間制限についてお話ししました。もう一度申し上げると、信託設定時から30年を経過した時点よりも後に受益権を取得した者(受益者連続が生じる時に生存している者)がいる場合、その者が死亡するか、または当該受益権が消滅するまで信託が継続する、というというものです。

具体的には、A→B→C→Dという順番で受益者が定められていて、30年経過後にBが死亡した場合、Cは受益権を取得しますが、その後のDには受益権の承継はないことになります。

しかし、上記とは別の解釈も存することを前回予告しました。

もう一つの解釈は、信託設定時から30年経過時点で生存する、受益者となる可能性のある者が全て死亡するか受益権が消滅するまでは信託が継続するという考えです。これは、条文の「現に存する」という文言を重視する考えです。この考えで先ほどの例を見ると、Dは受益権を取得することができるということになります。(小出)

図11